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最強職は勇者?いいえ、武器職人です

てるてる

1章 王国編 14話 死剣頼り

「え?」
思わず声が漏れた。
俺が剣を叩きつけた角は、あっさりと折れた。
当然剣に、傷などもない。
あまりにも、あまりにも脆い角だった。

「鬼の角って、こんなに脆いのか...?」
鬼の角は弱点ではあるものの、そこだけ弱いという意味の弱点ではない。そこを破壊すれば弱体化させることができるという意味の弱点だ。

鬼の角には鬼の魔力が集中しており、鬼の最硬部位の一つでもある。
その角が一撃で折れた。

つまり
「こいつは、弱い!」
振った刀を武器精通で操作し、弧を描きながら鬼の脳天目掛けて振り下ろす。

予想通り刀はあっさりと鬼の皮膚を食い破り、
高濃度の酸が噴水の様に吹き上がる。

「!!」
両手足を武器精通で上下に海老反りになるように操作して、酸の直撃だけは避ける。

「ずぁ!」
が、あくまで避けたのは直撃だけ。
飛び散った酸が衣服を溶かし、肉をも蝕む。
が、心臓には届かなかった。

息を整え、鬼を見る。未だに酸を吹き出す体が、先程よりも縮んでいるように見えた。

離れとこう。
そう思って動いた時、俺の目の前を落石が襲った。

反射的に後ろに全力で跳ぶ。

「なんだ!?」
混乱しかける頭で状況を整理し、答えに至る。

洞窟の天井があの吹き出し続ける酸で溶けたか。

「やっかいすぎんだろ...」

落石は鬼の周囲を囲むように降っていく。

「攻撃できねえ...」
完全に鬼の周囲は岩と酸で覆われた。


「オオオオオオオン!!」
その囲いから咆哮が上がる。

「な、あいつの頭はもうないはずだ。
なのになんで声が出せる!?」

酸と落石はすでにとまり、岩を破壊する音が響く。
そして、岩の囲いの中から、双角の小柄な鬼が現れた。

「さっきの、鬼じゃない...?」
驚きを隠せなかった。
疑問が生じる。
当然、隙も──。


気づけばその鬼は目の前にいて、
何も出来ずに吹き飛ばされた。

「がふっ」
岩壁に背中からぶつかり、息がこぼれる。

背中が焼ける様に痛い。流血だけじゃ、ない...。
溶かされる...。
「!!」
触らなくてもわかる。
背中が血だけじゃなく別の液体で濡れていることが。

嫌な予感がして足元を見る。
「愚策だった」
足元からも酸が溢れだしていた。
今は本当に少しだが、おそらく次第に増えていくだろう。

周囲の酸に1頭の鬼。
「一瞬でケリつけねえと、やばいかもな」
笑いながらそう言う。

体内武器庫から死剣を取り出す。
「これ、こんなに早く使うなんてなあ」
そう一人呟き、大上段に構える。

鬼は突進体勢。一歩目を見逃したら俺が死ぬ。
一歩目の加速に入る瞬間。
それが俺の生死を分ける。

目が合う。
互いに逸らさず、見つめ合う。

酸が足裏を焼く──無視する。

ピチョン
水滴が落ちた音だったのだろう。
それが鳴った瞬間、目が、変わった。

鬼の姿が、掻き消える。

それに動揺しながらも全力で
「魂黎撃!」
スキルを発動する。

瞬間、視界がブレ、薄紫の波動が周囲を照らす。

そこに、鬼の断末魔が聞こえた。

俺は全力で倒れようとする体を支え、
二の足でしっかり立つ。

鬼の真っ二つになった体を見て、安堵する。

「やったか...」

倦怠感が体を包む。
「でないと...」

剣を杖代わりにして洞窟の外に出る。

思ったよりも、反動が、大きい...。

俺はその場に死剣を突き刺し、それに寄りかかるように意識を落とした。

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