一級警備員の俺が異世界に転生したら一流警備兵になったけどなんか色々勧誘されて鬱陶しい

冬野氷景

七十三.警備兵、帰還する。



<ウルベリオン王都.『ギルド区』>


-時刻 お昼刻-


ワイワイ……


「やっと……やっと研修が終わりましたね……警備兵としての心構え…在り方、しかと胸に刻みこみました!ようやく私達もお仕事ですね!」


「うん、今日はすっごく張り切ってたねームセンちゃん。今日イシハラ君が帰ってくる日だから?」


「……そ……それは……そぅなんですけど……いきなり核心をつくのはやめてくださいよシューズさん……」


「七日ぶりだもんねー、アタシももう限界だよー。明日からいっぱい甘えさせてもらおー♪」


「確か……いきなりお一人で魔物の巣窟である場所を警備する事になったって…………イシハラさんのお力は知ってますけど…心配です……」


「うーん、大丈夫だと思うよイシハラ君なら。『無大陸』にいるって伝承の冥界の化物たちが地下層に巣喰ってるって話の洞窟だけどきっと平気だよー」


「………何一つ平気な要素がない気がしますけど……大丈夫ですよね!?イシハラさんならきっと平然とした顔で帰ってきますよね!」




ザワザワ……ザワザワ………




「……?前方の通りが騒がしいですけど…何かあったのでしょうか?」


「前からいっぱい兵士が歩いてくるねー、なんだろー?」


ザッザッザッザッザッザッ!!


<キャアァァッ!マルグラフ辺境伯様の私兵隊よ!>
<おい!辺境伯様が王都においでなさったぞ!道を空けろ!>
<お顔をお見せください!マルグラフ候様!>


「凄い豪華な馬車に……護衛の数ですね……どなたですか?」


「この国の国境地帯全部の土地を所有してる大貴族だよー、名前忘れちゃったけど。この国ではウルベリオン王様の次の次くらいに偉い人だったかなー?」


「そうなんですか……凄い人気ですね」


「貴族っていう『職業ステータス』はそれだけで人生が約束されてるようなもんなんだよー、ほとんどが血筋だし普通の人には縁の無い雲の上の存在……だったかなー?」


「……そんな方が大仰に何のご用なんでしょうか?」


「さぁー?今回の魔物騒動で辺境地区は防衛の機能をあまり果たしてなかったしー……その件かなー?」




<………むふ、馬車を止めよ>


「はっ!!」


キッ……ガチャッ……


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ムセン達の前で馬車が止まり、扉が開いた!
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「………?急に馬車が止まりましたけど………何でしょうか…?」


「…むふ、むふふ……そなた……名を何と申す?」


「………?」


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馬車の中から貴族【マルグラフ】が現れた!【マルグラフ】はムセンを舐めるような目付きでじっくり見て尋ねた!
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「そなたに言っておる、名乗りなさい」


「……………私ですか?ムセン・アイコムですが……何ですか?」


「むふふ、聞かぬ名だが……異界の者か…まぁ、どうでも良い。そなた……その美しさ……余のめかけとして迎えてやっても良いぞ?余は」


「え、普通に嫌です。失礼します」


ペコッ


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ムセンとシューズは一礼し、その場を立ち去った!
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「………ぐ、ぐぬぬぬっ……何だアヤツは!!無礼にも程があるぞ!余を誰だと思っておるのだ!!」


「……マルグラフ候……あの異界人は魔王軍との王都戦争で功績をあげた警備兵でございます。ウルベリオン王や神官の息がかかった人物なので……今、揉め事を起こすのは得策ではないかと……」


「ぐっ……ぐぬぬぬっ……ま、まぁ良い。警備兵の女なぞこちらから願い下げだ!余はこれから隣国の第二王女と結ばれるのだ!むふふ……国境防衛の失態の件もこれで帳消し……どころか、余の領土は更に増す……その暁には独立国として新たな国の王となる事さえできる……むふ。さぁ、行くぞウルベリオン王のもとへ!」


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スタスタスタ……


「この世界の権力を持った方は極端ですね……今の貴族や勇者みたいな人もいれば、王様や神官様みたいな良い方もいらっしゃって……」


「むしろこの国の方が変なくらいだよー?よその国は偉い人は大体あーゆー人が多いもん。だからあたしはこの国が好きなんだけどねー」


「……そういえばシューズさんも…出自は貴族なんですよね…?」


「そうだよー、うちも職業ステータスを振りかざす人ばっかでさー。それが原因で飛び出したんだー」


「……お察しします。いつかゆっくりできる時があればシューズさんのお話も聞かせてください」


「うん?聞いても面白くないよー?」


「いいんです。……お友達の事は色々知りたいですから」


「………お友達……友達かー……うん、わかったー」


「あ、すみません……嫌でしたか……?」


「ううん?嬉しいよー、あたし……みんなから変って言われてたから友達とか出来た事なかったからさー」


「……確かに変わってはいますけど……それはシューズさんの個性ですから。私は気になりません。……それに変といったら、もっと変な人が大勢いますから」


「ひどいよームセンちゃん。………うん、でもそうだねー、ムセンちゃんもどっちかというと変わり者だしねー」


「どこがですか!?私はあなたやイシハラさんに振り回されてる普通の人です!」


ざわざわ……ざわざわ……


「……?また前方が騒がしいですね……?今度は何でしょうか?」


「また人が大勢歩いてくるよー?……でも今度は……兵士じゃないよー?何だろ?……なんか山賊っぽい人達がいっぱい来たけど……」


「次は賊ですか!?何故…賊が街に!?」




<アニキ!待ってくださいよ!歩くの速すぎますって!>
<ぜぇぜぇ……新アニキー!俺らついていきやすぜ!置いてかねえでくだせぇ!!>




「酒場にでも行くのでしょうか?大声で迷惑な方達ですね……………………え、なにか……見覚えのある方が先頭をもの凄い速さで歩いてますけど………何か嫌な予感がします……」




<ナツイ様!!待ってくださいとわたしは思います!!>


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ムセンとシューズのもとに【イシハラナツイ】と【王女】と【C級盗賊団の残党達】の一行が姿を現した!!
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「イシハラさんっ!!?何故そんな大所帯を引き連れて帰ってきてるんですか!!?お仕事の帰りじゃないのですか!!?あなたは一体どこまで変なのですか!!!」




誰が変なおじさんだ。

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