真っ黒マントのうさぎさん
第3話
すると龍央はあからさまに私から目をそらした。
というか目を下に背けた。
何その反応…ちょっと傷つくんだけど。
「…やった。」
「?」
え?
「やったぁ…。」
その露骨に喜ぶ声のする方に目を向けた。
龍央が唇を噛んでいた。それも口元にすごく力を入れて…。
「あの…龍央?」
「嬉しいです。…すごく。心があったかくなります。」
「ッ!」
何その反応…そんな嬉しそうにしないでよ…。
いつも笑いかけてなんかこないくせに…。
「ありがとうございます。」
「…うん。」
私が頷くと龍央はまた嬉しそうに歯を見せた。
「じゃ…今日一緒に帰っても…良いかな?」
「」
「送りたい。彼女送るって…憧れなんだよね。」
その満面の笑みからこぼれた言葉はいつもの優等生からは考えもつかないことで、私はつい息を吸った。
…いきなり敬語やめないでよ…びびるし。
「いきなりは難しいね。ごめん。」
そしてそんな悲しそうに下向かないでよ。
「いや、…良いけど…二人に聞いてみる。」
私はそう言ってスマホに手を伸ばした。
「いいんじゃない?」
「はげど~。」
「ッ…いつの間に!?」
だるそうな声に振り返るとみゆきとサトが私の席の後ろの壁に寄りかかっていた。
「何気に二人の世界だったから話しかけずらいのなんのって。」
「ほんとそれ。うちらの事シカトしたっしょ。」
「ごめん…2人とも…。」
それはご立腹だよね…。
「でも良かったね、答え出せたね。」
…ん…サトはこうなること感づいてたのか。
「ちゃん送り届けなさいよ。うちらの大事な友達なんだから。」
…んん!?
「何でみゆきが私より馴染んでるの?」
「まぁ、姐さん根性だよね。」
これ意味わかって言ってるのかな…みゆき。
こうして二人に公認されてて、私と龍央はふたりきりで帰ることになっていた。
放課後になって、私は落ち着かない心持ちでカバンの中を無意識にグシャグシャにした。
…何やってんだろ…私。
なんか急かされるような感覚がずっと心の中にある…。
あ、化粧ポーチひっくり返しちゃった。
慌てて中を覗くと幸い全部きちんと蓋を閉じてあって大惨事は防げた。
「はぁ…。」
「莢菜さん。」
「っおう!!?」
急に視界に龍央の顔のドアップが入ってきたから、私は驚いて仰け反った。
「ハハッ…驚いちゃったかな…ごめんなさい。」
「…うん。」
悪く思ってないよね…このいたずらした後って顔。
「帰ろ。」
私はその子供のような無邪気な変貌ぶりに動揺しながら頷いて席を立った。
今日はみゆきもさとも別で帰ってくれるらしくて、付き合い始めから…
と言うかまずちゃんとOKしたわけでもないんだけど…。
とにかく二人きりで帰ることになってるんだけど…。
「」
「…。」
き、気まずい!!!
私は話すきっかけを探そうと龍央の顔をそおっと盗み見た。
…なんかよく見ると…顔立ちは悪くないかも。
肌綺麗だし…口は真一文字に引き結んでいてこっちまで緊張が伝わってくる。
目は…厚めの前髪に隠されていてうまく見えないんだよね…。
「…莢菜さん…近い。」
「へ?」
ボソリと呟いた龍央の声に引き戻されると、龍央との顔の距離があまりに近くて、私はついそこから飛び退いた。
「ご、ごめん。」
「…いえ。」
「」
「」
うわぁ…また沈黙だし…
ほんとやめて!!
何か話すことあったっけな…。あ、あの時の事があったじゃん。
「あ、あのさ…こないだはありがとう…。」
「…こないだ?」
「あの…青い橋の事。」
「…あぁ…。あれから大丈夫だった?」
「うん…大丈夫。」
…ではなかったんだけどね…。
そしてまた沈黙…。
この間苦手なんだよね…。
「あの橋の下…悪い人の巣窟らしい。」
「ソークツ?」
「たまり場って事。元々"親父狩り"が良くあったみたいだけど…最近は若い人も被害にあってるって聞いたことがあったから。」
「へぇ。」
それで急に声なんか掛けてきたんだ。
「これからはみんなといる敵も避けた方がいいかな。」
「…そうだね…。」
龍央はそう言いながら遠回りになる道を選んだ。
「え。今日も?」
「僕…ここだけの話…喧嘩弱いんで。」
いや、全然ここだけの話じゃないよ…見ればわかるよひ弱だって。
「…ブフッ…あッ。」
ヤバ…つい吹き出しちゃった。
オワタな。
「意外性ないですよね~、ハハッ。」
…あれ?
