異世界バトスポッ!

冬野氷景

にじゅうきゅうたま!



「にゃー!おたまっ!来たにゃ!」
「ニャンちゃん!」


ぎゅううううっ…


「にゃー!苦しいにゃー!」


私とスイカちゃんは武器屋さんを出て街の外に出たよ!
初めて街の外に出たけど……そこには凄い自然が広がってた!
どこまでも続く草原、地球よりも一層青い空に白い雲!
遠景には山があって、森もあって……空に浮かぶ島もあって昼なのに輝く星もあって…まるでゲームか映画みたいな世界!


門にはニャンちゃんが私達を待っていてくれた。
私はニャンちゃんを思いきり抱きしめたよ!
冒険に出るにあたってスイカちゃんが冒険者さんたちに護衛を依頼してくれたんだって!


「アタシ達だけじゃ心許ないからね、ギルドに依頼してたのよ。まさかタマの友達が依頼を受けたとは知らなかったけど」
「おたまが『モンスターライドシュート』に出る事はミュリフォーリアに聞いてたからね、あんたの依頼には必ずおたまが関わってるって予測して優先的にウチに回してもらったんだよ」


ニャンちゃんは私と初めて会った時の言葉遣いに戻ってしまった。
どうしてだろう?


「あ…あなたが……アイノタマさん、ですか……は、初めまして…」
「?」


突然ニャンちゃんの後ろから声がした。
ニャンちゃんに隠れるようにしてもう一人…女の子がそこにいた。


「紹介するにゃ、ウチと同じ冒険者ギルドのリュウランにゃ。ドラゴニアっていう竜の亜人にゃよ。ウチのパーティーの主力にゃ」
「そ……そんな……全然……そんなこと…ありません…」


可愛い!
長いピンク色の髪から2本の角が生えてるよ!
もじもじして恥ずかしがってて…そこもまた可愛いよ!


「リュウラン、話した通りおたまは人間だけど亜人差別なんて全くしにゃいにゃ。だから怖がらなくて大丈夫にゃ」
「よ…よろしくお願い…いたします…」
「こちらこそよろしくだよ!リュウランちゃん!私の事はおたまでいいからね!」
「は……はい……おたま…さん」


抱きしめたいよ!
でも初対面からそんな事するのはダメだよね!


「いいかしら?依頼で見たと思うけど…アタシ達の目的はなるべく強いモンスターの捕獲。試合は十二日後。それまでに練習もしなきゃならないから…行き帰りを含めて六日間の行程で一番効率の良さそうな場所に案内兼護衛を頼むわ」
「わかってるよ、目的地はもう決めてある。強行軍になるけど文句は言わないでね。じゃあー…出発!」


そして私とスイカちゃんはニャンちゃんとリュウちゃんに付いて大草原へ歩き出したよ!


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<エルムンド高原>


サァァァァァァッ………


はぁ~…凄い爽やかな風…こんな自然に来たのは初めてだよ!
結構歩いたねぇ、もう街が遠くに見えるよ。


「にゃ~、おたま疲れてないかにゃ?」
「全然大丈夫だよ!…ねぇニャンちゃん。どうしてスイカちゃんには…普通の言葉遣いなの?」


私はスイカちゃんがちょっと先を歩いてる事を機に聞いてみたよ!


「………簡単な話にゃ、ウチが信頼してる相手には素を出してるだけにゃ」
「…そうなの?」
「……おたまはこの世界の事を知らないから当然だけど…この世界には当たり前のように差別文化があるにゃよ、特にウチらみたいな人間のなり損ない…『亜人』には辛い歴史が積み重なって…それはまだ世界中に蔓延っているにゃ。ボールアイは多種族国家として亜人も他の国よりは受け入れられてるけど……それでも他者に…気を許す事は簡単にできないにゃよ」


うーん…そうなんだ…地球でもあった事だけど…差別ってのはやっぱりどこでもあるんだよね……。
ニャンちゃんも…きっと辛い過去があったのかもしれない。
だから……私には何も言えない。
でも……スイカちゃんはきっと良い子だから…きっとニャンちゃんも仲良くなれるはずだよ。
仲良くしてくれたら嬉しいな、私もそのために頑張ろう!


「そんな事を気にする必要はないわ、だってアタシも広い意味で言えば『亜人』だもの」


わぁっ!スイカちゃんに思いきり聞かれてたよ!
スイカちゃん耳が大きいからよく聞こえるのかな!?
それよりも……スイカちゃんもそうだったの!?


