スキル 空想は最強です♪

ひさら

6.5




「ランは甘すぎる。そんなに危機意識がなくちゃ、ここでは生きていけねぇ」
 
翌日、ギルドに向かう道すがら強く言う。昨日はランが疲れ切っていて話をしようとは思えなかったし、ランの方も聞く余裕はなかっただろう。
 
反省しているのかランは大人しく聞いていたが
 
「自分の身を守るなら、これからは見捨てる事だ」 
 
厳しく言い渡すと、ランは驚いて言った。
 
「レオンは私にこんなによくしてくれてるじゃないですか」
「俺は自分の身は自分で守れる。危険かどうかの判断もつく。ランはどうだ?」
 
それに、ランじゃなかったらこんなに世話を焼いていない。
さすがに魔の森に置き去りにはしないが、女子供なら相手の方で逃げていったとも思われる。
 
ランは不満そうだ。
お、何だ? 何か言い返すのか?
 
ランはつらつらと、甘すぎてすぐに死ぬな、と思われる事を言いだした。
ランの生まれ育った国はそんなに温いのか?人の死が遠すぎる。そんな環境で育ったんじゃ、昨日のアレも納得できるような・・・、いや、納得しちゃいけねぇ。
 
俺は朝から盛大にため息をついた。
するとランは、ため息に答えるようにへラリと笑った。
 
「それに、何かあったらレオンが助けてくれるって、ずうずうしいけど頼りにしちゃってるんです」
「そういうところもだ!出会って間がない男をそう簡単に信用するな。信頼させておいて騙したらどうするんだ」
 
何て危機感のなさだ!思わず大声を上げる。
しまった。怖がらせたか?
強面のでかい男に声を荒げられて怯えない筈はない。と思った俺は間違ってない。のに。
 
俺は生まれて初めての、告白を聞いた。
あまりの衝撃に頭が真っ白になった。
 
それから生殺与奪だの、騙されても恨まないだの不穏な言葉が聞こえた。
いや!奪わないから!!騙さないから!! 
今言った事と逆の事を捲し立てる。
 
こんな男に、いいとこのお嬢さんが、本当なんだろうか。
夢なのか・・・? 願望なのか・・・?
そんな事を思う程、初めての告白は正常な判断をなくさせた。 
だからだ!だからあんな事を言っちまったんだ!!
 
「俺も、ランが好きだ」
 
・・・え?
だーーー!!! 何て言った?! 今俺何て言った?!
何だ俺? 何言ってんの? 馬鹿だろ? 馬鹿すぎるだろ?!
 
こんな混乱も生れて初めてだった!
色々と訳が分からないまま混乱しているうちに・・・。
どうやら俺に恋人ができたようだった。気がつけば手を引かれて歩いている。 
 
この位置関係は続くな・・・。
その予感は当たって、生涯続いた。
 
 
 
その後、昨日のじいさんが連れてきたばあさんをランが癒した事や、それが貴族を癒すはめになった事は、俺に恋人ができた事に比べれば全く大したことはない!
面倒事になったらランを連れて国を移ればいいだけだからな。
 
俺に恋人や嫁ができるとは思った事はなかった。
ランのスキルより、はるかに驚く事だった。




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