異世界バトスポッ!

冬野氷景

じゅったま!

『ボールアイ王国っ…攻撃を決めたのはキャプテン、ミュリフォーリア選手ーっ!!アースリンドウの始まりの魔女の氷像が削られたー!』


ドドォォォンッ……!


やった!!
ミュリお姉さんが相手の像を削ったよ!
氷像の魔女の女性の腕は折れて…手に乗せた鳥と共に地表に落ちて粉々に崩れた。
像の魔女はまるで大砲でも受けたかのように肩から腰までの部分を円を描くように削られた!
これで…っ条件は五分だよ!


「…っ!やったんですか!?」
「うんっ!ミュリお姉さんがやったよー!」


ミーちゃんが安堵の表情を浮かべる。


「……よかったぁ…氷像前にミュリフォーリアさんの姿が見えなかったのでもしかしたらと思って相手キャプテンさんの注意を逸らしていたのですが…」


そっか!
あの挑発はミュリお姉さんの動きに気づかせないようにするためだったんだね!凄いよミーちゃん!


「でも~似合ってなかったよ!ミーちゃん!」
「ぅぅ……自分でもわかってます……」
「でもミュリお姉さんもありがとうだって!ミーちゃんが引き付けてくれるって信じてたんだね!以心伝心だよ!」
「そんなこと………………え?おたまさん……どうしてミュリフォーリアさんの声が聞こえるんですか…?それに相手チームの氷像も…ここからだと氷のフィールドに阻まれて見えないのに…どうして削ったとわかるんですか……?」
「…………へ?」


そういえば……今まで気にしてる余裕なかったけど……
このフィールド…サッカーコートくらいの広さがあるのに…加えて高さもあるのに…何で私離れてる皆の状況がわかるんだろ…?
離れていて声とか聞こえるはずないのに…?


カツ…カツ…カツ…


「あ……」


相手キャプテンさんが無言でこの場を離れた。
さすがに私達にかまってる余裕もなくなったのかな…?


「う……んっ……」
「ニャンちゃん!」


ニャンちゃんが目を覚ましたよ!
よかった…っ!まだ傷は全部回復してないけど……!


「まだ動かないでください、次は相手ボールです。おたまさんもここに。氷像から少し離れたここなら余波も受けません」
「でも相手キャプテンさんがボールを持ったらここに……」
「さすがにもうそんな余裕は無い筈です、フウジンさんとミュリフォーリアさん二人を甘く見ていた結果こうなったんですから」


そっか、そうだよね!
でもそうなるとこれからはフゥちゃんとミュリお姉さんに攻撃が集中する事になっちゃう…!
何か二人の負担を減らせる事………………さっきのミーちゃんみたいに予想外の動きをして注意を逸らすとか?
でも相手ボールだと攻撃の対象になる可能性があるよ…下手に攻撃を受けて退場でもしたらチームの敗北……それは避けないと…。


「タイム、お願いします」


相手キャプテンさんが突然審判さんにタイムを要求した。


「わかったわ~一時プレーは中断、向こうのタイムだからボールアイ王国のミィシャンは回復の手を止めてね?それ以外は貴女達も気を休めたり密談してても構わないわ。5分後に再開ね」


そっか、30分の試合時間にインターバルやハーフタイムはないからお互いの持つ一度きりのタイムで作戦変更したりしなくちゃいけないんだ。
相手チームがタイムを使えば私達にも猶予がうまれる、それは相手にとっても同じ事だけど……だったら私達の持つタイムも考えて使わなきゃいけないよね、タイムは絶対に使わなきゃいけないものじゃないみたいだし…。
でも選手の回復はプレーに準ずるから禁止……こっちがタイムを取った場合回復はしていいのかな?う~ん、ややこしくなってきたよ!


「ミィシャン、おたま。ニャンコの様子はどう?」
ミュリお姉さんがニャンちゃんの怪我の様子を見るためこっちにきたよ。


「はい、この様子ならあと1分ほど回復すれば動けます。完治には3分ほど要しますが…」
「構わないわ、試合再開後回復を続けて。次の1プレーはあたしとフウジンで守りきる」


ビュウッ!
風と共にフウちゃんも来た!


「フウジンさん、怪我は平気ですか?」
「この程度何も問題ない、それよりもはっきりしたなミュリフォーリア。相手はアイスマリア以外全員サブ属性に『氷』を選択している。これは大きなアドバンテージだ、私の炎で一網打尽にできる」
「だけどそれは貴女にとっても同じよ、『炎』である事がばれた以上…『氷』の攻撃を受ければ致命傷になる。克服したと言っても氷上を歩ける程度になっただけなんだから…ニャンコが復活するまで無理しないで」
「………」
「ミュリお姉さん、さっきはどうやってフウちゃんからボールを受け取ったの?」
「…そうね、秘密にするのも何だし教えておくわ。あたしは……サブ属性にも『氷』を選択してるの。メインとサブを同属性にする事でメインの力は倍以上に増す……アイスマリアの力を越えるためにはこれを選択するしかなかった」
「……両方同じ属性…」
「そうする事で生み出せた技…【アイスメイクヴェール】は透度の高い氷を自分の周囲に張って光の屈折により姿を消すの、こんな風に」


スゥッ………


わぁっ!?いきなりミュリお姉さんの姿が消えたよ!
目の前にいたのに!


「凄い!それずっとできないの!?」
「できるけどやめた方がいいわね、たぶん魔女達はもう薄々勘づいてる……アイスマリアに同じ事をされたら厄介よ。使うとしたら試合終盤…最後の攻撃チャンスまでとっておくべきよ」


そっか、奥の手だね!
相手チームにばれないようにしなきゃ!私…顔に出やすいから凄く不安だよ!聞かなければよかった!


でも皆凄いよ!
確かにやり方やこの球技にかける想いはバラバラな感じするし…それぞれ好きにやってるように見えた。
皆のこの球技にかける信念とか背景とか…そういったものは一切知らない…。
皆の事で知ってるのは名前と属性だけだし…まだ出会って二時間も経ってないし!
それでもただ勝とう、勝ちたいって気持ちは私にもわかるよ!
きっと勝てるよ!このみんななら!


そう、この時はまだ知らなかった。
いや……違う、今度は私達が甘く見ていたんだ。


魔女の本当の恐ろしさというものを。











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