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誘拐記念日

石ノ森椿

不信感

加藤に情報を共有した内容は、どれも真面目に討論したものだったけど、なんとなく的に届くまではいかない。どれだけ6人で調べても、未成年というだけで規制が入るし、出来ることは限られている。
……悔しいけど。

数日後の土曜日、僕たちは部室に集まって、もう一度今までの情報に目を通した。
「とは言っても……。」
「完全に詰んだな。」
資料を広げてもすでに暗記するほど見返した後で新しいひらめきが出てくることはなかった。
すると、部室の後ろの引き戸が開けられた。

「秋大おっせぇぞ!!」
「わりわりぃ!!今までのツケが溜まっててさ。」
秋大は少し遅れたのを気にしてか、額に汗をにじませていた。
「掃除当番の何がツケだ。」
その後ろからは、顧問の加藤が名簿の板で秋大の頭をぺシンと叩いた。

「違うんだって先生!俺はね、部活に力を注ぎたかったから。」
「部活の前に教室の責任を果たせ、馬鹿タレ。」
秋大はふてくされた顔をしつつも、体を動かした後だから少し清々しそうだった。
「それで?進展はあったのか?」
「あったように見えますか?」
「全然!!ハハッ!」
透は秋大の奔放ぶりにいらだちを現すように目を細めた。
秋大はその様子を見て気まずそうにクッキーの大袋を開けた。
「ま、まぁこの差し入れでてぇ打ってくれよ、な?な?」
ご機嫌を取るつもりなのに、一枚手に取っているあたりは秋大らしい。
透は秋大に真っ先に向けられた袋の口を掴むと、袋の原材料の印刷をまじまじと見つめた。
「アレルゲンの心配はないみたいですね。」
「当たり前だろ~!毒は勧めないって!」
“クッキー”と“アレルゲン”の二つの単語に僕だけでなく秋大以外の4人が顔を曇らせた。

「……影子さん。」
「あ……いや……。」
「秋大……地雷。」
悟が秋大を睨み、憲司もため息をつきながら僕の顔を心配そうに見つめた。
僕が微笑むと、憲司はもう一度資料に目を落とした。
秋大と悟を止めようと視線を動かすと、悠一1人だけはクッキーを見て固まっていた。

「悠一……?」
「おい……そのクッキー一枚よこせ。」
「は?お、おう。」
透はぽかんと口を開けながら悠一に大袋の口を向けた。
悠一ははその中から1枚クッキーを抜き出して、眉間にきつくしわを寄せた。
「宗太……影子さんのクッキー覚えてるか?」
「……うん。」
「そのクッキーが市販のアレルゲンフリーだったって話はお前らにもしたよな?」
「えぇ、資料にもまとめた内容ですから間違いありません。」
透は模造紙資料を確認しながらうなずいた。
しかし、悠一は顔の血の気を失い、慌てて自身のスマホを開いた。

「それ……間違った情報かもしれねぇ。」
そして、深いため息を落として僕にスマホの画面を向けた。
僕は自分の目を疑った。
「……これ。」
「あぁ。」
悠一は透たちにも押し付けるように画面を見せた。
「……ッ?!」
透は画面と自身の持っているクッキーの大袋の中身を覗いて目を見開いた。

「なぜ……写真のクッキーに焼き印が押されていないんですか……。」


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