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誘拐記念日

石ノ森椿

緊急保護者会 ②

影子さんの運転で悠一の運び込まれた病院に着くと、夜間受付だけが存在感を持っていた。
「宗太、行くよ。」
「うん。」

受付で影子さんが説明すると、直接病室に案内するわけにはいかないのか、悠一の付き添いの人を呼んでくれる運びとなった。
付き添いの人を待っていると、廊下の奥の方から小柄の女性がこちらに近づいてきた。
女性は看護師に悠一の母親だと紹介され、僕たちを見るなり崩れ落ちてしまった。

「大丈夫ですか?!」
慌てて2人で手を貸すと、悠一の母親はゆらゆらと立ち上がった。
その間も何度も謝罪を繰り返していて、とても落ち着いた状態とは言えなかった。
「少し2人で話しませんか?弟たちも話したいこともあるでしょうし。」
影子さんはその姿を見て、悠一の母親に腕を貸して自身に引き寄せた。

「宗太、あんただけで先そっち行ってくれる?218号室。」
「はい。」
影子さんの指示通りに218号室の前に着くと、ナースステーションのすぐそばの部屋でどうにか危機を脱した状態だなんだとわかった。

ノックをして扉を開けると、悠一は点滴に繋がれ、病室衣に着替えさせられていた。
「悠一?」
「おう、宗太か……。あれ、母ちゃんは?」
「影子さんと話してる。」
「ま~た内緒話かよ。」
僕が答えると、悠一は不服そうに顔をしかめた。
丸椅子を押し付けられて渋々座ると、悠一は点滴の刺さった腕に目をやっていた。

「悠一、その……今日は本当にごめ「謝罪のために来たなら帰れ!」……悠一ッ。」
「言っただろ?これは俺が決めたことだって。それにお前はちゃんと俺を助けるためにいろいろしてくれてたんだろ?医者に聞いた、お前らすごかったって。」
「そんなのッ、僕は悠一を見殺しにしたくなかったから。」
悠一は僕の頭を掴むとぐいぐいと揺らした。

「ちょ、酔うってば。」
「へへッ、おれからの感謝の気持ちだよ!!」
やっと頭を離されて思わず悠一を睨むと、悠一は少しほっとしたように笑った。
「ありがとうな。」
「……僕も……庇ってくれて、あと生きていてくれてありがとう。」
改めて口にした瞬間、悠一の顔が涙でゆがんでしまった。
「おう!って泣くな泣くな!!影子が帰ってきたら俺のせいになるだろ!!」

涙を拭おうと袖に目を付けたその時、僕の後ろで扉が開いた。
「ゲッ。」
悠一の反応でわかった……影子さん話し終わらすの早くないですか?!

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