籠の鳥とご主人様

石ノ森 槐

1話 籠の鳥

私はふわふわした藁の感覚ではっと目を覚ました。
また怒られてしまうと体を無理くり起こすと、ぎしぎしとした下半身の痛みに襲われて反射的にまたばたりと倒れこむことになってしまった。

「ったぁ……。」
微かに漏れた弱音を広すぎる部屋の空気がかき消した。
いつもは微かな声も響くような小屋に寝ていたはずなのに……と私は昨日の記憶を無理矢理巡らせた。すぐにバカなことをしたと気が付いたが戻ってきた記憶に狂いはない。

そうだ……。私はご主人様に服を裂かれて……ひどく扱われた。
それがどの行為に当たるのかは今の私には見当がつかなかった。しかしその内容が今まで受けてきたどの拷問よりも残虐で屈辱的なのかは本能的になのか分かった。

私がもう一度腕に力を入れて体を起こすと、真っ白い大きなシーツが広がっていた。そして服は気を失うまでの服と変わって汚れ一つない鮮やかな緑に変わっていた。
シミ一つないシーツにため息が漏れると、バタンと扉を閉める音が聞こえた。そのおかげで今の今まで部屋が開かれていたことに気が付いた。

「あ、あの……。」
「起きたか下僕。」
下僕……。その呼び名は今まで聞いたことのない名称だったが、きっとこの家なりの奴隷と同じ意味合いなのだろうと勘付いた。

「……はい。ご主人様。」
「」
私は返事を返すと、私を下僕と称した若い男性は眉間にしわを寄せて目を細めた。
あぁ、また私はヘマをした。

「ご、めんな……さい。申し訳……ございません。」
その新しいご主人様のあまりに冷たい視線に声が引っかかってうまく出てこない。

「食事の時間だ。ついてこい。」
「……はい。」

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