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誘拐記念日

石ノ森椿

緊急保護者会 ③

…影子視点…

私が悠一の母親を休憩室に座らせた後も、悠一君の母親は真っ青な顔をして感謝と謝罪の言葉を繰り返していた。
「うちの子を助けて下さりありがとうございました。」
「いえ、私は当たり前のことをしただけです。」
「うちの子に聞いたんです……数か月前までうちの子が弟さんをいじめていたと。」
「そうですか……。」
やっぱり口を閉ざしておける子ではなかったか……。
私が相槌を打つと悠一の母親はもう一度頭を下げた。

「本当にうちの子が飛んだご迷惑を……私がそばに入れなかったばっかりに息子をしつけられませんで。」
「とんでもない。彼らの中を修繕したみたいでした。これで私はいつでも消えられます。」
私の言葉に、悠一の母親は驚いたのか顔を上げた。

「“消えられる”?お仕事か何かですか?」
「いえ、そうではないんですが……皆さんに会うのはもうこれで最後になるんです。」
「どうして……?」
「私が”ここに存在してはいけない人間”だからです。」
悠一の母親は悲しげに私の腕に手を置いたものの、私が首を横に振ると視線を落とした。

悠一の家庭のことはもちろん調べがついていた。
母親が早くに家を追い出されてしまったことも、父親に結局捨てられたせいで兄弟が別々に暮らしていることも……母親が悠一を引き取るために必死に動いていることも。
引き取られてもあのひねくれた性格では又余計ないざこざが起きるだろうと踏んだから、わざわざ家に連れてきて、食事をさせた。
豆乳シチューは……きっとおふくろの味ではなかっただろうけどね。

「悠一君のお母さん、どうか息子さんと娘さんを大切になさってください。彼らはもうあなたのしたことを許せる心を持ってます。」
私の言葉に、悠一の母親は私をしっかりと抱きしめてくれた。
その力の強さに『きざなこと言っちゃったな~。』と少し照れ臭くなったから、顔が見られなくて幸いだった。

悠一の母親が落ち着いたのを確認して、悠一の病室の扉を開けると今度は……宗太がぼろ泣きをしていた。
「ゲッ……。」
悠一の反応に私の眉がヒクッと動いた時だった。

「あんたは!!」
私よりずっと早く動き出した悠一の母親に先を越され、悠一は耳を掴まれていた。
「いてっ、母ちゃんがやるのかよそれ!!」
「私がやらないでだれがやるっての!!全く人んちの事こんなに泣かして!!懲りなさいな!!」
「懲りてんだよ!こいつが勝手に!!」
「言い訳しない!!」

悠一はいやいや言いながらも母親が戻ったのがうれしいのか、少しだけ笑っていた。
これで良し……この家は大丈夫。

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