ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
031 襲撃の要因とリクルの力
村への襲撃から二日後。
俺はイリュファやリクルと一緒に村外れの平地にいた。
軽くラジオ体操の真似ごとをして体の調子を確かめる。
折れていたらしい左腕やあちこちに負った裂傷も母さんの祈念魔法のおかげで既に癒えているし、もう大丈夫そうだ。
それでも、あの後俺は丸一日ずっと眠っていたらしい。
まあ、前世含めてあれだけ消耗したのは初めてだ。
さもありなんというところだろう。
いや、むしろそれで済んで御の字と言うべきか。
異世界の魔法様様だ。
「しかし結局、あの襲撃は何だったんだ?」
「ジャスター様が無力化した八名の少女化魔物達から聴取した限りでは、人間至上主義組織スプレマシーの手によるものだったようです」
「けど、戦力が整ってるこの村には手を出さないだろうってエノスさん達が」
実際、目的はどうあれ、この村を襲撃するリスクは相当大きいと思うのだが。
「ヨスキ村に子供が生まれるのは数年に一度。にもかかわらず、五年前に三人の子供が一度に生まれました。その中に救世の転生者がいるのでは、という噂があったようです」
「……それとこれと何の関係が?」
だから三人が狙われた、とでも言いたいのだろうが、そもそも救世の転生者というものは名目上は世界全体の救済者のはず。
セト達の中にそれがいるというのは盛大な勘違いだが、たとえ人間至上主義者だとしても世界を救ってくれる人間を害しようなど正気の沙汰ではない。
「人間至上主義者にも穏健派と急進派がいます。急進派の中でも特に過激な人間は、少女化魔物と共にある少女征服者による救済自体を認めないとしているようです」
「……ああ」
そこまで頑ななのか。
まあ、その部分については一貫しているとも言えるけど。
なのに、結局は少女化魔物を利用して襲撃している辺り、救われない。
「実際に襲撃に踏み切ったのは、あの複合発露を持った少女化魔物を二人も第六位階に至る暴走状態で隷属できたからでしょうけど」
これは生まれてから襲撃まで五年を要した理由か。
確かにあれは、並の少女征服者からすれば天敵のような能力だった。
勝てると勘違いして実行に移すのも理解できなくもない。
ただ、父さんが桁違いに強かったせいで失敗してしまったが。
「あ。もしかして父さん達に嘘の仕事を依頼して村から遠ざけたのも……」
「そのようです」
実際、有効な手ではあった。父さんが想像の上を行っていただけで。
……ますます父さんの方が救世主っぽいぞ。
いいのか? 俺が救世の転生者なんて役割を背負っていて。
その辺、ちょっと自信がなくなって軽く嘆息してしまう。
「人形化魔物を本当の意味で滅するには、特殊性癖の転生者でなければなりませんから。どうあってもジャスター様では不可能です」
と、俺の心を読んだようにフォローを入れようとするイリュファ。
ロリコン……いや、この俺が呼ばれたことを考えると人外ロリコンでなければならないのだろうが、そうでなければならない理由は今一分からず首を傾げる。
しかし、それを尋ねてもイリュファは「いずれ分かります」と答えるばかりだった。
当人が知ると優位性が失われるらしい。
「何にせよ、いずれイサク様にはジャスター様を超えて下さらなければなりません。ですので、早速試してみましょう」
そして彼女は話題を変えようとするように、リクルへと視線を向ける。
何度目の話か分からないので追及を諦め、俺もまたリクルを見る。
まあ、いずれ父さんを超えるというのは一つの親孝行ポイントとも言えるし……。
わざわざ家々から離れた場所にまで来た目的を果たすとしよう。
「分かった。じゃあリクル、準備はいいか?」
「はいです」
既に複合発露を発動させてゲル状になっているリクルに確認を取り、それから俺もまた〈擬竜転身〉を使用した。
あの襲撃で思いっ切り複合発露を披露したので、これに関してはもう隠す必要はない。
