誘拐記念日
協力 ⑥
次の日から、僕たちに第3自習室を『誘拐記念部』の部室として活動の拠点が与えられた。
そうは言っても活動の内容が特殊なこともあって、校長からは条件として、『顧問と情報を共有し、校長に必ず資料を提出する。』ことを約束した。
加藤は顧問を任されていないらしく、相当うれしいのか僕たちよりも早く自習室に待機していた。
「よし、これからはおれにも情報を開示してもらうぞ!」
「先日お貸ししたノートとこの模造紙の資料ががすべてです。」
資料と言っても調査の内容はまだ途中で、資料と呼べる代物ではなかった。
しかし、僕たちが模造紙を広げると、加藤は腕を組んで資料を覗き込んだ。
「おい、1人1人に質問してもいいか?」
「どうぞ。」
「佐野、この病気に関してもお前らで調べ上げたのか?」
「はい。医療に関しては僕の家が専門分野になるので、父に相談していくつか資料を借りることができました。」
「あの堅物の院長がか……。」
「宗太が一緒に頭下げてくれたおかげです。」
「……言わなくていいよ。」
僕は恥ずかしさで、憲司を睨んだ。
……………(回想)…………………
憲司の家には僕も付き添って頭を下げに行った。
憲司の父親は僕たちを見るなりため息をついた。
「何でお前に医学書を貸さんといけんのだ。」
「どうしても調査に必要なんです!お願いします。」
「お前は医学を捨てた愚か者だろう。何がボランティアだ、何が人探しだ!金になる患者を選ぶのが今の世の中だ!!」
思ったより憲司の抱えている問題は深刻だった。
僕は、頭を下げる中で一つの疑問が浮かんだ。
「金になる患者を大切にしてるんですよね?」
「……そうだ。」
「では、どうして金にならない息子を捨てないんですか?」
「は?」
「……宗太?」
「僕があなたの考えで行動するなら、医学に進まない息子は不良品です。不良品はすぐに捨てますよね。だって、自分の作った失敗作ですから。」
僕の言葉に、佐野親子だけでなく、僕自身も耳を疑った。
僕、一体全体何言ってんの?!
「う、うちの子が失敗作だといいたいのか?」
「あ……違いますッ!そうではなく!!」
「うちの憲司はお前に侮辱されるような育て方はしとらん!!大事な息子を馬鹿にしてくれるな!!」
憲司の父親はそう僕に雷を落とした後、ふと息を吐いた。
僕は次の一撃が来るのかと体を縮こまらせた。
「田中宗太君といったな。」
「は、はい。」
「憲司に協力させてやってほしい。」
「……え?」
「君は、憲司の代わりに私を叱ってくれたんだろう。」
そんなつもりは滅相もなかった。
僕がぶんぶんと首を横に振ると、憲司の父親は僕の肩に手を置いた。
「す、すみません、生意気言って。」
「いいんだ、君の目を見てわかったんだよ。誰かのために怒る人の目は、自身の為に怒る人よりずっと強いんだ。明日憲司に資料を持って行かせよう。必要であれば専門医も常駐している。いつでも頼ってくれ。」
憲司の父親は憲司と話したいことがあるといって、僕は足早に大学病院の院長室というものすごい緊張の塊みたいなところを後にした。
………………………………
「そうか、田中意外とやるな!」
「ありがとうございます。」
意外って何だろう……いや、気弱にしか見えなかっただろうし意外だろうけど。
そうは言っても活動の内容が特殊なこともあって、校長からは条件として、『顧問と情報を共有し、校長に必ず資料を提出する。』ことを約束した。
加藤は顧問を任されていないらしく、相当うれしいのか僕たちよりも早く自習室に待機していた。
「よし、これからはおれにも情報を開示してもらうぞ!」
「先日お貸ししたノートとこの模造紙の資料ががすべてです。」
資料と言っても調査の内容はまだ途中で、資料と呼べる代物ではなかった。
しかし、僕たちが模造紙を広げると、加藤は腕を組んで資料を覗き込んだ。
「おい、1人1人に質問してもいいか?」
「どうぞ。」
「佐野、この病気に関してもお前らで調べ上げたのか?」
「はい。医療に関しては僕の家が専門分野になるので、父に相談していくつか資料を借りることができました。」
「あの堅物の院長がか……。」
「宗太が一緒に頭下げてくれたおかげです。」
「……言わなくていいよ。」
僕は恥ずかしさで、憲司を睨んだ。
……………(回想)…………………
憲司の家には僕も付き添って頭を下げに行った。
憲司の父親は僕たちを見るなりため息をついた。
「何でお前に医学書を貸さんといけんのだ。」
「どうしても調査に必要なんです!お願いします。」
「お前は医学を捨てた愚か者だろう。何がボランティアだ、何が人探しだ!金になる患者を選ぶのが今の世の中だ!!」
思ったより憲司の抱えている問題は深刻だった。
僕は、頭を下げる中で一つの疑問が浮かんだ。
「金になる患者を大切にしてるんですよね?」
「……そうだ。」
「では、どうして金にならない息子を捨てないんですか?」
「は?」
「……宗太?」
「僕があなたの考えで行動するなら、医学に進まない息子は不良品です。不良品はすぐに捨てますよね。だって、自分の作った失敗作ですから。」
僕の言葉に、佐野親子だけでなく、僕自身も耳を疑った。
僕、一体全体何言ってんの?!
「う、うちの子が失敗作だといいたいのか?」
「あ……違いますッ!そうではなく!!」
「うちの憲司はお前に侮辱されるような育て方はしとらん!!大事な息子を馬鹿にしてくれるな!!」
憲司の父親はそう僕に雷を落とした後、ふと息を吐いた。
僕は次の一撃が来るのかと体を縮こまらせた。
「田中宗太君といったな。」
「は、はい。」
「憲司に協力させてやってほしい。」
「……え?」
「君は、憲司の代わりに私を叱ってくれたんだろう。」
そんなつもりは滅相もなかった。
僕がぶんぶんと首を横に振ると、憲司の父親は僕の肩に手を置いた。
「す、すみません、生意気言って。」
「いいんだ、君の目を見てわかったんだよ。誰かのために怒る人の目は、自身の為に怒る人よりずっと強いんだ。明日憲司に資料を持って行かせよう。必要であれば専門医も常駐している。いつでも頼ってくれ。」
憲司の父親は憲司と話したいことがあるといって、僕は足早に大学病院の院長室というものすごい緊張の塊みたいなところを後にした。
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