異世界バトスポッ!

冬野氷景

にじゅうごたまっ!

………


…………


………………ペチペチッ。


う~ん……眠いよぉ…。
まだ寝てたいのに……誰かがほっぺたを叩いてるよぉ…。


……………ペチペチッ。


んん……そういえば……昨日は楽しかったなぁ。
新たな私の球、灰ボールさんとお友達になれたし……………。
そうだ!
その後お城にいたら灰ボールさんと出会わせてくれたツインテールの子が灰ボールさんを取り返しにきたんだ!


ガバッ!
「灰ボールさんっ!!」
「きゃああっ!?」


ゴツンッ!!
「痛いっ!?」
「痛っ!?」


起き上がったら何かにおでこをぶつけたよ!痛いよ!
見てみると私と同じようにおでこを押さえたツインテールの子がいたよ!


「ちょっと!何すんのよ!誰よハイボールって!」
「灰色のボールさんだよ!どこにやったの!?」
「……?アンタが抱えてたボールの事?そこにあるわよ」


ツインテールちゃんが指さした私が寝ていた枕の上に灰ボールさんがあったよ!
私は灰ボールさんを抱きしめた!


「それ……ただのゴムボールよ?何でそんなに大事そうにしてるのよ?」
「どんなボールでもボールはボールだよ。全部大事だよ」
「……ちょっと何言ってるかわからないわ…」


私は周りを見回す。
薄暗い……ここどこだろう?
天井が近いし三角になってる……屋根裏かな?


「手荒にして悪かったわね、自己紹介するわ。アタシは『スイカ』。この町に住んでるエルフよ」


スイカ?名前かなぁ?美味しそうな名前だね!
西瓜食べたくなっちゃう!
でもエルフって何だろう?異世界てんい!の漫画にそんな言葉が出てきたような……………うーん、覚えてないよ。


「えっと…私は…」
「知ってるわ、アイノタマでしょ?アイスクラッシュヘヴンの試合…アタシも見てたから」
「そっかぁ、よろしくね!スイカちゃん!」
「…………アンタ何も思わないの?アタシはアンタを誘拐したのよ?」
「えっ?…………誰が?」
「アタシがアンタをよ!どう見てもそうでしょ!?」


誘拐……?そっかぁ、私誘拐されちゃったんだ!
でも…何かそんな感じしないなぁ…スイカちゃんはどちらかというと誘拐されるがわだよ!綺麗だし可愛いし!


「可愛いっ…!?変な事言わないで!」
「だって可愛いもん。全然変な事じゃないよ!」
「……調子の狂うヤツね…それよりそんな話をしたいんじゃないのよ…アタシはアンタに話があって誘拐したの」


そうなんだ、普通にお城で話してくれればいいのになぁ。
聞かれたくない事なのかな?
………まさかっ!やっぱり灰ボールさんを返してって話!?


「ダメだよ!灰ボールさんはもう友達だもん!お金返さなくていいから取らないで!」
「………何言ってるの?ボールが欲しいならあげるわよ…そこらで普通に売ってるボールだし。それにお金も返すわ」


………え?何で?
ボールどころかお金も?
いやいや!ボールは欲しいけどお金はいらないよ?
だって灰ボールさんと楽しい時間を過ごさせてくれたんだもん!


「いいの、元々お金のためにやったんじゃないから。はい、22万ギョクよ、受け取りなさい」
「そんなに払ってないよ!?参加料は1万だったよ!?」
「これは他の参加者から貰ったやつよ!いいから受け取って!ほら!友好の証なんだから!」
「受け取れるわけないよ!私はボールだけ欲しいんだよ!」


ギギギギ……


凄い力でお金を押し付けてくるよ!?


ギギギギ…


私も抵抗してお金を押さえつけて突き返すよ!
何がしたいんだろうスイカちゃんは!誘拐した私に大金を押し付けてくるよ!?
普通誘拐犯って身代金とかを要求するんじゃないの!?
何で逆に私にお金を払おうとするの!?


「はぁ…はぁ…強情ね……じゃあこう考えましょ…このお金は割ってしまったお城の窓の修理費よ……アタシの代わりに払っておいて…それなら受け取れるでしょ?」
「……そっか!」


それなら納得だね!律儀だなぁスイカちゃんは!
そんな事考える誘拐犯なんていないよ!
……あれ?誘拐犯ってなんなんだっけ?