怒ってない…?
というか目を下に背けた。
何その反応…ちょっと傷つくんだけど。
「…やった。」
「?」
え?
「やったぁ…。」
その露骨に喜ぶ声のする方に目を向けた。
龍央が唇を噛んでいた。それも口元にすごく力を入れて…。
「あの…龍央?」
「嬉しいです。…すごく。心があったかくなります。」
「ッ!」
何その反応…そんな嬉しそうにしないでよ…。
いつも笑いかけてなんかこないくせに…。
「ありがとうございます。」
「…うん。」
私が頷くと龍央はまた嬉しそうに歯を見せた。
「じゃ…今日一緒に帰っても…良いかな?」
「」
「送りたい。彼女送るって…憧れなんだよね。」
その満面の笑みからこぼれた言葉はいつもの優等生からは考えもつかないことで、私はつい息を吸った。
…いきなり敬語やめないでよ…びびるし。
「いきなりは難しいね。ごめん。」
そしてそんな悲しそうに下向かないでよ。
「いや、…良いけど…二人に聞いてみる。」
私はそう言ってスマホに手を伸ばした。
「いいんじゃない?」
「はげど~。」
「ッ…いつの間に!?」
だるそうな声に振り返るとみゆきとサトが私の席の後ろの壁に寄りかかっていた。
「何気に二人の世界だったから話しかけずらいのなんのって。」
「ほんとそれ。うちらの事シカトしたっしょ。」
「ごめん…2人とも…。」
それはご立腹だよね…。
「でも良かったね、答え出せたね。」
…ん…サトはこうなること感づいてたのか。
「ちゃん送り届けなさいよ。うちらの大事な友達なんだから。」
…んん!?
「何でみゆきが私より馴染んでるの?」
「まぁ、姐さん根性だよね。」
これ意味わかって言ってるのかな…みゆき。
こうして二人に公認されてて、私と龍央はふたりきりで帰ることになっていた。
放課後になって、私は落ち着かない心持ちでカバンの中を無意識にグシャグシャにした。
…何やってんだろ…私。
なんか急かされるような感覚がずっと心の中にある…。
あ、化粧ポーチひっくり返しちゃった。
慌てて中を覗くと幸い全部きちんと蓋を閉じてあって大惨事は防げた。
「はぁ…。」
「莢菜さん。」
「っおう!!?」
急に視界に龍央の顔のドアップが入ってきたから、私は驚いて仰け反った。
「ハハッ…驚いちゃったかな…ごめんなさい。」
「…うん。」
悪く思ってないよね…このいたずらした後って顔。
「帰ろ。」
私はその子供のような無邪気な変貌ぶりに動揺しながら頷いて席を立った。
今日はみゆきもさとも別で帰ってくれるらしくて、付き合い始めから…
と言うかまずちゃんとOKしたわけでもないんだけど…。
とにかく二人きりで帰ることになってるんだけど…。
「」
「…。」
き、気まずい!!!
私は話すきっかけを探そうと龍央の顔をそおっと盗み見た。
…なんかよく見ると…顔立ちは悪くないかも。
肌綺麗だし…口は真一文字に引き結んでいてこっちまで緊張が伝わってくる。
目は…厚めの前髪に隠されていてうまく見えないんだよね…。
「…莢菜さん…近い。」
「へ?」
ボソリと呟いた龍央の声に引き戻されると、龍央との顔の距離があまりに近くて、私はついそこから飛び退いた。
「ご、ごめん。」
「…いえ。」
「」
「」
うわぁ…また沈黙だし…
ほんとやめて!!
何か話すことあったっけな…。あ、あの時の事があったじゃん。
「あ、あのさ…こないだはありがとう…。」
「…こないだ?」
「あの…青い橋の事。」
「…あぁ…。あれから大丈夫だった?」
「うん…大丈夫。」
…ではなかったんだけどね…。
そしてまた沈黙…。
この間苦手なんだよね…。
「あの橋の下…悪い人の巣窟らしい。」
「ソークツ?」
「たまり場って事。元々"親父狩り"が良くあったみたいだけど…最近は若い人も被害にあってるって聞いたことがあったから。」
「へぇ。」
それで急に声なんか掛けてきたんだ。
「これからはみんなといる敵も避けた方がいいかな。」
「…そうだね…。」
龍央はそう言いながら遠回りになる道を選んだ。
「え。今日も?」
「僕…ここだけの話…喧嘩弱いんで。」
いや、全然ここだけの話じゃないよ…見ればわかるよひ弱だって。
「…ブフッ…あッ。」
ヤバ…つい吹き出しちゃった。
オワタな。
「意外性ないですよね~、ハハッ。」
…あれ?
怒ってない…?
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