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誘拐記念日

石ノ森椿

誕生会 ②

会が盛り上がり、ガンガン減っていく唐揚げの皿をぼんやり見つめていた時だった。僕の横に席を取っていた稲辺が僕の脇腹をつねった。
「おい、宗太。お前主役なんだからもっと食えよ。」
「……そうだね……ありがとう。」
「お前、余計なこと言ってないだろうな?」
僕が首を横に振ると、稲辺はつねる指に力を入れた。
「ッ!……本当に言ってない……。」
「それもそうか。おまえだって姉さんに恥晒したくねぇだろうしな。」

稲辺の表情を見て僕はやっと今日の会に5人が参加した意味を悟った。
彼らは“口止め”の為に僕を監視するつもりだったんだ。

最悪だ……こんなことしなくても言うつもりはなかったけど、これじゃ牢獄だ。
僕は唇をかみしめた。
すると僕と稲辺の影に大きな影が重なった。

「宗太、稲辺君と仲いいのね。」
やっぱり影子さんか……。僕はデジャブがありすぎてもう慣れてたけど、稲辺は背後を取られた経験がないのか短く息を吸って振り返った。
「ッ?!」
「あら、ごめんね?最後にデザートを準備してあるの。せっかくだしどうかなと思って。」
そう言って影子さんは盆の上から……何故かみんなにバラバラのケーキが配った。
すると、先ほどまで騒いでいた面々の顔が一気に曇った。

きょとんとする影子さんに、松岡が口を開いた。
「すみません……ぼくたちはアレルギーがあるのでこちらは……。」
「あぁ!それなら問題ないよ!きちんとそれぞれアレルギーを抜いたものになってるから!」
「は?」
「稲辺君は乳製品、長谷川君は蕎麦、松岡君は小麦、矢嶋君は甲殻類、佐野君は卵がだめなのよね?」
影子さんが淡々とアレルギーを並べると、名答だったのか5人とも口をつぐんだ。
その反応は僕も同じだった。だって……5人にアレルギーがあるなんて初耳なんですけど?!

「全く、宗太も直前に行ってくるんだから買い物大変だったのよ?」
影子さんはニッコリ笑っていたけど、目の奥が見て取れなかった。
……話を合わせた方がいいのかな。
「あ……ごめん……。」
「そう!だから大丈夫!みんなずっと警戒してたんだね。体に害があるものを食べるなんて毒と同じだものね!」
影子さんはそう言って改めて目の前のケーキを勧めた。
それに一番に反応したのが矢嶋だった。
矢嶋はがぶっとケーキにかぶりつくと、ぐっと親指を立てた。

矢嶋の反応を皮切りに、4人が口をつけ始めた。
影子さんの言った言葉は確かだったみたいで、5人完食したころにも反応は出ていなかったようだった。
「もし心配だったらもう少しゆっくりしていっていいからね?」
影子さんは5人の反応を見てほっとした顔をして皿を片付け始めた。

「僕、手伝うよ。」
「何言ってんの!せっかくなんだからみんなでボードゲームとかして遊ばなきゃ!」
「でも「宗太はみんなと遊ぶのがもてなしでしょ!」……はい。」
キッチンの奥に目をやると何かのメモがされた紙が乱雑に置かれていた。
あれ……5色ある……。

「ほら、行ってらっしゃいよ!」
影子さんにぐいぐい通されてキッチンから追い出されてしまうと、5人がトランプを広げ始めていた。
あのトランプ僕の部屋に置いてあるものと柄が似てる……持ってきたのかな……。
「おい、宗太!おせぇ!!トランプ借りるぞ!!」
……ですよね……。

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