真っ黒マントのうさぎさん

石ノ森 槐

第4話

そして週末、私たちはテストの赤点を初めて逃れたこともあって、ファミレスに集まっていた。

店員が私たちのいる机の横で眠そうにメモを取る準備を始めた。
「マルゲリータとシーフードパスタ1つずつ!あとはぁ~……。」
「ちょ、注文早いわ!ドリンクバーは?いる?」
「もち!あとアイス頼もう!」
私たちの忙しない注文に店員は面倒臭い顔をしながらメモを取った。

「アイスだと溶けちゃうじゃん!!後で頼みます!!」
「ご注文繰り返しまーす。」

店員が机を離れて行ってから、みゆきはドリンクバーも取らずに私と目を合わせた。
「何?」
「何って、あれから龍央とどうなのかなって。」
「……別に何もないよ。口も利かないし、何より学校にいる律下がってるやつとどう関われっての。」
「まぁそうなんだろうけどさ。」
みゆきはあれから毎日のように私のメンタルを心配してくれてる。
嬉しいのと申し訳ないのが半分ずつになってる。

「さすがに何日も元気なくなるのはこっちまで不安になってくるっていうかさ。」
「ごめんね?」
「いや、責めてるってわけじゃなくって!!……あれ?サトは?」

「ドリンクバー適当にとってきたよ~。」
「サトは……色気より食い気って感じだよね。」
「サトらしいっていうかなんて言うか……。」
「んひひ、ありがと~。」

”誉めてねぇよ……。”
みゆきが口走りそうなところで、サトはみゆきの口にストローを押し込んだ。

「ん~!!」
「みゆきは顔が怖いからミルクセーキね!!はい、さやちゃんはヨーグルトミックス~。」
「ありがと。」

みゆきは甘いのが苦手で、慌ててストローから口を離して顔をしかめた。
その横で、サトは嬉しそうに自分の飲み物に口をつけた。

「サトは何にしたの?」
「え?ミルクセーキにお砂糖混ぜてきた。」
「あんたね……。」
「んふ、意外とおいしいんだよ~。」

サトの飲み物を見て、私とみゆきが怪訝な顔をしてもサトはけろっとグラスの半分くらいまで吸い上げた。
「「うわぁ。」」
「あ、そうそう。さっきね~、すごいもの見ちゃったよ~。」
「……は?」
「え?」

「コンビニでお菓子買ってたらね、うさぎの仮面被った人が入ってきたの。」
うさぎの仮面……?!
「それって真っ白い仮面だった?のっぺらぼうにシール張り付けてあるみたいな!」
「ん?うん。」
”うさぎ”……うさぎだ……。

「さや?」
「それで?顔見たの?」
「まぁまぁ聞いててって。で、見てたら仮面とってさ~、それが龍央だったから~、声かけようと思ったんだけどね、真っ黒いサングラスした怖そうな人たち何人の引き連れてたからやめたの。」
「「」」
サトは私たちにそんな爆弾を投下してからドリンクバーにお代わりを取りに行った。
「サトの言ってたことって……どういう事なんだろう……?」
「うん……。」
「みゆき?」
私は咄嗟にみゆきの方に目を向けた。
でも、みゆきはなぜか少し悲しそうに眉間にしわを寄せていた。
サトはそんな様子を気にせずに激甘ミルクセーキを又作ってきた。
席に着いたのを確認してから、私は改めてサトに向き直った。

「サト、さっきのってどういう「莢菜!」ッ?!」
「あいつの話……もうやめない?」
「……え?」

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