「知ってるよ、エルフもそうなのは。けどエルフは遥か昔その地位を確立させて市民権を得た。ウチ達みたいなはぐれ者とは違う」
「そうかもしれないわね」
「それに…同じ亜人だろうが関係ない。ウチがただ単にアンタを信用してないだけだから」
「そう、どうでもいいわ。貴女達はただ仕事をすればいいの、アタシも戦闘以外に貴女達に用はないわよ」


バチバチバチッ…!


またスイカちゃんが喧嘩してるよ!
スイカちゃんは歯に衣着せなさすぎだよ!


「喧嘩しちゃダメだよ!仲良くして!」
「「………」」
「私のせいだよね…私が変な事聞いたから…ごめんね…けど…喧嘩はいやだよ…」


ぐすっ…


「……お、おたまのせいじゃにゃいにゃ!…悪かったにゃ…」
「…いいえ、アタシこそ。だからタマが泣く事はないんだから」
「………うん」
「み…みなさん…………っ!モンスターですっ!」


「「「!!」」」


先行して歩いていたリュウちゃんが急いで戻ってきたよ!
モンスター!?こんな草原にも出るの!?


ウォォォォォォォォォォォォォッ!


少し離れた場所から…影がこっちに近づいてくる!
遠吠えをあげながら!
あれは………ワンちゃんっ!?ううんっ!
狼さんだ!いっぱいいるよ!?


【ノラウルフ】(戦闘LV5~7)
・生息地を限定しない野良の狼。必ず3~4匹の群れで動き人間を襲うが一体一体の戦闘能力は高くはない。


「街から離れれば平地にもまだまだ魔物はいるにゃ!魔王時代から数はかなり減ったけどにゃ!気をつけるにゃ!野良モンスターはほとんど理性なんかないにゃよ!」


…魔王時代!?野良モンスター!?
わからない言葉ばっかりだよ!?


「リュウラン!いつも通りの戦法でいくにゃ!おたまとスイカは少し離れてるにゃ!」


ザザザザザッ!


そう言ってニャンちゃんとリュウちゃんは走って狼さんの群れへ向かっていく!
危ないよ二人共!


「タマ、言われた通り離れるわよ。大丈夫、二人は魔物とのを戦闘なんて慣れっこのはずよ、アタシ達がいたら邪魔になるわ」
「………っ!」


そうかもしれないっ…!
けどっ!


バッ!!


【引き付けの構え】
「にゃぁぁぁぁぁっ!」


ウォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!


ニャンちゃんがポーズを取ると狼さん達は一斉にニャンちゃんの方を向いた!
そういえば…ニャンちゃんは魔物を引き付ける役目って言ってた!


ザザザザザザザザザザッ!!
ザンッ!ザシュッ!!ガブッ!!
サッ!サッ!サッ!!


狼さん達がニャンちゃんに飛び付く!
けどニャンちゃんは難なくそれを避け続けてるよ!


「リュウラン!やるニャ!」
「い…いきます!」


スゥゥゥゥゥッ………


少し離れた場所にいたリュウちゃんがニャンちゃん達の方を向き、思い切り息を吸った。
そして………思い切り息を吐いた!


【ファイアブレス】


ボオオオォォォォォォォォォォッ!!


「わぁっ!?」


リュウちゃんの口からは息じゃなくて火が出てきたよ!
凄いリュウちゃん!リュウちゃんは…竜の亜人って言ってたから火が吐けるんだ!
あんな可愛いのにギャップが凄いよ!カッコ可愛い!


ウォォォォォォォ……………
プスプスプス……


狼さん達は火に包まれて黒こげになって倒れたよ!
可哀想だけど……私達のためにニャンちゃんとリュウちゃんがやってくれたんだから…私には何も言える資格はないよね…。
だから…せめてお祈りしてあげよう。
魔物さん達が安らかに眠れますように……


「中々やるじゃない、これなら道中は問題なさそうね。行きましょう、それで?アタシ達はこれから何処へ向かうの?」


戦闘を終えた二人にスイカちゃんが質問する。


「ウチらが向かうのはここらで一番魔物が集まる場所、『経験値の島』って呼ばれてるところ。数百種の魔物が共生してる、そこにならきっと相棒になるモンスターが見つかるよ」

















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