異世界バトスポッ!

冬野氷景

ななたまっ!



『先に氷像に傷をつけたのはアースリンドウ連邦国の氷上の魔女達ーっっ!たった一撃でボールアイの氷像を半分近くを破壊したーっ!!恐ろしいっ!これがキャプテン絶氷の魔女の力ーーっ!!』
『だけど今までこの一撃に耐える事ができた氷像はいなかった、やはり造ったミュリフォーリアの魔術の力は一流。そして……エンジェリアは氷像を守った彼女も評価したい』


--------------


ドドォォ……ッン!


氷像が崩れ落ちる。
その姿は見る影なく、顔と体のほぼ半分が縦に削られた。
残ったのは腰から下…両脚。掲げた剣とそれを見つめる顔半分。
右上半身と…そして足元のボールだけ…。


「「ニャンコ(ちゃん)!!!」」
「……ぅう……」


ニャンちゃんは傷だらけだった。
手がすごく腫れてる……それにあちこちに斬り傷…球を止めてる時に降ってくるつららにやられたんだっ…!
ニャンちゃん……っ!


「どいて下さい!わたしが回復しますっ!」


ミーちゃんが急いで準備を進める。
そしたら審判のお姉さんが近づいてきた。


「皆集まってるところ悪いけど~貴女達ボールから再開なの。治療するならタイムをとるかプレーしながら人を割くかどちらかにしてね?」
「……っ…」


ミュリお姉さんが悲しそうな…悔しそうな…そんな顔をする。


「ミュリフォーリア、一度しか使えないタイムだ。無闇に使うな。ミィシャン、ニャンコは任せた。私が時間を稼ぐ」


フゥちゃんが険しい顔をしてミュリお姉さんに進言する。
フゥちゃん一人でやるつもり!?危険だよ!
何もできないけど…私も力にならなきゃ!


「わ……私もっ…!」
「…球もろくに持てないお前がか?」
「…でもっ……盾になるくらいならできるよっ…!」
「『防御』の属性でもない限りあれをまともに食らえば一撃でアウトだ、お前がリタイアすればそれはチームの敗北になる。わかったら黙って見ていろ」
「…………!」


……そっか…私が退場したら…もう代わりの選手がいないから…その時点でこっちの負けなんだ……!
私には……何もできない…盾になる事すらも。
何もできない事が……こんなに悔しいなんて…。




「………」
「マリア?どうしました?」
「我は完全に終わらせるつもりで全力を投じたわ、なのに…」
「どうやらあの亜人、回避寄りの『防御』属性のようですね。今まで気にも留めていませんでしたが…」
「ええ、こんな屈辱は初めてよ。し、下着を露出させられ…あまつさえ全力で放った球を反らされるなんて…」
(…まだ下着の件を根にもっているのですか…)
「カタリール…少し苦しめてあげましょう。退場させてはダメよ、ギリギリのところまで体力を減らし目の前で完膚なきまでに氷像を破壊するわ。悔悟の念に捕らえさせ虚無へと誘ってやる……」
(……少し悪い癖が出てきてしまいましたね…)


ピーーーーーッ!


試合再開の笛が鳴る。
ボールを持ったフゥちゃんがフィールド中央の坂頂上に立つ。


「【再生の女神イナンナ様…どうかこの者に福音の癒しを…】」
【キュアレストシャイン】
パァァァァァ……
ミーちゃんが両手を組んで祈りを捧げるとその手は光輝き…その手をニャンちゃんに添えるとその体は眩しいくらいの光に包まれた。
氷上にいるのにまるで日光浴でもしているくらいの暖かな光……優しいミーちゃんにこれ以上ないくらいのぴったりの能力だよ!


「ニャンコは大丈夫?ミィシャン」
「はい、しかし再生完治には5分ほどかかります…その間わたしは動く事ができません」
「わかってるわ、相手は貴女達には手出しできない。ゆっくりでいいわ。……おたま、二人の事お願いね」


カツ…カツ…カツ…


「ミュリお姉さん!?」
「フウジンは一人だとどんな無茶でもするから抑えてカバーしてあげないと。それに氷像様がガラ空きよ、あたしが守ってあげないと、ね?」


カツ…カツ…カツ…


「おたまさん、大丈夫ですよ。お二人は一流の剣士と魔術師。戦闘面に関しては魔女にも引けをとりません」
「………でも…」


五対二なんてさすがに無理があるよ…
どうして…皆はそうまでしてこのスポーツをしているんだろう…。
何か…この球技に懸ける想い以上の気持ちを感じるよ。
回復を続けるミーちゃんに聞いてみた。


「……皆それぞれに事情を抱えているのは事実です。それは全て…このスポーツ時代と…それによりボールアイ王国が抱える情勢に起因するものですが…………」


ミーちゃんは途中から言い淀んだ。
何か……言えない深い事情があるのかな?
気になるけど……言いたくないものを聞くわけにはいかないよね…。
それに………今はプレー中。
何もできないかもしれないけど…私は………それでも…。


【暴風纏鎧】
【暴乱無尽脚】


シュウウウウウウウウウ!
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッ!


竜巻みたいな渦巻く風を身体中に纏ったフウちゃんが剣を振ると相手フィールドのあちこちに風が舞った。
相手チームの陣地には至るところに目に見える鎌鼬みたいなのが動いてる!
あれに触れただけで真っ二つになっちゃいそうだよ!


ビュウッ!!
ビュウゥゥゥゥゥゥッ!
ビュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!


ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッ!


その中を文字通り、通り抜ける風の如く…暴風があちこちに駆け回る。
それは相手フィールドを駆け回るフゥちゃん。
私には目で追う事もできない速さなはずだけど……何でわかるんだろ?


「ちっ……うっとうしいな…」
「これは…動くと身体がバラバラにされてしまいそうですね」
「なるほど、確かに個々の力だけでいったら侮れないわね。だけど……」


「みゃはははっ!アタシには関係ないよ~だ!」
「正しい、ワタシも参加させてもらおうか」
ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ………


ピタッ!


「!!」
突如、フゥちゃんの動きが止まる!
そして…二人の魔女がフゥちゃんに対峙した!


「それだけでこの球技には勝てない事をわからせてあげなさい、【狂風の魔女】シルファニア、【空間の魔女】アルム」



















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