一級警備員の俺が異世界に転生したら一流警備兵になったけどなんか色々勧誘されて鬱陶しい

冬野氷景

七十一.箱入り王女、ついてくる。



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<冥邸洞ハーベスト内部 地下10階>


カツ…カツ…カツ……


「……な…なぁ…入口にいた……警備兵とかいうあの人…本当にそんな地下まで行ったのかな…?」
「…そんなわけ…ありませんよ…名のある冒険者ですら地下50階までで殆どが引き返します……仮にそんな階層があったとして…そんな事ができるのは勇者様くらいのものでしょう」
「でもー…本当にあちこちに魔物の残骸があるよ?あの人これ一人でやったのかなー?」
「……ここまで隅々まで探索しましたが…確かに魔物の死体だらけですね……しかし、この程度の魔物であれば【一流冒険者】でも一人で倒せます、それよりも盗賊団が本当に壊滅したのか確かめなくては…」


カツ…カツ…カツ…




「あぁん!そんな…そんなのっ…ダメだと…わたしはそう思うんですっ!」




「っ!女性の声がします!きっと…盗賊団に捕らわれた女の人の悲鳴ですっ!酷い目にあってるんです!」
「やっぱり……あの警備兵とかいうやつの虚言だったか…!…って、そんな事言ってる場合じゃないな!今助けてやるぞっ!」


タッタッタッタッ!!


バッ!!


「おい!盗賊団!そこまでだ!!大人しく………っ!!」




ピカッ


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォンッ!!


【一流警備兵技術『安全領域改』】


「きゃぁぁぁっ!?料理が…爆発したのをわたしは見たんですっ!……あ、あれ?……何ともない……?何ですかこれ……結界みたいなものがわたしを囲っているとわたしは思います……」


王女が料理をつくっていると何か爆発した。
何やってんだこいつ、一人でわめきちらしながら料理を作ってたと思ったら何で爆発するんだ。
安全領域張らなかったら直撃してたぞ。


「ごめんなさい……わたしはそう感じざるをえません……料理はした事がないので……わたしは作れないと思うんです…」


先に言わんかい。
しかし困ったな、このままじゃあ餓死する。


「ナツイ様、わたしは携行食をいくつかお持ちしていると思います。こちらでよろしければお召し上がりくださいと、わたしは思います」


早く言えよ。
どうやらマイペースな王女のようだ。


俺達は一緒に飯にする事にした。
なんか誰かが爆発に巻き込まれて吹っ飛んでいったような気がするけど気のせいだろう。


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パチ……パチパチッ……


「ナツイ様は『警備兵』なのですね、しかし『警備兵』とは何でしょうとわたしは思います」


王女と俺は飯を食いながら軽く自己紹介し終わった。
携行食の変な木の実だけじゃ腹が膨れなかった俺は獣型の魔物の肉を切り裂いてたき火で焼いた。
上手に焼けましたーが、あまり美味くなかった。
ふむ、やはり料理は面倒だしよくわからんな、味付けの問題か?


「ふむふむ…なるほど、とわたしは感じます。ではナツイ様はこの洞窟の安全面を管理し、冒険者という方々の手助けをしておられるわけですね。素晴らしい!、とわたしは思わざるをえませんっ!」


警備兵の説明を受けた王女はなんか勝手に感動している。
特に興味はなかったけど満腹になったのでとりあえず聞いてみた。


「そんな事より王女とやらがこんな場所で何してる?家出か?」


「いえ……わたしは『シュヴァルトハイム』からの特使として…魔王軍との戦いにて被害を受けたウルベリオン王国の調査と復興支援に参ったと、わたしは思うのです」


「一人でか?」


「それが……護衛の皆さんと…はぐれてしまいまして…迷っていたところに先程の人達に道をお聞きしたんですが……わたしが王女だという事が何故かばれてしまいまして…追いかけられていた、と思います」


ふむ、何か賊っぽかったし、たぶん誘拐とかしようとしたんだろう。
しかしややこしい話し方をする王女だ。
と、思いますって自分の話なのに何で推量形なんだよ。


「地図も何もないのか?ここは王都から少し離れてるぞ」


「そうなのですか?全て護衛の方々に任せきりでしたので…それにわたしはあまり外の国へ来た事がありません、と思うので土地勘も何もないと感じるのです…」


箱入り王女か。
そんなやつを何故特使に選ぶんだろうか。
王女って言ってたし何か政治絡みのなんたらかんたらだろうか。


まぁいいや、俺には何の関係もない。
とりあえずこいつからは面倒な波動を感じる、あまり話を聞くのはやめよう。




「それじゃあお疲れ」スタスタ…


俺は王女に別れを告げて入口に戻ろうとした。




「ナツイ様っ!わたし!お手伝いしますっ!ナツイ様のお仕事を手伝いたいと感じるのですっ!そしてナツイ様のお仕事が終わりましたら…わたしを王都までご案内して頂けませんかっ!?」


「No thank-you」


俺は丁重にお断りした。


「何でしょうか?今のナツイ様の発音は少し独特な感じがしてならないのです!とても気になる、とわたしは思わざるをえませんっ!わたしは気になると止まらないのです!わたし…ものをあまり知らないのですが…ナツイ様!色々教えていただけたらと思いますっ!よろしくお願いしますっ!」




何だこいつ。
もう一回言う、何だこいつ。
面倒な人間選手権のオルス代表か?




こうして洞窟(施設)警備に新たに面倒な問題が増えてしまった。



















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