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誘拐記念日

石ノ森椿

庇護 ③

……悠一視点……

宗太は影子に言われてしぶしぶ部屋に足を進めた。
すれ違いざまに宗太を見て、その目の鋭さに思わず息を吞んだ。
その目はリサと呼ばれていた影子を庇い声を荒げたところからだったが、まるで視線だけで殺してしまおうと考えているようにも見えるその冷めた目は、影子の今俺に向けている目とそっくりだった。

背後で扉がしある音を確認して、俺が先に口を開いた。
「それで?さっきのは何だよ。」
「こちらの台詞よ、何のつもり?」
「てめぇが下手な演技してっから、やすやすとバレただけだろ?」
「演技、ねぇ……。」
影子はキッチンに入ると、戸棚から2Lの牛乳パックを出してきた。
「飲みなさいよ。」
「……は?」
「どうしたの?”演技”同士楽しみましょうよ。」
演技同士だと?
「ふッざけんな!!逆切れにもほどが「なぁに?動揺しちゃって。」ッ。」
影子は一歩、また一歩と俺に歩みを進めてくる。
後退ると、影子はその歩幅に合わせるようにゆっくり俺の後を追う。
リビングの端をぐるりと回ったころで、俺が足を捻って体制を崩した。

それを狙ったようにおれの顎を掴んだ影子はにやりと口角を上げて牛乳パックを高く掲げた。

「ほら、口開けなさいよ。どうせそのアレルギーだって嘘偽りのかまってちゃんの”演技”なんでしょう?」
「やめろ………。」
「やめない、やめるわけないでしょ?”大根演技”なんだから。」
「嫌だ!!……やめてくれ……。」
「」
「やだ……痛いのは怖い……やめて……お願いします……。」

「顔上げなさい。」
俺が顔を上げると、頭上には空の牛乳パックが逆さまに掲げられていた。

「なん……で?」
「……ある人との約束なの。私は人を殺さないし、宗太にもさせない。」
「約束?」
「私は、かつて本当に人を殺してる。変態の男を包丁でめった刺しにしてね。」
「ッ?!」
「リサは“自分で殺した”って思いこんでるから、夜しか表に出てこれなくなったけどね。」

「そのリサって誰なんだ・・・・・?」
「私……いや、この体の本来の使用者。」
「」
なんだそりゃ、真面目に聞いて損した。
ただのオカルトじゃねぇか。
「オカルトならどれほどよかったか……。リサは男性、特にあんたみたいな威圧的な男を怖がるの。だから宗太に帰らせろってあれほど言ったのに……。」
影子はいらだちをため息で吐き出した。

「私はリサじゃないからあの子と同じこと言われてもかまわないけどね。リサは強くない。もしリサがコン体を傷つけるようなことがあれば私は……」
影子はそこまで言うと、俺の首を掴み床に押し倒した。
そして拳を腹に軽く振り下ろして俺と視線を合わせた。
「内臓かき混ぜる以上の生き地獄をプレゼントしてあげる。」
「ッ……。」
「遅くまで話し相手ありがとう、おやすみ。」



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