「はぁ…はぁ…は、話はこんな事じゃないのよ…アンタと話してるとペースを狂わされるわ…もう単刀直入に言うわね…」


バサッ


そう言ってスイカちゃんは着ていた黒いローブを大げさに翻して脱ぎ捨てる。
その下には可愛い緑色の服を着ていた!
異世界ファンタジーの服の事はよくわからないけど…なんか動きやすそうでいて…鎧みたいに丈夫そうでいて…可愛い!
そしてスイカちゃんは単刀直入に言うと言ったのに…間を置いてドヤ顔しながら言った。


「アイノタマ、アンタにはアタシの出場する球技に出させてあげるわ!光栄に思いなさい!」
「えっ!?球技!?うん!やるよ!」
「そう言うと思ったわ!でもそうはいかない、こうなったらアタシの魔法で無理にでも………ってやるの!?」
「うん!そう言ったよ!どんな球技!?」
「…………ちょっと待って?アンタ…アイスクラッシュヘヴンの専属選手なんじゃないの?」
「えっ?ううん、登録はしてないよ。私は自由枠なんだって!他の球技もやってみたいから!」
「…………ちょっと待って?じゃあわざわざアンタの居場所を一生懸命探して…発信器になるボールを渡して…住居を突き止めて…計画を立てて王城に侵入して誘拐までしたアタシって何なの?」
「え…そんな事言われても…」
「一回球技の専属選手になっちゃったら半年間は他球技の公式試合には出れなくなるから…誘拐して魔法で無理矢理操って申請の取り消しをさせようと計画してたのに……最初から素直に話せばよかったって事!?お尋ね者になるような真似なんかしないで!?」


あわわわ…よくわからないけど何か怒ってるよ!?
落ち着いて!スイカちゃん!


そう、話を聞いてみると…スイカちゃんは私がアイスクラッシュヘヴンの新入り選手だと思ったらしく…誘拐して強引にスイカちゃんの出場球技の選手にしようとしてたんだって!
どうやらこの世界では一つのスポーツで専属選手登録をすると他球技の公式試合には出ちゃいけないみたい!
選手登録は本人かそのチームの監督かキャプテンじゃないと勝手に取り消したり変えたりできないんだって!
だから魔法で私を操って無理矢理スイカちゃんの球技の選手にしようとしてたみたい!
最初から話してくれればよかったのに!


「………………はぁ……何でアタシって…いつもこうなんだろ…好きな事に関すると突っ走っちゃって…空回りばっかり…」


急に落ち込んじゃったよ!?
どうしよう……そうだ!ミュリお姉さんがしてくれたみたいにすれば落ち着くかな?


ギュッ…


「むぐっ!?」


私はミュリお姉さんの真似をしてスイカちゃんを抱き締めたよ!
昨日こうされて凄く落ち着いたもんね!私がミュリお姉さんみたいにできるかはわからないけど…


「よしよし…大丈夫だよスイカちゃん…」
「むむむぐっ!ぐぶじ!むぐぐぐ!!」


バッ!!


スイカちゃんはすぐに私から離れちゃった。
やっぱり私じゃミュリお姉さんみたいな安心感は出せないよね…


「何してるのよ殺す気!?それとも…胸のないアタシへの当てつけ!?悪かったわね!小さくて!」
「ごめんなさい……」
「………ま、まぁ…慰めようと……してくれた…のはわかったから…あ、ありがと…だ、だからそんな落ち込んだ顔しないでよ!」


スイカちゃんは顔を真っ赤にして私にお礼を言った。
何か……スイカちゃんって…灰ボールさんに似てるかも。


「はぁ……とにかく…出場してもらえるって事でいいのね?」
「うん!球のあるスポーツなら!私が球を愛します!」
「……ごめん、何言ってるかよくわからないけど…それなら早速準備しなきゃね!さぁ!冒険に出かけるわよ!」


……………………?
冒険?何で?




「アタシの専属スポーツは『モンスターライドシュート』。魔物と選手……人馬一体となって行うサバイバルバトル球技よ。まずはアンタのパートナーになる魔物を探しに行くのよ」




~第二章『モンスターライドシュート』~



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