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誘拐記念日

石ノ森椿

修繕 ②

駅まで来る頃には生徒指導の教師の声も聞こえなくなっていた。
「ここまでくれば大丈夫だろッ。」
「はぁ……はぁ……キツッ……。」
咄嗟に目の前に止まったバスに乗り込むと、終点が隣町の遊園地になっていた。

「どこに向かうの?」
「あ?終点に決まってんだろ。」
「嘘でしょ……。」
僕たちの会話に、運転手は怪訝そうにバックミラーで僕たちの様子を見ていた。
気まずさで座席に縮こまる僕の横で、悠一はあくびをしていた。

終点で料金を払って降りると、目の前にすぐ遊園地の門が僕たちを見おろしていた。
「ほら、2人分。早く入るぞ!」
「え!……うん。」
悠一はポケットからチケットを取り出して専門のリストバンドを指にかけて手招きをしていた。
透明地に緑の線が一本入ったリストバンドにいけない事とはわかっても心が弾んでしまった。

悠一があれこれと指を差すものに乗っては叫んで、笑って、驚いて、昼食をはるかに過ぎたころに二人して空腹の虫が鳴いて、分厚いサンドイッチを注文すると写真より分厚いサンドイッチを渡されることになった。
潰して食べれば問題はなかったけど……これ、顎外れないといいな。

「悠一。」
「あがっ?」
悠一が口を開けた時に声をかけたから、情けない顔を拝んでしまうことになった。
それでも噛り付いた悠一は口を動かしながらこちらを向いた。
「ごめん、タイミング。」
「フググ?」
「え?」
ほとんど聞き取れない言葉に聞き返すと、悠一は腕で『T』を作って口の中の物を呑み込んだ。

「何だよって聞いたんだ。」
「あぁ、その……さっきのあの態度、良かったのかなって。あれじゃ明日何言われるか。」
「良いんだよ別に、俺がお前をいじめるのやめるって決めたんだからそれで。」
「でも……。」
僕が食い下がると、悠一はサンドイッチの中に入っていたピクルスを僕のサンドイッチの上に乗せた。

「しょうがねぇだろ、俺はお前の騎士なんだから。」
「何それ、気持ちわる。」
「お前が言うかよ。とにかく、俺が自分で決めたことだからお前はただ守られてろ。」
「……ありがとう。」
「おう。」

悠一はガツガツとサンドイッチを頬張ると、炭酸で流し込んだ。

「なぁ、宗太。」
「ん?」
「お前、リサって女に初めて会ったのっていつなんだ?」
「あぁ、影子さんに誘拐されて3日くらい経った頃だったと思う。」
僕の発言に、悠一はサンドイッチを自らの太ももに落とした。

「は?え……アイツおまえの姉ちゃんじゃねぇの?」
「え?……昨日聞いたんじゃなかったの?てっきり……。」
普段以上に踏み込んだ質問してくるから昨日何か言われr単打とばっかり思っていた。
僕は自分の湿原に口を抑えた。

「そんな大層な話聞くかよ!だぁ!もうお前らわけわかんねぇ!お前の知ってること全部よこせ!」
悠一はサンドイッチを掴みなおして大きく噛みついた。
「えぇ……僕だって影子さんのこと良く知らないよ……。影子さんとリサさんの事で手いっぱいだよ。」
「それを聞かせろって。」
「あぁ……その、僕がうっかりリサさんの誘拐された日のうちに約束はさせられてたんだ。」
「8時以降がどうとかってあれか。」
「そう。でも僕がうっかりリサさんの時間にトイレに起きちゃって……、その時のリサさん僕に箒向けて、『あなた誰?』って。」
僕があの日の出来事を再現すると、悠一は肩眉を上げて口の中を呑み込んだ。

「は?影子が連れてきたんだろ?」
「だからだよ。リサさんと影子さんは記憶が分かれちゃってるんだ。」
「ほぉ……。」
「つまり、リサさんと悠一は昨日の夜が初対面!アレルギーの事を知ってたのは影子さんだけだったんだ!」
「な、るほど……それはマジで悪かった。」
僕が詰め寄ると、悠一は頬を歪めて苦笑いを浮かべた。

「でもお前そもそも何で誘拐され続けてんだよ。」
「え?」
「学校にも通ってんだし、途中で逃げれるだろ。」
「あぁ、まぁいいかなって。」
「なんでだよ!」
「僕、今母親が入院しててさいつ戻るか分からない状態なんだ。だから家にいても料理とかあんまりできないし……影子さん僕の事情調べてこうしてるみたいだったし。」

僕が訳を正直に話し終えると、悠一は宥氏をかみつぶしたような顔で僕を見ていた。
「なに?」
「いや、お前きちんと洗脳されてんじゃねえのかと思ってさ。」
すると、スマホが鳴った悠一が画面を見て不服そうな顔で席を離れた。

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