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誘拐記念日

石ノ森椿

誕生会

当日、朝から影子さんが忙しなく料理の準備を進めていた。
「宗太、おはよう!」
「おはよう……。」
いつも通りに起きた僕は、甘い果物の香りこないだの招待が現実になるのかと身震いして、慌てて洗面所い駆け込んだ。
鏡に映る僕は、今までに見たことのないほど変な顔をしている。
憂鬱のような、不満のような……なのに少しだけ心に高揚感を感じる。

あれ、僕……。
「宗太!!ちょっと来て!!」
影子さんの張りきった声で我に返って、キッチンを覗くと影子さんが手招きをしていた。
「何ですか?」
「あーん。」
影子さんの一言に反射的に口を開けると、ズボッと菜箸で何かの塊が突っ込まれた。
「あっくぅッ!?はふっ、フッ!!」
歯が少し当たったのかじゅわっと染み出した液体が舌に熱さを直撃する。

思わず口に手を添えながら上を向いてどうにか口の中を冷やすと、鼻に抜けた鶏肉の香りでそれの正体が分かった。

「唐揚げでふか?」
「ふふっ、そうでふそうでふ。」
僕がまだ熱冷めやらない口内を庇ってしゃべったのを、影子さんは真似をして揶揄った。

「おいしい?」
「はい。」
「よし、そしたらたくさん揚がるから大皿3枚出しておいて。」

準備が整った頃、来客のチャイムが鳴った。
インターフォン画面を覗くと5人がそろって映っていた。カメラ越しにこちらを覗き込んでくるようで背筋が気味悪い。

そんな僕の不安を気に留めないのか解錠のボタンを押してしまった。
やっぱり本当のこと言った方がいいのかな。
「あの、影子さん。」
「ん?」

「いや、何でもないです。」
「そう?ほら、友達そろそろ上がってくるだろうから案内して。」
「は……い。」
ダメだ、言えない。
僕が何か言ったところで今更って話だし。
もう5人は来ちゃってるんだし……どうこうできる状態じゃない。

玄関に向かうと、扉が開く音が廊下に響く。
「よぉ、宗太。」
「……いらっしゃい。」
顔は引きつってないだろうか……影子さんには気づかれないようにしたいな。
『僕はいじめられてるんです』……あとで説明するなんて苦痛でしかない。

「なんだよお前、意外と金持ち住まいじゃねぇか。」
「」

5人を案内すると、影子さんがキッチンから顔をのぞかせた。
「いらっしゃい、時間通りで助かった~!今唐揚げあがったところだからね!!」
影子さんの声に面々の歓声が上がった。

机には唐揚げの大皿3枚と山盛りのご飯が並ぶ。
僕たちが席に着いたのを確認すると、影子さんもリビングの椅子に腰かけた。

「よし!それじゃ、宗太の誕生日とお友達の活躍を願って乾杯!!」
影子さんの音頭で僕たちはそれぞれ持ち寄っていたペットボトルを掲げた。
って、僕の誕生日は全くもって今日ではないんですけどね!
影子さんは僕の誕生日じゃないってわかってるはずなのに……ぼくは理由もない日を勝手に祝われてる。
それも、いじめっ子のグループに……あー!駄目だ!考えたら悪寒がしてきた。

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