異世界バトスポッ!

冬野氷景

にじゅうななたまっ!



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☆『モンスターライドシュート』


【概要】
バトル・コロッセウムという円形球技場にて行われるサバイバル球技。
プレー人数は一チーム1名~3名まで(3名までなら人数は自由)
プレーヤーは魔物に乗り、文字通り人馬一体にて試合を行う。
一つのボールを奪い合い、多く点を得たチームの勝利。
試合時間は無制限。
【得点方法】
互いの陣地にはゴールが設置されており、そこにボールを入れるとプラス1点。
相手の魔物を倒すとプラス2点。
プレーヤーを倒すとプラス3点。
最後に立っていたプレーヤー(魔物)チームにプラス5点。
倒すの定義はプレーヤーが意識を失う事(再起不能)、またはリタイアする事、とする。
相手チームのプレーヤーと魔物が全て倒れた時点で試合終了。
その時点での得点差にて勝敗を決定する。
【ルール】
・プレーヤーは魔物から降りる事はできない。
・基本、攻撃はボールによるもののみ。
・相手プレーヤー、魔物への直接攻撃は禁止とする。
・ゴールを決める事ができるのは騎乗したプレーヤーのみ。魔物によるアシストは可能だが魔物がボールをゴールに決めても得点にはならない。
・各チームではそれぞれの判断により試合中でも即時棄権リタイアが出来る、一人での棄権、退場も可能である。
・またこの球技には禁止魔法、属性がある。
【禁止魔法】
・回復、回復系に準ずるもの。
【禁止属性】
『回復』


尚、死亡者が出た場合でも全員が倒れるか棄権するまで試合は継続される。
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「………何よそれ……回復が禁止……それに死亡者が出ても試合を続けるなんて…」
「当然よ、アイスクラッシュヘヴンと違って最近までもマイナー球技だったんだから。これでも公式化されるにあたって少し緩く規制されたのよ?ただ…この球技を創ったやつが権力者で…『スポーツ世界連盟』の競技制定委員会の人間を金で抱き込んでそれ以上のルール改定をさせなかった…だから荒い部分はそのまま残ってる。けど安心して、救済措置として危険を感じればすぐに個人でのリタイアもできるようにルールの追加もされてる、ヤバかったらその場でリタイアしてもいいわ」


あわわ…また危険なスポーツだったよ。
どうして私は学習しないんだろう…ルールを聞く前に球技ってだけで飛びついちゃうクセを治さなきゃ…。


「おたま、今からでも断りなさい。ルールを聞く限りおたまにできる事はないわ、まるっきりただのバトルじゃない」


確かにそうかも…私、魔物どころか乗馬だってできないし…。
魔法だって使えないんだから…できる事といったら1点にしかならないボールをゴールにいれる事くらいだよ…?


「そこに勝機があるのよ、詳しくは今は話さないけど…単なるバトル勝負にしたいんなら誘わないわ。アタシを信じて力を貸して頂戴」
「ダメよおたま、もっと安全な球技にしなさい」


うーん…でも一度出るって言っちゃったし…今から撤回するのは失礼だよね。
私が力になれるかわからないけど、私…やるよ。


「…………もぅ…球技の事になると聞かないんだから…………仕方ないわ。それがおたまの意志なら……」
「ありがとう、タマ」
「ただし…スイカ…だっけ?おたまに何かあったらあたしは貴女を赦さないわよ?」
「心配は無用よ、それに……いえ、何でもないわ。明日から早速準備するわよ、今日は約束があるんでしょ?明日迎えにいくわね」


ガチャ……バタン。


そう言っておばあちゃんと兵士さんに連れられてスイカちゃんは部屋から出ていったよ。


「試合当日はあたしも観覧しに行くわ、それにしても……どうしておたまはそこまで球技に出ようとするの?アイスクラッシュヘヴンの時もそうだけど……嫌なら断るのも勇気よ?」
「うーん……確かに…危険だし怪我する前提の球技は怖いし断ろうともしたんだけど……」
「……あたし達やスイカのため…じゃないわよね?」
「……うん、ごめんね。私、試合外の事情を踏まえて協力するのは好きじゃないんだ。事情なんて選手みんなが抱えてるものだし…フィールドに立ったらそんな事関係ないしね。だから……私はただ…自分とボールのために出てるんだよ。ボールはね、試合で一番輝くんだ。それを選手達の事情で試合が無くなっちゃったりしたら可哀想だから」
「…ごめん、それはよくわからないわ」


