真っ黒マントのうさぎさん

石ノ森 槐

第1話

「はぁ。めんどいから君がやれば?」

「ちょっと、軽音部...手伝って。」
「俺ら、曲合わせで忙しいから無理。」

さっきからずっとこう...。
さっきから装飾の方考えてるってのに...誰1人その話し合いに参加するどころか、携帯でゲームしてる奴までいる。

「じゃ、装飾の道具、職員室で借りてきて。」
「あんたがやってよ。こういう時だけやりゃいいと思ってんだろうからさ。」
「...は?」

もうヤダ...この人たちにお願いするより自分でやった方が早いと思う...。

私は下の階の職員室に装飾具のダンボールを取りに向かった。
までは良かったけど...

「女子の運べる大きさじゃないよね...。」
もっと小さな箱がいくつかあると思ってた。
「...重いし...。」

底を覗くと、セロハンテープやら地味に重いようなものがいくつか入っていた。

ってか前見えない...。
私はダンボールで視界がない中、恐る恐る階段を登り始めた。

最後の一段を上りきったと思ったその時ッ


ドンッ
「...え?」

ダンボールが急に後ろに動いた。
でもそんなこと想像もしていなかった私の体は見る見るうちに傾いた。

すぐそこに手すりはあったけど...両手がふさがってて...掴まれなかった...。

これ...私落ちる系だよね...最悪...。
私はギュッと目を閉じた。

ドサッ、ゴッ!
痛...くない...?
いや、確実に痛い音したんだけど...?

どゆこと?
私は恐る恐る目を開けた。

私の手からはダンボールは離れて中身が飛び出ていた。

あれ?この目線からすると...私浮いてる...?

「...大丈夫ですか?」
ビクッ
「ふぇえ!!??」

え?背中の方から声がする?
あれ?これってクッション化してくれた人ってこと?

私は慌ててその人から滑り降りた。

「...龍央!?」
「良かった...元気そうですね。...どこか痛いところないですか?」

「...無いけど...。」
「なら良かったです。その...ダンボール一緒に運びましょ。」

「あぁ、...うん。」

龍央が下敷きになってくれた...ってことだよね。
何でだろ...いつもあんなにひどい事私ら言ってるのに...。
...ヤバイ...すごいドキドキしてる...。

クラスの前にまで運ぶと龍央はほかの用事があるからと立ち上がり、私の前を横切った。

私はふと龍央の後ろ姿を目で追っていた。

それで気がついてしまった。
私は慌てて龍央の手を引っ張った。

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