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誘拐記念日

石ノ森椿

消えたコイン ⑤

しかし次の日の昼休み、チャットの通知で僕のスマホが細かく揺れた。
『宗太、メンタル危篤!!救助するために全員クラス待機。』
グループのチャットに悠一が入れたメッセージだった。それに反応するようにスタンプが異様に連打される。この大福にはんなりした文字で『りょ』って……やっぱり矢嶋秋大だ。
アニメのキャラは、悟……え、何これ皆このシリーズ持ってるの?

「あの、みんなで食べてるんだから無理してチャットにしなくてもいいんじゃないかな?」
僕が突っ込むと5人が一斉に僕を見てもう一度スマホがバイブで踊り狂った。
「え、新手の嫌がらせなのこれ?!ちょ、やめて、容量重くなっちゃうから!!」

こんな未だ少し僕をいじるやり取りで、放課後は予定通りに僕の席に5人がぞろぞろと集まった。
前の席の椅子を借りる悠一みたいな手法もいれば、自分の席の椅子を持ってくる透みたいな手法で椅子に座るのもいる。5人が僕の机を囲んだのを確認してから、僕が一番に口を開いた。
「やっぱり僕、このまま影子さんがいなくなったのが納得できない。」
「確かにな~おまえの姉ちゃんのから揚げ旨かったし。」
「あぁ、宗太を置いてどっか行ってしまうって柄でもなさそうだったろ。」
「うん……。僕、影子さんと会いたいんだ、会って……もう一度きちんと話したい!!」
秋大は食べ物中心で記憶しているみたいだけど、悟も影子さんと僕の中を見ていたのかそう付け足した。賛同するのか、徹も憲司も腕を組んで頷いた。

しかしその中で、悠一だけは少し反応が薄く見えた。
「悠一は?」
「あ?あぁ……。」
「影子さんに会いたくない?」
悠一はぼんやりとした相槌を打っていて、僕は恐る恐る問いかけた。
「……俺、実は退院の日にあいつに会ったんだ。」
「……は?!」
僕は思わず悠一に体ごと向きを変えた。

「あいつ、多分戻ってこねぇぞ。」
「どうして……どうしてそんなこと言うんだ!というかッ、そう思うなら何で止めてくれないんだよ!!」
「止めらんねぇよ!!」
「ッ!」
「あんな顔してッ……清々しい顔して自分は止めに来ないからお前と喧嘩すんなって……止められる訳ねぇだろ。」
「……悠一ッ!」
僕は思いっきり悠一の胸ぐらをつかんだ。
でも、悠一はそういって歯を食いしばって僕から目を逸らした。

「一度状況を整理する必要がありそうですね。ちょっと待っていてください。」
すると徹が一度咳払いをしてから一人教室を出て行ってしまった。
そっと追いかけると、徹は職員室に入っていった。

「覗け!」
「え、悠一どうしてついてきたの?」
「そんなの松岡が一人で動くのほっといたせいでロクな事じゃなかったんだ、こりゃ絶対気になるだろうが。」
職員室の引き戸を少し開けると透が担任と話している声が聞こえた。
そして担任に向かって深々と頭を下げていた。
「青天のなんちゃらだな。」
「霹靂?」

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