異世界バトスポッ!

冬野氷景

にじゅういちたまっ!



<愛野たま、異世界生活二日目>


チュンチュン……


「うーん……zzz…にゃ……さかなっ!…zzzz…」
「Zzzz……うふふ、ボール可愛いねぇ……zzzz……」


ぴとっ……ヒヤッ。


「「ぅわぁぁぁぁっ(ニャアアッ)!?冷たいっ!?」」
「おはよう、二人共寝すぎよ。氷…服にいれちゃうわよ?」


安眠してたらミュリお姉さんに触られた!
手が氷のように冷たいよ!死んでる人みたいだよ!?
……そっか、そういえばミュリお姉さんは氷属性だったよ……。
そうだ、私は異世界で初めての朝を迎えたんだ……。


試合の疲れもあったせいか枕が変わってもぐっすり眠れた!
周りに信頼できるみんながいてくれたおかげだよね。
でも部屋にはミュリお姉さんとまだ寝てるニャンちゃんしかいなかった。


「フウジンとミィシャンはとっくに仕事に向かったわ、もう直に昼になってしまうわよ」


あわわ…寝すぎたよ…ごめんなさい…。
私は急いで準備をしようと飛び起きた!
そういえば服ってどうしたらいいんだろう…昨日お風呂に入るとき侍女さんにジャージを預けて……代わりにふりふりのパジャマが用意してあったけど…ジャージどこ行っちゃったんだろ?


バタバタバタッ……!


「?」


私が着替えようとしていると部屋の外から慌ただしい音がした。


バタンッ!
「おはよー起きたのねっ!おたまちゃーんっ!」
「きゃあっ!?」「ニャアッ!?」
「あっ、おはようメイレーさん」


部屋に女王様(※王妃)メイレーさんが飛び込んできた!
半寝だったニャンちゃんとミュリお姉さんがびっくりしてたよ!


「もう、私の事はママと呼んでってば。長子との事は気にしないでいーから」
「でも…恥ずかしいよ…」
「可愛ぃぃぃっ!恥ずかしがってる姿も可愛ぃぃぃわぁっ!」


「お……王妃……様……?」
「あ、ミュリちゃんとニャンコちゃんもおはよう。よく眠れたかしら?」
「あ……はい…」


ミュリお姉さんとニャンちゃんは何か見てはいけないものを見たような微妙な雰囲気を醸し出してたよ!
そういえば昨日ミュリお姉さんはメイレーさんの事を「美しく淑やかで謹み深く女性の憧れよ」って言ってたから緊張してるのかな?


「もう一家に一つおたまちゃんが欲しいわっ!あなたの御家族はなんて幸せなのかしらっ!羨ましいっ!」


地球でもみんなにいっぱい言われた事を異世界でも言われたよ!
「一家に一台おたまが欲しい」って!私は家電製品じゃないよ!
けど…なんか朝から凄く元気だよメイレーさん!
昨日の食事会では優しかったけどもう少し静かだったのに…。
やっぱり社交の場とかだと王族の人達は優雅に振る舞わなきゃいけないからかな?
苦労が絶えないんだろうなぁ…よくしてもらってるし…お礼にママって呼んであげたいけど…恥ずかしい!


「あ、でも…そうよね…あなたの御両親に悪いものね…あなたには本当のママが側にいるものね…」


しゅん…


ハイテンションから一転して突然凄く落ち込んだよ!?


「ううん、ママは(この世界には)いないから」
「!?……いない!?」
「うん、凄く遠いところ(地球)だから」
「……………………っ!」(遠いところ……っ!?まさか……天国!?)


ぷるぷるぷるぷるっ……
ガバッ!!
「うぷっ!?」


突然メイレーさんに強く抱き締められたよ!


「決めたわ!おたまちゃんはここに住みなさいな!養子として迎えるわ!ぅうん迎えさせて!そうと決まれば色々とやる事があるわ!公務なんてやってる場合じゃない!婆や!!今すぐ準備にとりかかりなさいな!」


バタバタバタバタバタバタ……


「「「…………」」」
嵐のようにメイレーさんは去っていったよ!


「…どうするにゃ?おたま……何か話が大事になってるにゃよ…?」
「え?そうなの?」
「王家に迎えられるって話にゃよ?下手をしたら…この世界で自由に動けにゃくなる可能性があるにゃ」
「うーん……よくわからないよ…」


「この国の王家の家族になるって話よ、貴女が王族の一員になるってこと。王妃様がどういうつもりで言ったかはわからないけど…王族ともなれば色々なしがらみが出てくるわ。…もしかしたら…スポーツもできなくなるかもよ?」
「それは困るよっ!!!」


メイレーさんを止めなきゃ!!


