異世界バトスポッ!

冬野氷景

じゅうごたまっ!



ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!


『さぁ!タイムを終え、いよいよ再開だぁ!ボールアイ王国vsアースリンドウ連邦国の最後の3分間!フィールドにはそれぞれの選手がそれぞれの想いを抱え決意の表情を見せ配置につきます!ボールを持つのは続けてニャンコ選手!アイノタマ選手とカタリール選手はタイム前と同様の配置につくっ!そして…っ?』


カツ…カツ…カツ…


『ボールアイ……全員が配置についた?しかもまた氷像前ががら空き
……?』
『何と!ボールアイ王国が今度は一転して全員が前線での超攻撃体勢ーっ!?未だ全快ではないフウジン選手とミュリフォーリア選手どころか…回復のミィシャン選手までもが前線に立った!まさに背水の陣!ボールを奪われれば終わるどころかチーム全員が怪我を負う危険な賭け!彼女達は…まだ諦めていなかったー!』


「……一体どういうつもり?全員で死にに来たの…?ミュリフォーリア」
「…ええ、その通りよマリア。けど…ただじゃ死なないわ、貴女達ごと巻き添えにして…あたし達は…勝ちに来た」


「みゃははっ!勝ち目なんかないってのにご苦労様!けど前に出てきたのは誉めてあげる……風使い!亜人!あんたらは許してあげないから!必ずこの試合でぶっ殺す!」
「にゃははっ!やってみるといいにゃ!ウチに攻撃が当てられるならにゃ!」
「あぁ、また炎の餌食としてやろう」


「ふっ…正しくない。回復の君が前線に出てきたところでできる事などあるはずもない」
「……言われなくてもわかってます、だけど……それは正しくありません。わたしにだって…できる事は……あるっ!」


シュウゥゥゥッ……
「さぁ、再開するわよ。何が起こってもこれが最後……悔いのないように試合なさい」
ピーーッ!!


グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!
「ぅあっ!!」
審判さんの合図と共に試合は再開し、私には再び重力がかけられた。


シュバババババババババババババッ!
そして、ボールを抱き抱え飛び回るニャンちゃんと共に両陣営も動き出す!


【絶氷血雨の舞】【ネオ・サイクロントルネード】
【暴風旋風斬】【アイスメイクシールド】


ビュウウゥゥゥゥゥゥガキィンッガキィンッ!!


ニャンちゃんを守るために風と氷同士がぶつかり合う!
今このフィールドは渦巻く竜巻と吹き荒れる旋風、襲いくるつららと守る強固な氷でまるで世界の終焉を切り取ったような風景をつくりだしていた。


ダッ!!
それと同時にミーちゃんが相手の氷像に向かって走り出した!
勿論、これも作戦の一部。


「ふぅ、……正しくない。君に攻撃能力はない、単なる囮だろう?私が…それに付き合うと思ったかい?」
「そうよ、ブラフはもう効かない。アタッカーが復活した以上攻撃するとしたら二人のどちらか。二人に注視していればいいわ……貴女達に付き合うのは癪ね。そろそろこちらも手を打たせてもらうわ」


相手キャプテンさんはそう言うと飛び回るニャンちゃんに対し舞い踊る。
【絶氷血雨の舞】
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッ!


「!」
ニャンちゃんの周囲をつららが取り囲んだ!


「にゃはっ!無駄だって!それでも避けるくらいわけにゃい」
「ええ、そうでしょうね。けど………一瞬迷って止まったわね?」


【空間華劇】
「!!?」
ガクッ!!
ドサッ!!


「ニャンちゃんっ!!」「ニャンコ!!」


つららからの逃げ道を探すため、一瞬止まったニャンちゃんを空間能力者の能力が襲う!
ニャンちゃんはボールを抱き抱えたままの姿勢で空中に静止し、そのまま氷上へと落下した。


「にゃ、にゃるほど…これがおたまの言ってた『空気の箱』だにゃ……確かに…全然動け……にゃいにゃ…」


私……頭よくないから原理とかはわからないけど……空気を圧縮すると中に閉じ込められた温度は上がるとか…授業で習ったような気がするよ。
あれは周囲の空気を圧縮させてその中に閉じ込める魔法。
ひと一人分閉じ込めたり足だけを閉じ込めたりできるんだ。
だから閉じ込められた時…何か温かかったんだよ。


「動き回る君が一番厄介だ、私の能力はもう君だけを囚えて離さない」
「くそっ!ニャンコッ!」
「行ってっ!フウジン」


フウちゃんとミュリお姉さんがニャンちゃんを助けようと動き出す。


ザザッ!
「おーっと!そうはいかないよーだっ!」
「ええ、貴女達の相手は我等……アルム、ボールを奪って守りなさい」


しかし、相手の小さな女の子とキャプテンさんに阻まれた。


カツ……カツ……
宝塚の空間能力者さんがニャンちゃんに一歩一歩近づいていく。
制限時間は残り2分を切った、ここで相手にボールを奪われたらもうおしまいっ!!
私はうずくまった姿勢を何とか少しでも持ち上げようと腕に力をいれた!