その状態でリクルと手を繋ぐ。すると……。
「おお!」
「間違いないですね」
リクルは俺と同じく真紅の鱗に覆われた半竜人のような姿へと変わった。
あの戦いの時と同じ現象だ。
その変化に俺は感嘆の声を上げ、イリュファは深く頷いた。
「肉体的接触時に契約者が使用している複合発露を模倣する能力、というところでしょうか。……これまで複合発露がどんなものか分からなかったのも納得ですね」
続けてリクルの能力を端的に言い表し、珍しいものを見るように竜の特徴を得た彼女を観察しながら後半部分をつけ加えるイリュファ。
「は、はい。あの後、何だか急に目が開けて自分の複合発露を理解できました、です」
対してリクルは、舐めるように見られてむず痒そうにしながら応じた。
「一度完全に発動すると諸々把握できるようになりますからね」
自転車の乗り方みたいなものか。
あるいは、複合発露の発動でも観測者としての格が微妙に上がるのかもしれない。
「リクル、詳細なところを教えて貰えますか?」
「はいです。私の複合発露〈如意鋳我〉の基本的な力はイリュファさんが言った通り、ご主人様が使用中の複合発露をコピーするものです」
「基本的、ということは別の力もあるということでしょうか」
「です」
リクルはイリュファに頷いてから俺に視線を向けた。
「ご主人様、ちょっとよろしいですか? です」
「ん? ああ」
俺が頷くと彼女の体は再びゲル状になり、それどころか、水を一杯に積めた風船を割ったように瞬時に人間の形を失って……。
「お、おお!?」
繋いだ手を起点に這うように急速に俺の体を覆っていった。
「お、おおおう」
ひんやりしつつも何とも不可思議な感触に包まれ、思わず身震いしながら言葉にならない声を上げてしまう。
しかし、すぐに全身に馴染んで、リクルの質量はどこに行ったのかというぐらい見た目には彼女に包まれているようには見えなくなった。
『ご主人様、どうですか? です』
体そのものを伝導体にしたような奇妙な感じで声が届いてくる。
これもまた初体験な不可思議感覚だが、とりあえず身悶えていても仕方がない。
意識して我慢し、質問に答えるために体の調子を確認しようとイリュファから教わった無手の型をいくつか試してみる。
「……凄いな」
明らかに一人の時よりも動きがいい。
風を切る音も鋭く、間違いなくパワーアップしているのが分かる。
おおよそ第五位階下位が中位になるぐらいは強化されていると見ていいだろう。
『ありがとうございますです!』
俺の感嘆の声にリクルは心底嬉しそうに感謝を口にした。
「イサク様の少女化魔物として相応しい力です。名実共に。皆認めてくれるでしょう」
満足そうに頷きながら告げるイリュファ。
名実共に、ということは既に人柄的な部分は彼女も認めてくれていたようだ。
……あれだけの扱きに五年以上耐えてきた訳だからな。
改めて考えるとその根性は俺も凄いと思う。
「あ、ありがとうございます、イリュファさん! です!」
イリュファの言葉に複合発露を解いて人間の姿に戻ったリクルが、感極まったように再び感謝の言葉を口にする。
五年も師事していれば師弟のような絆もできようというものだ。
それから、少しの間リクルの複合発露を使いながら応用性を確かめていると――。
「イサク、イリュファ、リクル」
そこへ珍しく母さんが軽く駆けてきて俺達を呼んだ。
「母さん、どうしたの?」
「うむ。お前が倒した少女化魔物が目を覚ましたぞ」
「本当?」
俺の確認に母さんは首肯し、それを受けて俺はイリュファを見た。
父さんが倒した八人は早々に目を覚ましたが、恐らく俺よりも傷ついていただろうあのセイレーン(仮)の少女化魔物は意識を失ったままだった。
イリュファが己の血肉を犠牲に回復させてくれたから命の危険はなかったが、俺から遅れに遅れること今になるまで意識を取り戻すのに時間がかかってしまったようだ。
俺が戦った手前、責任がある。
そうでなくとも色々と話がしたいこともある。
