異世界バトスポッ!

冬野氷景

いちたまっ!



「…………え?あれ……?」


開いた扉の先に見たものは…何かゴツゴツしい部屋、控え室みたいだけど……
何か武器みたいな物がいっぱいあるっ!?
剣とか斧とかハンマーとか……どんな部活っ!?


「あ………えっ?」
「あの……あなたは?」
「ここ……ウチらの控え室なんだけど……まさか相手国のスパイ!?」
「動くなっ!」


チャキッ!


部屋にいた四人の女の子達のうち一人が私に剣を向けた!
あわわ……何ここっ!?海外!?
それとも何かの撮影っ!?


「わわっ?私にも何が何だかっ…?あなた達は…球愛の生徒?」


何か可愛いけど映画の衣装みたいな格好、魔法使いっぽかったり鎧着てたり……やっぱり撮影があるのかな?


「…キューアイ?いえ…わたし達は『ボールアイ王国』の出場選手ですが……」
「貴様こそ何者だっ!?『アースリンドウ連邦国』の選手か!?」


……王国?連邦国?何を言っているんだろう…


「わ、私はニホン人デース!ニホンのスポーツセンシュデース」


「……ニホン?どこの国だ?」
「…わからないわ…それより会話が成り立っていないような気がするわね…どうやってここに入ってきたのかしら…?兵がいるはずなのに…」


「わ、私…何か声が聞こえて…『氷球』がどうとかって…それで困ってるみたいだったから力になろうと思って扉を開けたらこの部屋に…」


「も…もしかしたらっ!『氷球』の神に祈りが通じたのではないでしょうか?!そして神の使徒を遣わせてくださったのでは!」
「……馬鹿馬鹿しい…そんな事あるわけないだろう」
「でもこんな服の人ウチらの国で見た事ないよ?それに…」
「……そうね、この際誰でも構わないかも…これで規定人数は揃ったわ…」


「……えっ?えっ?」


「ねぇ?あなた名前は?」
「えっと……愛野たまです!おたまって呼んでくださいっ!」
「おたま?変な名前ね…まぁいいわ。それよりも…おたま、入ってきた時に『球を愛する』って言ってたけど…どういう意味?」
「えっと……私、球が大好きで…色々な球技をやってきたんです。それで…」
「…よくわからないけど…あなたはスポーツ選手なのね?」
「は…はい…」


ひそひそ…ひそひそ…


四人は密談を始める…どうしよう…。
何かよくわからないけど…出てった方がいいかな…?
でもそしたら『氷球』が何なのかわからなくなっちゃう…それは嫌だ!


「あの~……『氷球』って一体何」
「『球技の女神』様っ!お願いします!わたし達のチームに入ってわたし達の国をお救い下さいっ!」
「うひゃあっ??」


一番大人しそうな子がいきなり大声をあげてビックリした!


「チ、チーム?やっぱりあなた達はスポーツ選手なの?」
「うん、『ボールアイ王国』の専属選手だよウチらは。ウチの国で一番人気の『アイスクラッシュヘブン』ってスポーツの」


アイスクラッシュヘブン?何そのカッコいい名前のスポーツ!?


「でね、今から国同士の公式試合が行われようとしてんの。でも…」


一番明るそうな感じの猫耳の子が顔に暗い陰をおとす。


「直前になってね、メンバーの一人が逃げてしまって…何とかして人を探したんだけど…相手国のチームの評判を聞いて皆入ってくれなくて……」


一番セクシーなお姉さんが悲しそうな顔をする。


「ふん、弱気な者など元々必要ない。私がいれば充分だ」
「いや規定人数五人だから。バカなの?」
「………」


一番凛とした顔つきのカッコいい女の子が難しい顔をする。


「時間がないわ、直に試合が始まってしまう。おたま、そんなわけであなたに試合に参加してほしいの」
「えっ!?わ、私!?でも聞いた事もないよそんなスポーツ!」
「今から説明する、大丈夫。そんなに難しいルールじゃないわ。おたま、得意属性は何?」
「………は、はい?属性って?」
「あなたの得意な属性よ、生まれつきの加護属性」
「え、えー……よくわからないけど………『球』?」
「………『球』?そんな属性あったかしら…?」


「どうでもいい、人数が足りれば私が一人で何とかする。そろそろ試合だ、ミュリフォーリア、そいつにルールを説明して準備させろ。私が選手登録を済ませておく」
「ええ、わかったわ」


何これ何これ!?
一体何に巻き込まれてるの私っ!?


「競技場はこっちよ、歩きながら説明するわ。行きましょう」


--------------


〈競技場選手入口までの回廊〉


「……え?」


私と三人は外の景色が見える天望回廊を歩く。
外の景色はまるでファンタジーの世界、中世の海外みたいな建物やお城が雄大な自然の中に佇む。
連なる蒼い山脈、アーチ状に高くそびえる大地、その上にある塔や森。
空にはドラコンみたいなのが飛んだり箒に乗った魔法使いみたいな人達が色とりどりな花火みたいなのを打ち上げている。




「えーっ!?何ここ!?凄い!ねぇ!あれ何!?」
「何って?ドラコンや魔法なんて珍しくないでしょ?」
「いやいや!初めて見たよ!?どうやってるの!?CG!?」
「しーじー?何それ?」


うーん……もしかして…これはあれだ。
友達に漫画を借りて読んだ事があるよ!流行ってるやつ!


『異世界てんい!』


ある日違う世界に呼ばれちゃうやつ!
そしてそこで主人公が魔王とかそーいうのと戦うやつ!
でもっ!何で私!?
私…球を使うスポーツ以外何もできないよ!?


「じゃあ説明するわね、こっからフィールドが見えるでしょ?」


外側の景色に夢中で気づかなかったけど回廊の内側を見ると……


ガヤガヤ…ワイワイ…


人がいっぱいいる!
うわっ?竜みたいな人に妖精さん、角が生えた人に…天使さんっ?
凄い!本当にファンタジーの世界なんだ!?


「あれが『アイスクラッシュヘブン』のフィールド、永久凍土の氷よ」
「え……?」


沢山の人の視線の先。
そこには紫がかった氷に包まれた綺麗なフィールドがあった。
サッカーコートくらいの広さ、床面全てが紫の氷。
床面どころか円柱型に囲まれたフィールド全てが氷、周りの壁も全部!
私頭良くないから表現が難しいけど……観客席の前にもフィールドを囲うように氷の壁があって…フィールド全部(空以外)が氷に包まれてる感じ!まるで円になった水槽の中みたい!
それを取り囲むように観客席があるの!一体どんな競技なんだろう…
氷上で五対五で球を使うスポーツ……カーリングみたいな事するのかな?


一つ問題があるとすれば氷面全てが凸凹というか…何か氷柱みたいな壁や勾配のある氷の坂とかがある事。危ないよ~!
わかりにくいかもだけど…床から斜めに飛び出したつららみたいな坂があって…それがフィールド全体あちこちにある感じ!
全体的に氷のギザギザだよ!
フィールド全体を見ると氷の処刑場って感じだよ!
まるでここで戦うみたいだよ!バトル漫画とかでこういうステージ見た事あるもん!
凄く嫌な予感がする!


「このスポーツは重さ15kgの氷の球を使い相手の造る氷像を破壊する競技よ、魔法、武器道具の使用、何でもありの競技……それが『アイスクラッシュヘブン』」
「……………………」


えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?やっぱり!?
聞いてないよっ!何そのスポーツ!?



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