スキル 空想は最強です♪

ひさら

7.5




ランが、農園のじいさんの知り合いを往来の多い場で癒して力を知られてしまってから、貴族の癒しを請け負うようになった。
そう遠くないうちに宮廷から呼び出しがあるだろう。俺たちはその時のための準備を進めた。
 
「私のスキルって、転移もできますかね~?」
 
ランは相変わらず突拍子もない事を言う。
言って試しに一メートルくらい飛んだ。・・・単にジャンプしただけの様にも見える。わかりずらい。
そう言うと、ランはそれならばと部屋の隅から隅まで飛んで見せた。
おぉ!たしかに一瞬姿が消えた!これは転移できているだろう。
 
それから色々試していく。
人目につくと騒ぎになるから、暗くなってから人気のないところで徐々に距離を伸ばしていく。
一番遠くは、カプシーの町まで飛んだ。まったく気配が消えた事にものすごく焦っていたら
 
「カプシーでよかった。森だったら危なかった!」
 
もう一人で飛ばせないと決意した。
距離の確認が取れたら、二人での転移もできるか試す予定だったから言わなかったが。
 
それから旅に必要な物も買いそろえておく。いつでもすぐにでも旅立てるように準備が整った頃、それはやってきた。
 
 
 
そいつは第二騎士団団長というくらいだから高位の者なんだろう。そういう奴に多い尊大な態度だ。嫌いだね。
それなのにそんな奴に、ランは飯をあたえたり、一緒に食ったりする。
・・・まだまだわからない、ランの国の考え方だ。
 
わからない事は続く。
たった何時間か、共に過ごしたと言う程でもない相手なのに、知り合いだという。知り合いだから癒すのは当たり前のように言う。
俺もだが、騎士も唖然とした。
 
しょうがない。ランはそういう女なのだ。俺が受け入れるしかない。
 
 
 
ランは本当に面白い女だ。
子供の様にはしゃいで馬車に乗ったかと思えば、小なりとも一国の王に引けを取らず相対する。あまつさえ喧嘩を吹っかけている。
初めて会った時、ただの冒険者の俺にあんなに申し訳なさそうな態度をとっていた同じ人物とは思えない。
 
なんて考えている間はない。
引き際だ。
 
「もういいかな?」
 
もちろん。 
ランの問いに、俺は無言で頷いた。
手を伸ばしてきたランをしっかり抱きかかえる。
 
軽い浮遊感。 
周りの風景がぶれてーーー

俺たちはカプシーに飛んだ。




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