「一先ず戻りましょう」
だから俺達は、イリュファに促させる形を取って家路に着いた。
俺はイリュファやリクルと一緒に村外れの平地にいた。
軽くラジオ体操の真似ごとをして体の調子を確かめる。
折れていたらしい左腕やあちこちに負った裂傷も母さんの祈念魔法のおかげで既に癒えているし、もう大丈夫そうだ。
それでも、あの後俺は丸一日ずっと眠っていたらしい。
まあ、前世含めてあれだけ消耗したのは初めてだ。
さもありなんというところだろう。
いや、むしろそれで済んで御の字と言うべきか。
異世界の魔法様様だ。
「しかし結局、あの襲撃は何だったんだ?」
「ジャスター様が無力化した八名の少女化魔物達から聴取した限りでは、人間至上主義組織スプレマシーの手によるものだったようです」
「けど、戦力が整ってるこの村には手を出さないだろうってエノスさん達が」
実際、目的はどうあれ、この村を襲撃するリスクは相当大きいと思うのだが。
「ヨスキ村に子供が生まれるのは数年に一度。にもかかわらず、五年前に三人の子供が一度に生まれました。その中に救世の転生者がいるのでは、という噂があったようです」
「……それとこれと何の関係が?」
だから三人が狙われた、とでも言いたいのだろうが、そもそも救世の転生者というものは名目上は世界全体の救済者のはず。
セト達の中にそれがいるというのは盛大な勘違いだが、たとえ人間至上主義者だとしても世界を救ってくれる人間を害しようなど正気の沙汰ではない。
「人間至上主義者にも穏健派と急進派がいます。急進派の中でも特に過激な人間は、少女化魔物と共にある少女征服者による救済自体を認めないとしているようです」
「……ああ」
そこまで頑ななのか。
まあ、その部分については一貫しているとも言えるけど。
なのに、結局は少女化魔物を利用して襲撃している辺り、救われない。
「実際に襲撃に踏み切ったのは、あの複合発露を持った少女化魔物を二人も第六位階に至る暴走状態で隷属できたからでしょうけど」
これは生まれてから襲撃まで五年を要した理由か。
確かにあれは、並の少女征服者からすれば天敵のような能力だった。
勝てると勘違いして実行に移すのも理解できなくもない。
ただ、父さんが桁違いに強かったせいで失敗してしまったが。
「あ。もしかして父さん達に嘘の仕事を依頼して村から遠ざけたのも……」
「そのようです」
実際、有効な手ではあった。父さんが想像の上を行っていただけで。
……ますます父さんの方が救世主っぽいぞ。
いいのか? 俺が救世の転生者なんて役割を背負っていて。
その辺、ちょっと自信がなくなって軽く嘆息してしまう。
「人形化魔物を本当の意味で滅するには、特殊性癖の転生者でなければなりませんから。どうあってもジャスター様では不可能です」
と、俺の心を読んだようにフォローを入れようとするイリュファ。
ロリコン……いや、この俺が呼ばれたことを考えると人外ロリコンでなければならないのだろうが、そうでなければならない理由は今一分からず首を傾げる。
しかし、それを尋ねてもイリュファは「いずれ分かります」と答えるばかりだった。
当人が知ると優位性が失われるらしい。
「何にせよ、いずれイサク様にはジャスター様を超えて下さらなければなりません。ですので、早速試してみましょう」
そして彼女は話題を変えようとするように、リクルへと視線を向ける。
何度目の話か分からないので追及を諦め、俺もまたリクルを見る。
まあ、いずれ父さんを超えるというのは一つの親孝行ポイントとも言えるし……。
わざわざ家々から離れた場所にまで来た目的を果たすとしよう。
「分かった。じゃあリクル、準備はいいか?」
「はいです」
既に複合発露を発動させてゲル状になっているリクルに確認を取り、それから俺もまた〈擬竜転身〉を使用した。
あの襲撃で思いっ切り複合発露を披露したので、これに関してはもう隠す必要はない。
その状態でリクルと手を繋ぐ。すると……。
「おお!」
