置いてかないで捨てないで
亜美の章
「あ、じゃぁ、私が。奏音ちゃん。こんばんは。亜美だよ」
「こんばんは、えっと……」
「こっちだよ」
靴を脱いで端に置くと亜美についていく。
すると、脱衣所があり、
「はい、奏音ちゃん。脱げる?」
「は、はい」
汗でべたつきごわついた服を脱ぐと、服を脱いだ亜美に連れられ浴室に入る。
「座って。お湯をかけようね」
「あの、大丈夫です」
「駄目だよ。ちゃんと洗ってあげるから」
亜美が思っていた以上に気になったのは、奏音の汚れより華奢な体だった。
それに、亜美は口にしなかったが、あちこちに青あざと火傷痕が散っていた。
これはどう見てもタバコを押し当てたり、叩いた時にできる虐待の跡である。
しかし尋ねたのは、別のこと。
「奏音ちゃんは小学校一年生?」
「いいえ、よ、四年生です」
こんなに小さいのに、四年生なのか!
「じゃぁ、頭洗う時、目が痛くないように目を閉じれるね?」
「は、はい。大丈夫ですよ?あ、亜美さん……亜美お姉さん」
「ダメダメ。一回丁寧に洗っておかないとね。後で私が髪を切ってあげるから」
目を丸くする。
「切ってくれるんですか?」
「うん。いやぁ……ごめんね?お店でじっと見ちゃったのは、綺麗な髪なのに、整えてみたいなぁって。あたし、これでも美容師になろうと思って、学校に通ってるんだ」
「すごい!お姉さん」
顔と体を洗い、そして、亜美に一回頭を洗ってもらった後、お風呂に浸かる。
大きな浴槽は深いので、一段内側に座ることができる。
「うわぁ……うわぁ……テレビで見た、温泉の浴槽みたい」
ついキョロキョロしてしまったのを、かけ湯をして入ってきた亜美が笑う。
「でしょ?ここのお風呂、おじいちゃんが入るのが大好きで作ったんだって」
「すごい〜」
亜美は奏音の長い髪を確認する。
「ウンウン。綺麗になっているけどもう一回洗って、トリートメントしてからね」
その言葉通り、もう一度丁寧に洗ってから、トリートメントをすると、お風呂を出て髪をパッと拭いてから包み、体を拭くと、用意されていた子ども用のパジャマというより、女性もののSサイズのTシャツとショートパンツ。
それを着ると連れていかれ、そして居間の椅子に座ると亜美がドライヤーを当てながら、
「どんな髪型がいい?」
「えっと、短め……」
「もったいない!普通は10cmがオススメなの。膝裏まで伸ばしているなら、それより、腰まで切らせて頂戴。そして、あたしが三つ編みとか手伝うからね?」
「で、でも、ここに住めるか……お母さんに知られたら殴られる……給食費もくれない、水道ガス、電気も止められて……お水はスーパーの無料のお水、そして、お姉さんのいるコンビニで夜だけおにぎり……うっ、うぅぅっ……ウワァァン!もう嫌ぁぁ。おうち帰りたくないよう!」
わんわん泣きじゃくる奏音を抱きしめ、頭を撫でる。
「大丈夫。奥さんとかおじいちゃんがいるからね。泣かないで」
「どうしたの?」
扉が開き、美代子と紗絵が顔を覗かせる。
「お母さんに叩かれるって……」
「……やっぱり」
美代子はアパートの住人から時々、酔っ払い戻ってくる奏音の母の姿や、奏音に暴力を振るう様子、声を殺して泣く奏音、ヒステリックに喚く声が聞こえると聞いていた。
「奏音ちゃん。大丈夫だよ。うちの子になりなさい。大丈夫だからね」
美代子は抱きしめると、頭を撫でた。
置いておいた古着だが、娘の小さい頃の服を着せ、長く伸ばしていた髪を亜美にカットしてもらう。
そして、二つに分けて三つ編みにすると、ぐずぐずする奏音を抱き上げ、
「はいはい。お姉ちゃんと寝ようね」
「うえぇぇぇ……」
泣きじゃくりながらしがみつく少女と、同室で過ごす紗絵と亜美が一緒に眠るのだった。
「こんばんは、えっと……」
「こっちだよ」
靴を脱いで端に置くと亜美についていく。
すると、脱衣所があり、
「はい、奏音ちゃん。脱げる?」
「は、はい」
汗でべたつきごわついた服を脱ぐと、服を脱いだ亜美に連れられ浴室に入る。
「座って。お湯をかけようね」
「あの、大丈夫です」
「駄目だよ。ちゃんと洗ってあげるから」
亜美が思っていた以上に気になったのは、奏音の汚れより華奢な体だった。
それに、亜美は口にしなかったが、あちこちに青あざと火傷痕が散っていた。
これはどう見てもタバコを押し当てたり、叩いた時にできる虐待の跡である。
しかし尋ねたのは、別のこと。
「奏音ちゃんは小学校一年生?」
「いいえ、よ、四年生です」
こんなに小さいのに、四年生なのか!
