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誘拐記念日

石ノ森椿

修繕 ⑧

…悠一視点…

「ネタバレするの早くないか?」
「宗太の口の軽さが悪いのよ。救急箱貸して。」
「八つ当たりするなよ、ほれ。」
おっさんは影子に救急箱を渡すと、奥に引っ込んでしまった。

「さ、こっち向いて。」
影子は救急箱の箱からゴム手袋を取りだした。
「俺汚くねぇんだけど。」
「血から感染するウイルスもあるの。沁みるよ。」
「ッ……てぇ……。」

傷の手当てをしてもらった頃に、おっさんが3人分の飲み物を準備した。

「ガキはオレンジジュースでもいいか?」
俺が手を伸ばすと、それに被るように影子がオレンジジュースを手に取ってしまった。
「は?」


「あんた……直近でアレルギー検査した日いつ?」
「……いや、覚えてねぇよ。」
影子はおっさんに耳打ちをして、おっさんはもう一度奥に引っ込んで冷たい緑茶を代わりに出してきた。
おっさんはそれを俺に渡すと、俺の向き合いに腰を下ろした。

「で?そのやんちゃは誰にやられたんだ?」
「別に……。」
「って言っても松岡あたりか。」
すっとぼけのおっさんを睨みつけると、おっさんはへらッと笑ってカップを机に置いた。
「それだけじゃない……あなたも情報は握っているんでしょ?」
「あぁ……なんだ、もう言っちまったのか。」
おっさんは影子の顔をチラッと見て席を立った。

「何故隠していたの?」
「隠したつもりはないさ。」
「情報を開示しないのは隠ぺいでしょ?」
「言いがかりだな、見守ってただけさ。」
「勝手なことをしないで。」
「勝手、かぁ……。情報をどう使うかは自由だろ?」
「あなたに自由を与えた覚えはない!!」

ピシャリと言い放った声に影子の方を見て、後悔した。
影子はおっさんをきっとにらみ上げ、微かに涙が浮かんだ目は宗太にそっくりだった。
あの日、リサを庇って声を荒げた宗太も苦しそうににらみを利かせていた。
そんな影子を見て、おっさんはため息をついて影子の足元に膝をついた。

影子は指で涙を拭った。
「そういうところが気に入らないのよ。」
「で?あいつはどうするんだ?やるのか?」
おっさんは親指を立てて首を掻っ切るような仕草をした。
「まさか。あの約束は守るわ。ただ……あの子には少しお説教しないとね。」
影子はそう言ってそそくさと事務所を出て行った。
一人残された俺はおっさんの相手をしないといけないってことだよな。

「さて、稲辺悠一。」
「……何すか。」
「影子面白いやつだろ。」
おっさんは冷めきったコーヒーをすすった。
「さぁ、俺は何も知らないんで。」
俺もおっさんに合わせて湯飲みを傾けた。
「おや、湿気た振りしちゃって……影子に惚れてんだろ?」
「ブフッ?!」
思わずせき込むと、おっさんがへらッと笑った。

「は?!」
「本当にわっかりやすいな~、お前。」
「んな訳ねぇだろ!」
「俺たちのイチャイチャ見て嫉妬心むき出しにしてたくせによく言うよ。」
俺はもう一度むせ返ってから息を整えた。

「誰があんなクソ女……。」
「ほぉ。なら俺が貰っちまってもいいのか?せっかく男らしく弟庇ったのにもったいねぇ。」
「何が弟だ、他人だろ。」
「まぁ……そうかもな。」
おっさんは俺の返答になぜか……少し寂しそうに笑った。

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