「間違いないですね」
リクルは俺と同じく真紅の鱗に覆われた半竜人のような姿へと変わった。
あの戦いの時と同じ現象だ。
その変化に俺は感嘆の声を上げ、イリュファは深く頷いた。
「肉体的接触時に契約者が使用している複合発露を模倣する能力、というところでしょうか。……これまで複合発露がどんなものか分からなかったのも納得ですね」
続けてリクルの能力を端的に言い表し、珍しいものを見るように竜の特徴を得た彼女を観察しながら後半部分をつけ加えるイリュファ。
「は、はい。あの後、何だか急に目が開けて自分の複合発露を理解できました、です」
対してリクルは、舐めるように見られてむず痒そうにしながら応じた。
「一度完全に発動すると諸々把握できるようになりますからね」
自転車の乗り方みたいなものか。
あるいは、複合発露の発動でも観測者としての格が微妙に上がるのかもしれない。
「リクル、詳細なところを教えて貰えますか?」
「はいです。私の複合発露〈如意鋳我〉の基本的な力はイリュファさんが言った通り、ご主人様が使用中の複合発露をコピーするものです」
「基本的、ということは別の力もあるということでしょうか」
「です」
リクルはイリュファに頷いてから俺に視線を向けた。
「ご主人様、ちょっとよろしいですか? です」
「ん? ああ」
俺が頷くと彼女の体は再びゲル状になり、それどころか、水を一杯に積めた風船を割ったように瞬時に人間の形を失って……。
「お、おお!?」
繋いだ手を起点に這うように急速に俺の体を覆っていった。
「お、おおおう」
ひんやりしつつも何とも不可思議な感触に包まれ、思わず身震いしながら言葉にならない声を上げてしまう。
しかし、すぐに全身に馴染んで、リクルの質量はどこに行ったのかというぐらい見た目には彼女に包まれているようには見えなくなった。
『ご主人様、どうですか? です』
体そのものを伝導体にしたような奇妙な感じで声が届いてくる。
これもまた初体験な不可思議感覚だが、とりあえず身悶えていても仕方がない。
意識して我慢し、質問に答えるために体の調子を確認しようとイリュファから教わった無手の型をいくつか試してみる。
「……凄いな」
明らかに一人の時よりも動きがいい。
風を切る音も鋭く、間違いなくパワーアップしているのが分かる。
おおよそ第五位階下位が中位になるぐらいは強化されていると見ていいだろう。
『ありがとうございますです!』
俺の感嘆の声にリクルは心底嬉しそうに感謝を口にした。
「イサク様の少女化魔物として相応しい力です。名実共に。皆認めてくれるでしょう」
満足そうに頷きながら告げるイリュファ。
名実共に、ということは既に人柄的な部分は彼女も認めてくれていたようだ。
……あれだけの扱きに五年以上耐えてきた訳だからな。
改めて考えるとその根性は俺も凄いと思う。
「あ、ありがとうございます、イリュファさん! です!」
イリュファの言葉に複合発露を解いて人間の姿に戻ったリクルが、感極まったように再び感謝の言葉を口にする。
五年も師事していれば師弟のような絆もできようというものだ。
それから、少しの間リクルの複合発露を使いながら応用性を確かめていると――。
「イサク、イリュファ、リクル」
そこへ珍しく母さんが軽く駆けてきて俺達を呼んだ。
「母さん、どうしたの?」
「うむ。お前が倒した少女化魔物が目を覚ましたぞ」
「本当?」
俺の確認に母さんは首肯し、それを受けて俺はイリュファを見た。
父さんが倒した八人は早々に目を覚ましたが、恐らく俺よりも傷ついていただろうあのセイレーン(仮)の少女化魔物は意識を失ったままだった。
イリュファが己の血肉を犠牲に回復させてくれたから命の危険はなかったが、俺から遅れに遅れること今になるまで意識を取り戻すのに時間がかかってしまったようだ。
俺が戦った手前、責任がある。
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