一級警備員の俺が異世界に転生したら一流警備兵になったけどなんか色々勧誘されて鬱陶しい

冬野氷景

三十.休憩と帰宅は速足で



警備員の仕事は何種類か存在する。


商業施設等の保安を目的とした施設巡回警備、家庭に設置した防犯機械に反応があった場合に駆けつけたりする機械警備、現金輸送などを行う輸送警備など様々だ。
一号とか二号とか呼び名も分けられていたりする。
警備を知らない人間でも街中でこれらを見かける事はあるだろう。
その中で恐らく最も目にしているのが、道路工事をする際に必ずいる警備員『交通誘導警備』だ。


俺も十年以上警備の仕事をしているがその半分以上を占めていた仕事がこの交通誘導警備だ。
俗に二号警備(雑踏警備)と呼ばれている。
今回はこの二号警備でのスキル(技術)を使ってみよう。
丁度ワラワラと魔物がいてうってつけだし。




技術を使った俺は通行止め看板の前に立つ。
でかいなこの看板、しかも何枚あるんだよ。


ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ………


まるで世界を分断する壁だな、こっちに倒れてこなきゃいいけど。
まさかこんな地球めいた原始的な技術だったとは魔物通行止め。
まぁ警備員だった俺にはぴったりだ、これが一番わかりやすいし。


ガッ!ガッ!ドサドサァッ…


何か魔物達は何が起こったかわからないようで壁にぶち当たっては平原の方へ弾き飛ばされていく。馬鹿だろこいつら。
しかしうじゃうじゃいるな、邪魔くさい。
だもん騎士、早く親玉のやつ倒してくんないかな。


ギィィィィッャァァァァッ!!!


壁にぶつかってイライラしたのか、わけのわからん雄叫びをあげながら魔物達は俺に襲いかかってきた。
とんだクレーマーだなまったく。
道が通れないからって警備にあたるんじゃない。


「あぶないっ!!!逃げてっ!!」


遠くの方から微かにだもん騎士の声が聞こえた。
お断りだ、腹が減ってるから動きたくないんだ。
俺の心配をしてるんだったら早くボスを倒してくんないかな。




ガキィィィィィンッ!!


「ギィィィィッ!!!???」


俺に攻撃しようとした魔物がまたもや弾かれる。
当然、通行止め看板の前にいる俺にも安全策はとってある。


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【一流警備兵技術『安全領域セーフティーゾーン』】
・使用者の周囲に四方形状にカラーコーンと安全バーを設置する事により攻撃による一切の干渉を排除する。
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俺の周囲にはパイロンとトラバーが設置されていた。
よくこんなもんで魔物の攻撃を防げるものだ、俺が発現させたんだけど。


さて、これで安全面は確保されたし後は魔物を何とかするか。
こいつら魔物は人を傷つけるテロリストみたいなもんだし、わざわざ丁寧に誘導してやる必要もないだろう。
俺は剣を抜き、構えた。


チャキッ


確かアマクダリは適性武器を媒介にする事によって技術はその力を何倍にも跳ね上げるとか言ってたな。
じゃあ使ってみよう。
しかし空腹で面倒だから一歩も動きたくない。


だからこの場から動かずに剣を振って、魔物どもを排除する事にしよう。


キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ…………


そう、警備員が扱う『誘導棒』のごとく。
車を誘導して導くかのように。
それならばわざわざ動かなくても片手で振れる。
何に反応したのか知らないが、俺の持つごく普通の鉄製の剣がピカピカと光だした。


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【一流警備兵技術『強制・交通整理』】
・技術『交通整理』が適性武器により進化したもの。魔物達を自分の指示する方向へ強制的に吹き飛ばす。
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「お前らあっち行け」


クイッ


ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!


ギィィィィッャァァァ…ッ…………………………


何か魔物達が剣を振った方向へ空高く吹き飛んでった。


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◇【アクア・マリンセイバー視点】


…………ぇええええええええっ!?!?
一体何が起こってるのっ!!?
村の前に看板の壁ができたり、あの人は襲いかかってきた魔物を無表情で弾いたり、挙げ句にその場から動きもせずに魔物を吹き飛ばしたり………あの人何なのっ!?


ゴォォォォォォッ!!!ドサドサドサドサドサドサッ!
ゴォォォォォォォォォォッ!!ドサドサドサドサドサドサドサッ!


あの人が剣を適当に振る度に魔物達が吹き飛ばされて気を失ってる……姿が見えなくなるほど遠くまで吹き飛んでいった魔物も…。
どんな技術を持ってればそんな規格外な事ができるわけ!?
……っ!ああもうっ!
何かあの人に関しては考えててもしょうがない気がしてきたわ!
後で直接色々問い質さないと!私に告白した事とか!


「ナ、ナニガオコッテイル!?マモノドモ!ナニヲネテイル!?ナンダアノニンゲンハ!!」
「残念だったな、貴様らはもう終わりだ」
「グッ……!イイキニナルナ!オンナノキシガ!ナラバオマエヲコロシ、オレガアノニンゲンヲコロセバ…!」
「聞こえなかったのか?『貴様ら』はもう終わりだと言ったんだ」


ボコボコボコボコッ……


「…………エ…?」
「人間の体はほぼ水で構成されている、当然、骨にも水分というのは含まれている。貴様も人の形を型どっているならば魔物だろうと似たような構造だろう、私は、その水も斬撃に変えられる。まぁ、決着を早めたい時に使う最終奥義だがな」


ピシッ……ピシッピシッ……


骸骨の骨は内部からヒビ割れを起こしていく。


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【魔法剣技術最終奥義『水翔内爆斬』】
・生物に含まれる水分を斬撃に変え、内部から破壊する
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「………グ……クソウ……コンナトコロデ……オンナナンカ二……オンナダカラトユダンシタ………」
「貴様も男だ女だ言うクチか。……私もほんの少し前までそうだったよ……しかし、そんな事どうでも良い事だと気づいた、気づかされた、不思議な男にな。貴様の敗因は私が女で油断した事ではない」




「私が、騎士で、強かったから。ただそれだけだ」
「クソォォォォォォォテロリズムサマァァァァァァァァッ!!」


ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ!


バラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラ………


骸骨は骨の中から斬り刻まれ、粉々に砕け散った。


「ふぅ……」


村を守れて…よかった。
でも……あの骸骨……幹部の部下で勇者様を探してるとか言ったわね…だとしたら幹部もこの地へやって来ている…?
ここへはまだ何も伝えられてないけど……すぐに王国へ伝えた方が良さそうね。


でも、まずその前に!


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どうやらだもん騎士はボスを倒したようだ。
一件落着、さて、すぐにご飯食べよう。
俺は通行止めを解除し、速足で村へ戻った。


「あ!ちょっ…ちょっと待ってよ!何その速さ!?早歩きでその速さって何なの!?ねぇ待ってよ!」


なんか後ろからうるさかったが無視した。







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