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誘拐記念日

石ノ森椿

奮励

次の日、学校に着くとちょうど下駄箱から上履きを取る悠一の姿があった。

「おはよう。」

僕が声をかけると、悠一の手から上履きがすり抜けて床に落ちる音が響いた。

片足だけひっくり返っていて、"晴れ"と"雨"……まるで今の心境のようで少し泣きそうになる。



「よぉ。」

悠一は足先で向きを戻して無理やり足を押し込んでかかとを踏んだ。

「お前、寝れなかったのか。」

「え?」

「クマ。」

「……あぁ。」



階段近くの鏡を覗くと、目の下全体が真っ黒になっていて、肌もガサガサに乾燥していた。

「うわぁ…。」

「な?酷すぎてパンダかと思ったぞ。」



……「あんた見事にたれパンダだよ!!」……

影子さんの笑い声が脳内で勝手に再生されて、ため息が漏れた。

「宗太。」

「ん?」

「またあいつのこと思い出してんだろ。」

「……。」



「お前俺らのこと馬鹿にしてんのか。」

「え?…なんで?」

「言ってたろ、あいつ。要は点取れりゃいいんだ。狭かろうが道は開いたんだ。そんな1人で潰れそうになるな。」



「…うん。」

「悠一君の言う通りですよ。」

振り返ると、下駄箱から顔を出した透が呆れたように息を吐いた。



「勉強でどうにでもなるのであれば容易いことじゃないですか。」

「透……。」

「特にあの探偵に言われっぱなしは癪に触りますからね。」

「お前やる気の理由そっちだろ。」

「当たり前です。この僕にあれだけの事を言ったんですから踏み潰してやらなくば収まりません。」

透は蚊を潰すかのように顔の前で1度柏手を合わせた。

力強いパシンッという音で、僕の心のモヤまで払い取られてしまったようだった。



「物理でつぶすのかよ。」

「ははは…。」



教室に着くと、いつもの席に……顔がボコボコの悟と気まずそうにこちらに視線を向ける秋大がいた。

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