異世界バトスポッ!
にじゅうはちたまっ!
神殿で属性を調べ、その後ミュリお姉さんと色々なお買い物をした私はまたお城に泊まらせてもらった。
お金を払うか何かお手伝いをさせてほしいって言ったらメイレーさんに怒られた。
「家族に気を使って泊まらせてもらう娘がいるか」って…何もしなくていいからここに住みなさいって……嬉しいけど罪悪感が凄いよ…。
いつか恩返ししなくちゃね。
<翌日>
「ふーん…属性が無い…ねぇ。聞いた事ないわ」
そして私はお城に迎えに来てくれたスイカちゃんと一緒にお店で朝食をとっている。
大臣のおばあちゃんの話ではスイカちゃんは罰金だけで済んだみたい。
カチャカチャ……モグモグ…
「それで迎えに行った時から何か元気ないわけ?」
「うん……なにかおかしいのかな?私……属性が無い人なんて神官さんも見た事無いんだって…」
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「アイノタマさん…貴女には……属性がありません」
…………え?
属性が無い……?
どういう事だろう…?無い人もいるの?
「どういう事ですか神官長?そんな事今まで…」
ミーちゃんもわけがわからないといった表情で神官長さんに問う。
「………わかりませんね…私にとっても初めての事なので…」
その後何回も試してみたけど…私の属性を映す水晶は何度やっても透明なままだった。
ミュリお姉さんがやると『氷』が、ミーちゃんがやると『回復』を示すっていう暖かで優しい光が映し出されたのに。
「この透明が何かの属性を示しているって事はないんですか?」
「………聞いた事はありませんが…他国にそういった事例が存在しているかもしれません、調べてみましょう。申し訳ありませんが少々お時間を下さい。結果がわかり次第追ってご連絡差し上げます」
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「ふーん、神官長でもわからないんじゃしょうがないわね。結果を待つしかないんじゃない?」
「うん……」
「そもそも何で自分の属性を知らないのよ?普通産まれた時にみんな調べるはずだけど」
「だって私地球………じゃなくて!」
危なかった!
スイカちゃんには地球の事話してないんだった!
「?」
「えーと……私…産まれた時から孤児だったから…えーと…それからずっと属性を調べる機会がなくて…」
…って言えって昨日ミュリお姉さんとミーちゃんから言われたんだ!
他の神官さんや神官長さんにも同じ説明をしたんだ!
嘘をつくのは凄く嫌だけど……みんなに迷惑かけるわけにはいかないから!
「……そうだったの、悪かったわ。なら仕方ないわね」
うう……こちらこそ嘘ついてごめんなさい…
「じゃあ食べ終わったら行くわよ!今日一日はアタシが奢ってあげるわ!感謝しなさい!」
そう言ってスイカちゃんは大げさにマントみたいなのをバサッてした。
元気づけてくれてるのかな?嬉しいな。
「別にアンタのためじゃないのよ!これから同じチームで球技をするんだから当然でしょ!」
「うん!ありがとうスイカちゃん!」
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<城下町・冒険者エリア>
ワイワイ…
「それでまずはどこに行くの?」
「冒険の準備に決まってるでしょ、装備は昨日整えたわね?」
「うん、防具はミュリお姉さんに見繕ってもらったけど…武器が…」
「何?まだ武器は買ってないの?」
「うん…一応見てみたんだけど…どれも重くて持てなかったんだ…」
そう、昨日ミュリお姉さんと生活の衣服と装備を買いに行ったんだけど……その時に「何があるかわからないから自衛の手段はしておいた方がいい」ってミュリお姉さんと武器も見に行ったんだよ。
この世界では街中でも武器の携行が認められてるんだって!
だから私も何か持っておきなさいって言われたんだけど……
「まぁ……女の子が重い武器を扱う時は大抵魔法の力を借りてるからね。タマは属性もわからないから魔法を使えるわけもないし…。でも短刀くらいなら持てるでしょ?」
「うん…でも自分に刺さったら危ないからみんなが駄目だって…」
「……どんだけ過保護なのよ…そんな事言ってたらなにも……いや、一つあったわ。アンタに最適な武器が」
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<武器屋『ウラロジ』>
着いたのは華やかなお店が並ぶ裏側の道の小さなお店。
隠れ家的名店ってやつかな?
ガチャッ
カァンッ…カァンッ…カァンッ…
「おっさんいる?この子に武器が欲しいんだけど」
「……あん?久々に顔見たと思ったら…また妙なの連れてきやがったなスイカ…それにおめぇスポーツはどうした?何か球技やるんじゃなかったのか?」
「そうよ、そのための準備で武器が必要なの」
薄暗い店内には何か変わった武器?がいっぱいあった。
その奥では武器をカンカンしながら髭がモジャモジャの小さいおじさんがスイカちゃんと話している。
この人が店主さんかな?私より背が小さいのにおじさんだよ!可愛い!
「ここは通常ではあまり扱わない武器を揃えてるのよ、このドワーフのおっさんがひねくれ者でね」
「やかましい、それで何の武器がいるんだ?」
「『あれ』まだあるでしょ?あんなもん武器にするやついないもんね。ほら、気分で攻撃が変わる…『ボール』よ」
ボール!?!?
「あぁ……あれか…まぁ誰も手にとりゃしねえが…あんなもんが必要なのか?」
「ええ、売って頂戴」
ガサガサゴソゴソ…
店主のおじさんは奥に行って何かガサガサしている。
しばらくしてから手に持っていた物は…紛れもない…ボール。
一点の光さえ通さない…真っ黒なボール。
全てを受け入れる深淵の闇…全てを呑み込んでしまうブラックホールそのもの。
はぁぁぁぁぁぁぁぁっ……なんて…っ…なんてボールなの!
「こいつぁとある遺跡から冒険者が持ち帰ったもんでな…原理はよくわからねぇがこのボールは使用者に呪いをかける反面凄まじい力を発揮する…諸刃の剣…いや、ボールだ」
「持ち帰った冒険者いわく…その呪いは毎回ランダム、そしてその呪いによって攻撃も変わるみたい。扱いにくすぎるし…しかもボールなんて武器にするやついないからね。そんなものをいつまでも抱えてたおっさんもおっさんだけどね」
何言ってるの!
こんなに底が深いボール他にないよ!
はぁぁぁぁぁぁぁぁっ…ボールを武器にするのはちょっと抵抗があったけど…武器として産まれたのなら話は別。
私はブラックボール君を手に取った。
君は武器として生きてるんだね?君が一番輝くのは戦いの中なんだね?
だったら…私の武器になってくれないかな?
君の呪いってやつも全部受け止めるから。
「これっ…欲しい!くださいっ!」
「……今の話に怖じ気づかねぇたぁ…変わった嬢ちゃんだな。毎度…料金はこのエルフにつけとくから持ってけ」
「言われなくてもアタシが払うつもりだったわよ」
異世界に来てから二つ目の私のボール!
灰ボールさんは球技の練習用にしてブラックボールさんは武器……
「あれ?そういえばスイカちゃん。武器で一体何するの?」
「アンタ…何も話聞いてなかったの?冒険って言ったでしょ、『モンスターライドシュート』で一番重要と言ってもいい…『相棒』のモンスターを捕まえに行くのよ。魔物を捕まえるにはまず魔物に力を認めさせなきゃいけない、アンタ一人で魔物と戦うのよ」
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