真っ黒マントのうさぎさん

石ノ森 槐

第2話

「ッえ?」
「...保健室...行くよ。」

龍央の項から一筋血が流れていた。
頭からの血だってことくらい、私にだってわかった。

「頭から血出てる。」
「...このくらい平気...です。」

「...いいから保健室行くよ。」
私は無理やり龍央の手を引っ張って保健室に急いだ。

扉を開けると大あくびをする養護の先生がいた。

「あれぇ?また怪我しちゃったの?」
「...ええ。」

また?
へぇ...常連なんだ。

ふと龍央の方を見ると気分が悪いのかぐったりと空いた席に座った。

「今日はどこ?」
「後頭部です。」

「...原因は?」
「黙秘権。」
「もう使えません。何回目だと思ってんのかな?」

「...言いたくありません。」
いや、睨み合ってる間にも血が垂れてきてるから!!

「言わなきゃ対処できないでしょ?」
「嫌です。」
「あのねぇッ「私です!」...は?」

これは黙ってみてなんていられないし!
早く血止めて欲しいし!!
もうワイシャツやばいことになってるから!!

「私がダンボール持ってて階段踏み外して...それで...落ちたけど痛くなくて...それで...えっと...。」

「...うん。協力ありがとね。状況わかったからもう大丈夫だよ。」

私の言葉を聞いて保健室の先生は、やっと龍央の治療をはじめた。

「龍央...大丈夫?」
「平気ですよ...大げさな。」
「こら、何言ってんの?頭は大切な場所なんだから...深い傷じゃないのが幸いだけど。」

先生によると、龍央は階段の壁にぶつかったことで少し擦り傷を負ったみたい。

って言うか...あんなに必死になってかばってくれなくても...平気だったのに...頭...消毒しみて痛そ。

「はい、おしまい。」

先生の声に私ははっと我に帰った。

「さやなさん。もう教室に戻ってください。」
「え?あんたはどーすんの?」

「たまにはサボっちゃおうかと...なんて。」
「...プフッ、何それ。」

なんか、龍央らしくない言葉につい吹き出してしまった。

でも頭ぶつけてるしなんかあっても困るもんね。
特に助けてもらっちゃった私が。

そして私は、龍央の言うとおりに教室に戻ることにした。

「早く戻ってきてね。仕切る人いないから。」
「はい。」

頷くその声に...ほんの少しだけ違和感を感じた。...なんというか...少しだけいつもより声が低い...本当に少しだけ...そんな気がした。

「本気でサボったら来るまでずっと待っててやるからね!」
「あはは...はい。」
私は静かにドアを締めた。

...この違和感...気になる...でも、何かあったら先生いるし...平気だよね?





...だからこの中で何が話されてたかなんて...知るよしもない。

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