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誘拐記念日

石ノ森椿

緊急保護者会

…影子視点…

私が病院を出たころには、火が落ちて街灯の光が頼りほどになっていた。
学校に戻ると、外に聞こえるほどの罵倒が聞こえてきていた。
1-C教師では緊急の保護者会が開かれ、学校長、学年主任の1-C担任が状況の説明をしていた。
一番後ろの席に腰を掛けると、最前席に陣取りふんぞり返る面々に目が留まった。

「この度は保護者の皆様にご心配ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。」
校長と学年主任が頭を下げるのと同時に、前席付近から奇声に近いほどの父兄の罵声雑言が飛び交う。
それも学校側の責任を追及するものばかりで、私はあきれて口を開いた。

「責任問題ね……みなさん犯罪者の親になりたくないだけでしょ?」
「なんですって?!」
「顔色が変わってきていたのは皆さんも見ていた……特に佐野君パパ、あなたはこういう時だけ現れるくせに、我が子に人の命の尊さすら教えていないんですね。」
「それは……。」
「彼はきちんと救急車すら呼べませんでした。こういう場で焦るなというのは酷だとわかっています。それでも、患者の名前と学校の名前だけでも言えれば救急車は到着することを、彼は冷静になってからも首を横に振りました。知識として蓄えられていなかった証拠でしょ。だから簡単に人の命を奪う行動がとれたんでしょうね。」

「ちょっとあなた失礼よ!!この方がどこにお勤めか分かってて「どうでもいいそんなこと!!」な……どうでもいいですって?!あなたみたいな庶民なんかね私たちが一声でどうとでもッ!」
「なら今回の加害者ご家族をあげつらえましょう!まず長谷川君のお母さん。あなたは我が子可愛さでご主人を単身赴任させているんですよね?」
「それがどうだって言うのよ!」
「それなのに、他人はアレルギーで殺してもいいと教育なさってるんですか?」
「うぐっ……。」
「あと矢嶋君のお父さん、あなたは息子のお兄さんがアレルギーと分かっていてわざと食べさせて馴らそうとしたそうですね、結果はよく覚えておいででしょうけど。」
「」
矢嶋の父親は言い返す言葉が見つからないのか、無言で私を睨み下ろす。
「最後に松岡君のご両親、よくぞ優等生に育ちましたね。おかげで彼も優秀に人殺しロボットまっしぐらでしょう。」
「人殺しだなんて大げさに言わないでください。」

父兄たちはここまで言っても自身の置かれた状況が分からないのか、私に罵詈の数々を投げつけてくる。しかも今、大げさとか言われて切れないほど人間出来てなどいない。
「はぁ?!目の前の惨劇を見たのにまだそんな悠長なことを言ってるんですか?!アレルゲンを口に含むどころか大量に摂取したらどうなるか、自分の子を見ていてまだ気が付かないんですか?!せめてあなたたち親御さんたちは子供たちに伝えて止められたかもしれないんですよ!それをやれうちの子は悪くないだの、学校に責任問題があるだの何だの……。」

私の間髪入れない言葉に保護者は声を上げられずに口をあんぐり開け固まった。
本当に呆れた……。これだけになるまで何も手を打てない保護者にも、見て見ぬふりを続けていた學校にも、こうなる可能性が分かっていたのに悠一を助けられなかった私にも……ほとほと愛想が尽きる。
いや、元々愛想なんてあってないようなものだけど。

「もういいです。私は稲辺君の病室に伺うので、これからどうなるかなんてもうどうでもいいです。こんな泥で泥を掃くような会、いるだけ時間の無駄ですから、失礼します。」

教室を出て昇降口に着くと、入り口で一人の生徒が傘立てに座りしょぼくれていた。
「宗太。」
「影子さん……悠一の様子は?」
「一緒に来る?」
「うん。」
宗太の背を押して昇降口を出ると、触れた背中にはじっとりと汗がにじんでいた。
この子は大丈夫……宗太は自身のやったことに苦しんでいる。

私は宗太を車に乗せて、アクセルを踏んだ。

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