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誘拐記念日

石ノ森椿

協力 ③

「リサさんのこと……。」
何て説明したらいいだろう……。
僕が口ごもると、ずっとノートに向かっていた憲司が口を開いた。

「主人格ってことは、影子さんが交代人格だったってこと?」
「うん。」
「解離性同一性障害……っていったっけ?」
「そうだよ。」
僕が憲司の一問一答に答えると、憲司は一人で納得したのかまたノートに書き込み始めた。
悠一は僕と視線を交わして、首をかしげた。
他の3人はちんぷんかんぷんだからか僕たちを見比べている。

「悠一には話したよね?」
「あ、違う、俺は納得してるんだよ。佐野が納得してんのが不思議なんだよ。」
「俺はほら、家が特殊だし。ボランティア行ったときに障がい者講習で話を聞いたことがあるんだ。」
憲司カバンから古びたノートを出すと席を立ち、黒板の前に立った。

「俺から少し説明してもいいかな?講習で聞いた情報の受け売りになっちゃうけど。」
「構いませんよ。」
透からチョークを受け取ると、憲司はノートを開いて何かの図を描き始めた。
人型・・・・・かな。

「これが、基本的な人な。人はストレスを抱えるとそれを発散したり、貯めこんだり……いろんな行動をとるんだ。それってストレスの対処を自分一人でこなしてる状態で、ほとんどの人はこれで生活できてる。でも、本人が耐えられない状態になった時に“防衛反応”として、『こんな目に合ってるのは自分じゃない』とか『自分は関係ない』って考える存在ができる。これが新しい人格なんだ。」
憲司は人型から矢印を伸ばしてその先にいくつも人型を書き上げた。

「感情的な人格もいれば、無気力な人格、破壊を起こす人格もいれば、常識を順守する人格もいるし、子供や年寄りの人格ができることもある。これは多重人格症とも言う。」
「多重人格?!犯罪者とかいかれたやつみたいだな。」
秋大の何気なく口にした一言に、僕はにらみを利かせた。
すると、秋大に悠一と憲司の睨みも集中した。

「確かに、一つの体に一つの人格が一般的と言われるけど、そこまで異質なものでもないんだ。……っていっても、僕は今まで会ったこともなかったから、細かい情報は知らなかった。宗太の話を聞けるのは新鮮だよ。」
「新鮮って言っても、僕は2人と生活してただけだよ。」
「2人……影子さんとリサさんを別ととらえてるのか。」
「だって全く違う人だから。」
僕は答えると、憲司は軽く頷いて透にチョークを返した。

「では、影子さんとリサさん……の病気は知識として蓄えておいた方がよさそうですね。」
透は2枚目の付箋をどかして、3枚目を手に取った。
そこで制限時間になって、僕たちはそれぞれ家路についた

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