「ぐぅっ……ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううっ!」


ググググググググッ………


「この上体を腕だけで起こすなんて…凄いですね、火事場の馬鹿力というやつでしょうか…しかし無理しない事をオススメしますよ。貴女にはとてつもない重力がかかっています、下手をすると腕が折れますよ」


ドサァッ!!
「うあっ!!」


やっぱり……これじゃあ…上体を起こすのが精一杯だよ。
ごめん……みんな。ごめんね……


「ふふ、さて……ボールを奪わなくてもこのままボールと共に空気の箱に閉じ込めておけば私達の勝ちだが…それでは試合の終わりかたとして相応しくないだろう?大人しくボールを…………………………?」


ポタッ………ポタッ……ポタッ……ポタポタッ………


『うん?ボールを奪おうとニャンコ選手の元へ向かったアルム選手が立ち止まったまま動こうとしないぞー!?様子がおかしい、一体何があったのか!?』


「…アルム?一体何をしているの!?早くボールをっ……!!」
「……………ない」
「……えっ!?」
「正しくないっ!これは……この亜人が抱き抱えているボールは試合用の氷球じゃない!!熱で溶けはじめているっ!」
「「「!!!?」」」
「にゃは…ようやく気づいたのかにゃ?色が全然違うのに抱き抱えて動き回ってれば案外ばれにゃいもんだにゃ~」


ごめんね、偽物のボールちゃん…。
こんな扱い方をして……ミュリお姉さんが造った即席の氷球だったけど……間違いなくあなたは輝いてたよ…。


「いつの間にすり替えてっ……いや、それよりも…じゃあ……っ、本物のボールは一体誰がっ!?まさかっ!?」


ダダダダダダダダダダダダッ!!


「アイギール!!ボールを持っているのは回復のその子よ!恐らく姿を消す原理の魔法を球に使ってる!気をつけなさいっ!」


相手キャプテンさんが氷像前にいる防御ヤンキーの子に叫ぶ。
氷像前にはミーちゃんが迫ろうとしていた。


「……やっぱり勘づいてましたか、さすがですね…」


【アイスメイクヴェール】
そう、ミュリお姉さんの姿を隠す氷魔法をボールに使っていた。
それをミーちゃんがニャンちゃんから最初に受け取っていたんだ。
ニャンちゃんは囮。


「マジかよ、……俺にできるのは防御だけなんだが……まぁそれは相手も同じ事か。回復役がここに来て何しようってんだ!?」


キキィッ!!
ミーちゃんはボールを抱き抱えたまま防御の子の前で立ち止まる。


「大人しくボール寄越せ、そうすりゃ攻撃されずに済むぜ?」
「……【再生の女神イナンナ様、どうかわたしに大いなる福音の加護を】」
「……は?何やって……」


そしてミーちゃんは回復の魔法を唱え……放った。


パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!
自分に回復魔法をかけたミーちゃんの体は…最大級の光を放ち、まるでフィールド全体をその優しさで包みこむかのような福音をもたらす。
「なっ!?眩しっ……!?」
「っ!」「何っ!?」「光っ!?何も見えないっ……!?」


これを予期していなかった相手チームの目は一瞬眩み、全員が顔をしかめる。


ビュウッ!!
「フウジンさん、後は…お願いします!」
「任せろ」


その間にフウちゃんがミーちゃんからボールを受け取る。


ピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキッ!
【アイスメイクロード】
「あとは…頼んだわよ、フウジン、おたま」


ビュウッ!
ガッ!!
フウちゃんが私の元へ来た、そしてうずくまる私にボールをねじこむように渡し…ボールごと私を抱き抱えた。


「大丈夫っ…?重くない?フウちゃん」
「騎士を嘗めるなよっ!風の力を使えばなんて事ないっ!行くぞっ!おたまっ!」
「……うんっ!」


初めまして、フィールドで話すのは初めてだね…ボールさん。
いっぱいお話ししよう、後少ししか時間はないけど。
最後まで共にいるから。


制限時間……残り1分。

























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