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誘拐記念日

石ノ森椿

不信感 ②

悠一の写真には目の前にあるクッキーが口を開けた状態で映っているのに、そのクッキーには焼き印が一つも入っていない。
僕の記憶にも間違いなく……表面が少し日々の入ったあり触れたクッキーの記憶しかなかった。焼き印何て押されていたら、僕だって市販だって気が付くはずだ。

「宗太君、一体どういうことですか?」
慌てて目の前の丸尾クッキーに手を伸ばす。
クッキーには『尾』の字を丸で囲んだ焼き印がはっきりと押されている。
「宗太君!!」
「わ、分からない……。」
「まさか本当に僕たちにアレルゲンをッ!」
「そんなことする人じゃない!!」
「じゃ、この写真をどう説明付けるんだよ!!」
「ッ……。」
答え何て浮かばず僕が口をつぐむと、悠一が僕とみんなの間に立った。

「落ち着けって!!こいつを一斉に攻め立てたって答えが出る事じゃねぇだろ!!……この写真を出したのは俺だけど……俺も影子って女が俺たちの命を脅かしたとは思ってない。」
「何故そう庇いきれるんですか?」
「考えてもみろよ、宗太を面倒見て多様な奴がわざわざそのクラスメイトに手を掛けるような……犯罪じみたことを、それも宗太にさせるか?」
「そんなの分かりませんよ。」
「おい!」
「何を勘違いしているか知りませんけど、影子という女性は宗太君を誘拐した犯人なんですよ?あわよくば宗太君をコントロールして人殺しを楽しむ方とも疑える。」
「透!」
「僕はもともと信頼に値する方とはお見受けしていません。君たちも目を覚ますべきだ。」
「てめぇ!!」
悠一が透に拳を掛けると、透もそれに負けじと悠一の頬に拳をぶつけた。
お互い掴み合いになったところで僕と悟と加藤が悠一を、憲司と秋大が透を抑えて引きはがした。

「離せ!!」
「悠一落ち着いて!!」
「校内でしかも顧問の前で殴り合うな!!」
「そこじゃないでしょ、先生!!」
「」
悠一が僕たちを振るい落とすと、それに合わせるように透も両手を上げて降参したように制した。
「松岡、お前もお前だ!お前の言い分も一理あるが、言い方ひとつで傷をえぐることになるんだぞ?」
加藤が透を叱咤すると、透はフンっと鼻で笑った。

「あなたが言えた義理ですか?あれだけ僕たちの親を見て行動しておいて。」
「松岡。」
「僕は、あなたのような教師が顧問だなんて虫唾が走るんですよ。どうせ我々と本気で向き合う気もない癖に。」
透は加藤の前に立つとわざと肩をぶつけてすれ違った。

「透!!」
「……宗太君、申し訳ないが今日は先に帰らせてもらうよ。」
「待って!」
「透君、殴ったことには謝罪をしておくよ。」
透はそう言って部室の扉を開けて出て行ってしまった。
それを見て、憲司が徐に自分のカバンを持った。

「ごめん、俺は透を追うよ。」
「憲司まで……。」
「大丈夫。透もわざとじゃないよ、多分。先生も、彼は本気でそう言ったわけではないと思いますから。ちょっと落ち着かせておきます。」
憲司は慌てて部室を出て扉を閉めて行ってしまった。

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