ガチャ……


私が出ていこうとしたら扉がほんの少し開いたよ!
隙間から顔を覗かせたのは…大臣のおばあちゃんだった。


「大丈夫よぉ…おたまちゃん。奥様には言って聞かせるからねぇ、愛おしいものを見るといつもああなってしまうのよねぇ…おたまちゃん達は何も気にせず買い物に行ってらっしゃいな…あ、服はどれでも好きなの着ていっていいからねぇ」


バタン……


「「…………」」


何か解決したっぽいよ!


「…苦労してるのニャ…大臣さん…」


そして私達は着替えて城下町へと向かったよ!


--------------


<ボールアイ王国城下町【冒険者エリア】>


ワイワイガヤガヤ…


「わぁぁ……っ…!」


城下の商店通りにはまるでお祭りみたいに人がいっぱいだった。
凄い!試合の観客席よりも色々な種族の人がいるよ!
凄いよ!それに露店がずらっと並んでる!
露店には色々な見た事もない食べ物が売られてたり見た事もない宝石が売られてたり見た事もない物がいっぱいあった!


「とりあえず…変装はしてみたけど…大丈夫かしら?」


私とはフードがついた白いパーカーみたいな服を着てフードで顔を隠しながら歩いてるよ!
ミュリお姉さんの魔法で姿を隠しながら行ってもよかったんだけど…それじゃあ私が楽しめないだろうからってミュリお姉さんとニャンちゃんが私の服を選んでくれたんだよ!


「ニャ、これなら間近から顔を覗かれない限り大丈夫だと思うにゃ」
「おたま、はぐれちゃダメよ?手を繋ぎましょう」


なんか子供扱いされてる気がするよ!子供だけど…。


「今日は人波が一段と凄いにゃ~」
「恐らく…昨日の試合のせいなんじゃないかしら…ほら『氷球勝利セール』って…」


本当だ!
街のみんながお祝いしてくれてるんだ!いい街だなぁ。


<キャー!ミュリフォーリアさぁんっ!試合カッコよかったです!>
<おっ!ニャンコじゃねぇか!頑張ったなぁ!ほらっ、回復薬サービスしてやるから持ってけ!>


「ありがとう、次も必ず勝つからね」
「にゃはは~どうもにゃ」


わぁっ!
ミュリお姉さんもニャンちゃんもモテモテだぁ。


「ゆっくりできそうもないわね…とりあえずここはいいかしら…ほとんどが冒険者エリアだし…図書館とおたまの好きそうな場所は先だしね…ニャンコは見ていく?」
「にゃ、今日はおたまの買い物にゃから大丈夫にゃ。冒険用の装備は今度でいいにゃ」


気をつかわせちゃってごめんね…。
でも私の好きそうな場所って何だろう?


「ふふ、行けばわかるわよ」


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〈ボールアイ王国城下町【スポーツショップ総合施設広場】〉


「うわぁぁぁぁぁぁ……っ!」


私はさらに驚いた!
街の中なのに緑と子供達がいっぱいの草原広場の真ん中には他の建物よりひときわ大きくてひときわ目を引く建物があった!
ファンタジーのお話に出てくる樹のお家!
お城と同じくらい…ううん、もっと大きいかもしれない大樹に窓とかがついてて中に人がいっぱいいるよ!
100メートルくらいあるかな!?一番上には葉っぱがいっぱい生えてて…まるで街全体を包みこんで守ってるようだよ!


「ここが…【ボウル・リング】様が幼い頃…球技を始めた場所…『始まりの樹』…ボウル様が樹に空洞ができるほどにボール遊びをしても尚…未だ成長を続ける伝説の樹よ。そしてボウル様は様々な球技を生み出した……アイスクラッシュヘヴンも彼女の考案した球技…あたし達の生きてる証が誕生した場所……周りは子供達のボール遊びの広場になっているのよ。そしてボウル様の功績を忘れないために樹の中は彼女が生み出した球技達の専門店があるわ。全て…【ボウル・リング】様が遺してくれたもの……あたし達はその感謝をいつまでも忘れてはいけないの……」
「にゃ~……感傷に浸ってるところ悪いけど…ミュリフォーリア…おたまもう先に行っちゃったにゃ…」


タッタッタッタッ……


「………」


ここが異世界の……スポーツショップ!
一体…他にどんな球技があって…どんな球があるんだろう!

















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