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最強職は勇者?いいえ、武器職人です

てるてる

1章 王国編 10話 新たな力と謎

空間を切り裂いた物の正体は

死神の持つ、漆黒の大鎌だった。

死神は表情の一切見えない顔(があるはずの場所)を

こちらに向け ──

ゾワッ

全身の毛がたち、毛穴から冷たく、じっとりした
汗が流れだす。

考える暇もなく横っ跳び。また、空間が裂ける。

息が、乱れる。今までに1度しか体験していないのに、
死が、すぐそこまで迫ってくる気配を感じる。

必死に逃げ回る。檻の中で、自分の生存本能に
身を任せ、とにかく逃げ回った。

しかしそれも、長くは続かず、

ビュ!

鎌が風を斬る音と同時に、俺はバランスを崩し、
地に倒れ込む。

「ちょこまかと逃げやがって。」

死神が話し方を崩した。

悪態をつきながら鎌を自分の肩に置く。

「まあ、人間にしてはよく頑張ったな。」

頑張った賛辞だとでも言うように大鎌を振り降ろす。


その動作一つ一つがスローモーションで見ているように緩慢な動きに見える。



ここで、死ぬ、のか。まあ、1度死んだ身だ。

かまわな─本当にそうか?─い。

声が聞こえた。初めて聞いたのに、妙に
安心するような声だ。

─現世に未練はないのか?─

─大切な人に合わずに死んでいいのか?─

─をしなくていいのか?─

声は何度も問いかけてくる。

──────     うるさい。

うるさい。うるさい。うるさい。うるさい..

その声に癇癪を起こした子供のように
必死に抗う。

やがて、

もう、いいや...

俺、篠崎大和は死を受け入れよう。

そして、鎌が目前まで迫った時、

目に走った。耳に響いた。

「大和、ほらほら、こっちこっち」

そういって無邪気に笑う、長い黒髪を
ポニーテールにし、豊海高校の制服を着、
こちらに向かって手を差し伸べる女子。

恋人である穂泉の姿が。

映った彼女の全てが、大和の気力を満たす。

目に宿っていた絶望が消え、光が宿る。

  刹那の思考。直後、淡い緑黄色に包まれた
『脚』だったものが形を変え、こちらに
向かって翔んでくる。

迫り来る死の運命に真っ向から抗うべく、
俺は、それを握って

ギンッ

鎌に向けて全力で振るう。

鍔迫り合いになって、初めてみた。

俺が持っているのは、
所々赤く染まり、無数とも思える程の線が
入った、1本の直剣だった。


俺は下、敵は上。圧倒的に俺が不利だ...。

やっぱり運命は変わらない。そう諦めかけた。

その時、俺のもつ一振の直剣が、

ドクンッ   バリバリバリ

大きく脈動し、漆黒のスパークが剣から迸った。

そして、頭の中に声が響く。

(名がつきました。死剣・魂 
能力を解放します。)

言うやいなやスパークが激しく弾け、

周囲2mの地面を抉った。

唖然とする。明良のもつ聖剣でもこんなことは
できないだろう。

「貴様...その剣...
魔剣を超えた力、他に例をみない異形の剣。
絶剣の類か。」

少し驚嘆の混じる声で死神が呟く。

え?何その絶剣って?魔剣を超えた剣?

確か魔剣ってのは邪気を放つ、魔族のみが扱える
人族でいうところの聖剣のようなものだと
読んだことがある。

つまり、これは級で表すと伝説、下手したら神話級
の武器だと...

可能性がでてきた。俺が生き返れる可能性が。

死剣・魂に魔力を流す。

剣が、人の脈のように脈を打つ。

瞬間、薄紫のオーラが刀身を包む。

そして、剣に内包されているスキル魂撃の中の
遠距離攻撃技、『魂黎撃』を逆袈裟に斬りあげ、
放つ。

斬りあげた姿勢から一直線に斬りおろし、
再度 魂黎撃 を放つ。

何故こんなことができるのか自分でもわからない。

でも、やり方は知っている。それで、十分だ!

縦横無尽に絶剣と呼ばれた剣を振り回す。
その度に薄紫色の刃が飛び、
死神にあたっては消えてゆく。

何度繰り返しただろう。気づくと、体が
薄くなっていた。

それもかなり。こちらから背中側の地面が見える。

「ハハハ。馬鹿め。」

笑い、死神は言う。 

「その剣、どうやら対価は魂らしいな。」

「対価..だと?」

知らない、そんなものは剣を扱う時に
教わらなかったはずだ。

「仕方あるまい。死出の土産だ。教えてやろう。」

そう、高圧的に言い放ち、本当に『解説』を
始める。

その解説に俺は驚愕した。

絶剣と呼ばれる剣の類には、強大すぎる力を
完璧に扱うために、対価が必要になる。

それぞれの対価は各剣ごとに決まっている。

生命力を対価とするもの、魔力、体、様々な
対価がある。

そして、死神が言うには俺の持つ剣は
『魂』を対価とする絶剣らしい。

つまり、この霊魂だけで人という存在が
つくられているこの場所では、
魂を対価にするイコール自身の戦闘力を下げる
ということになる。

この事実に気づいたから、死神は俺を笑ったのだ。

必死に頭を回して打開策を練る。

焦りが正常な思考の邪魔をしてくる。

死神は不敵に笑っている。

数秒の思考。

頭の中に光が弾ける。

今はもうこれしか思いつかないと思い、
それに全力を注ぐ。

直後、笑みを湛えたまま鎌を振り下ろす黒い影が
目に飛び込んできた。

「さらばだ、人間」

死神と視線が交錯する。

すぐに鎌が迫る。迫って。迫って──


消える。

同時、死神の姿も霧散する。

そして、俺の中に溶け込んでくる..!?

すると、体がブレ、世界が崩れていく。





目が覚めた時、紅色に薄く発光する半球状に
はられた膜の中に俺はいた。

視線を動かすと、地面から紅い光を纏った
土塊が生えているのが見えた。

あれはなんだ?  触ろうとして、手を伸ばす。
...手を伸ば...す...?

あれ?

なんで俺の手は正常に・・・動いてるんだ?

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