えー…


「じゃあ…ボールを抜きにして、おたまは何故…何を目標にしてスポーツをやってるの?」
「地球にはね、四年に一度…全世界の選手達が戦う場所があるの。私は…それに出たいんだ。球技…ううん、全てのスポーツにおいての到達点。そのフィールドでボールと語り合いたいんだ、そして…一番高い景色にボールと一緒に立ちたい。頂点に立ってボールと共に喜び合いたい……それが私の小さい頃からの夢!」


オリンピックでの……優勝!
それができたなら…どれだけ気持ちいいんだろう!
だって…一番高い場所でボールと話し合えて一緒に喜べるんだよ!?
想像しただけで……う、うふふふ…死んじゃうよ私!!


「……ふふ、そう。地球にも……あるのね」
「え?」
「ううん、何でもないわ。大丈夫よ、おたまならきっとやれるから。じゃあ城下に行きましょう」


ミュリお姉さん…どうしたんだろ?
何か一瞬…微笑みながら…どこか悲しそうな顔をしてたけど…


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<ボールアイ王国・城下町>


ワイワイ、ガヤガヤ…


「まずはおたまの『属性』を調べないとね、これから先…絶対に必要になってくるわ」
「そうだね!」


アイスクラッシュヘヴンみたいに『氷』主体の球技とか他にありそうだもんね!
属性がわかればどの球技に出ても色々事前に対策もうてそうだし!


「でもどうやって調べるの?」
「神殿で神官さんに言えば調べてもらえるわ、ミィシャンの職場よ」


そうなんだ!
神官さんって何のお仕事かよくわからないけど…ミーちゃんみたいな人達がいっぱいいるなら安心だよね!


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<バル神殿>


わぁ~っ!なんか凄く歴史がありそうなそうごんな建物だよ!
上手く言い表せないけど…装飾された柱とか…神々しい絵画とかあって大きくて…凄い歴史が詰まってるって感じだよ!


「あっ、ミュリフォーリアさん、おたまさん。ようこそバル神殿へ」
「悪いわね、ミィシャン。準備はできているかしら?」
「はい、整っています。奥の祭壇室へご案内しますのでついてきてください」


ミーちゃんに連れられて私達は神殿の奥の部屋に通されたよ!
神聖な雰囲気だなぁ…でも属性を調べるってどうやってやるんだろ?
注射とかだったら怖いなぁ…


<祭壇の間>


「では…神官長。宜しくお願い致します」
「ええ、わかりました」


祭壇の間に案内された後、神官長と呼ばれる優しそうな年配の女の人に挨拶した!
その後色々質問されたり手続きして…更に奥の扉に通されたよ!
そこには…彫刻の壁に囲まれた少し狭い部屋があって…中央にはポツンと教会にあるような祭壇が置いてあった。
そして………その真上には……。


宙に浮く大きな透明なボールがあった!
何これ何これ欲しいよ!


「おたま、念のため言っておくけどあれはボールじゃなくて水晶玉だからね?欲しいとか言い出さないでね」


いきなりミュリお姉さんに釘を刺されたよ?
まだ何も言ってないのに!


「では、アイノタマさん。こちらへ…」


神官長が私を祭壇の前へと促す。
水晶玉綺麗だなぁ…スポーツショップの像の周りにあった球もそうだけど魔法とかで浮かせてるのかな?凄い技術!
私は祭壇前に立ち、水晶玉を見つめた。


パアァァァァァァッ…


すると水晶玉は光を放ち、透明の奥に見える神殿の景色を歪ませた。
何か中がぐにゃぐにゃ動いてるよー。


「これは『真理の水晶』と呼ばれ…この水晶の中にその人の属性が現れるのです。火であれば火が、水であれば水が水晶の中に現れます」


うわぁ、凄いなぁ!
なんか異世界に来てから凄いしか言ってない気がする!
ドキドキしてきたよー…私の属性って一体何なんだろ!


パアッ!


水晶の透明な動きが止まり、更にまばゆい光を放って…結果を水晶に映し出す!
私の属性はっ……!!


「アイノタマさん、貴女の属性は……………………………え?」
「?」


神官長さんとミーちゃんとミュリお姉さんがみんな水晶を見て…みんな同じ顔をする。
何か驚いた表情………どうしたんだろ?


私も水晶を見る、そこには……
何も映っていなかった。
さっき見た……奥の景色を映し出した透明な水晶…そのままだった。


「……どういう事…?」
「これは……一体……」




「……アイノタマ…さん、貴女には…属性が…ありません」













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