「じゃぁ、頭洗う時、目が痛くないように目を閉じれるね?」
「は、はい。大丈夫ですよ?あ、亜美さん……亜美お姉さん」
「ダメダメ。一回丁寧に洗っておかないとね。後で私が髪を切ってあげるから」
目を丸くする。
「切ってくれるんですか?」
「うん。いやぁ……ごめんね?お店でじっと見ちゃったのは、綺麗な髪なのに、整えてみたいなぁって。あたし、これでも美容師になろうと思って、学校に通ってるんだ」
「すごい!お姉さん」
顔と体を洗い、そして、亜美に一回頭を洗ってもらった後、お風呂に浸かる。
大きな浴槽は深いので、一段内側に座ることができる。
「うわぁ……うわぁ……テレビで見た、温泉の浴槽みたい」
ついキョロキョロしてしまったのを、かけ湯をして入ってきた亜美が笑う。
「でしょ?ここのお風呂、おじいちゃんが入るのが大好きで作ったんだって」
「すごい〜」
亜美は奏音の長い髪を確認する。
「ウンウン。綺麗になっているけどもう一回洗って、トリートメントしてからね」
その言葉通り、もう一度丁寧に洗ってから、トリートメントをすると、お風呂を出て髪をパッと拭いてから包み、体を拭くと、用意されていた子ども用のパジャマというより、女性もののSサイズのTシャツとショートパンツ。
それを着ると連れていかれ、そして居間の椅子に座ると亜美がドライヤーを当てながら、
「どんな髪型がいい?」
「えっと、短め……」
「もったいない!普通は10cmがオススメなの。膝裏まで伸ばしているなら、それより、腰まで切らせて頂戴。そして、あたしが三つ編みとか手伝うからね?」
「で、でも、ここに住めるか……お母さんに知られたら殴られる……給食費もくれない、水道ガス、電気も止められて……お水はスーパーの無料のお水、そして、お姉さんのいるコンビニで夜だけおにぎり……うっ、うぅぅっ……ウワァァン!もう嫌ぁぁ。おうち帰りたくないよう!」
わんわん泣きじゃくる奏音を抱きしめ、頭を撫でる。
「大丈夫。奥さんとかおじいちゃんがいるからね。泣かないで」
「どうしたの?」
扉が開き、美代子と紗絵が顔を覗かせる。
「お母さんに叩かれるって……」
「……やっぱり」
美代子はアパートの住人から時々、酔っ払い戻ってくる奏音の母の姿や、奏音に暴力を振るう様子、声を殺して泣く奏音、ヒステリックに喚く声が聞こえると聞いていた。
「奏音ちゃん。大丈夫だよ。うちの子になりなさい。大丈夫だからね」
美代子は抱きしめると、頭を撫でた。
置いておいた古着だが、娘の小さい頃の服を着せ、長く伸ばしていた髪を亜美にカットしてもらう。
そして、二つに分けて三つ編みにすると、ぐずぐずする奏音を抱き上げ、
「はいはい。お姉ちゃんと寝ようね」
「うえぇぇぇ……」
泣きじゃくりながらしがみつく少女と、同室で過ごす紗絵と亜美が一緒に眠るのだった。
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