一級警備員の俺が異世界に転生したら一流警備兵になったけどなんか色々勧誘されて鬱陶しい

冬野氷景

二十九.魔物戦



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…………


俺とだもん騎士は村と迫る魔物の間、平原に立つ。
まだ遠目だが確実に魔物どもは村へと近づいてきている。
ざっと見て100体くらいか?
まいったな、村を警備すると言ったもののいざ相手しようとなると。


凄く面倒になってきた。
このだもん騎士の回想話を聞く限り、こいつ相当な鍛練積んでるみたいだし強いんだろう。
こいつ一人で100体くらい倒せないもんだろうか?


「なぁだもん騎士、どうするか算段はあるか?」
「だもんだもん言わないでっ!………知らないっ」ぷいっ


何ここにきて不機嫌になってんだこいつ。


「あなたのせいだも………ごほん!まぁ冗談はさておき…私一人では無理よ。勝てる勝てないは別にして……まず間違いなく村の被害は一人では抑えられないわ」
「他に兵士はいないのか?」
「村に元々いる駐屯兵は二名、さっきいた私の部下が二名。村人は20人ほどいるからその四人は村人の護衛で手一杯ね。応援を待っていたら村は破壊されてしまう。つまり…私とあなたしかいないという事よ」


まじか。
じゃあ俺達で何とかするしかないか。


「それにしても……魔物が意志を持って…しかもあれだけの数の別種と徒党を組んで襲いかかってくるなんてありえない…」
「どうせ手を引いてるやつがいるんだろ、魔王軍とかな」
「…察しがいいわね、恐らくそうよ。だとしたら…そいつを見つけて倒すのが一番早いかもね」
「そうだろうな、じゃあそいつは任せた。よろしく」
「そうね…じゃあ……って!ええ!?そこは男のあなたが『ボスは俺がやるからそれまで魔物の相手を頼む』とかカッコいい事言うんじゃないの!?」
「ふざけるな、お前騎士だろう。俺はまだ警備兵にすらなってない一般人の無職だぞ」
「……ま、まぁそうなんだけど…何か釈然としない………………って!む、無職!?警備兵って言ってなかった!?」


かくかくしかじか。


「………本当に無職じゃない!何であなた自信ありげにここにきたのよ!?!?まだ警備兵試験の段階のあなたが魔物をどうにかできるわけないじゃない!」
「まぁ何とかするさ。ほらほら、俺がどうにかなる前に早く親玉を倒してきてくれ」
「~~~っ!!時間も無いし仕方ないわ!本当にどうにかできるのよね!?嘘だったら許さないから!私が討ち漏らしたやつは絶対どうにかしてよ!?信じるからね!?」ダッ!


そう言ってだもん騎士は魔物の群れへと斬り込んでいった。
何てやかましい女だろうか。
何度も言わなくてもどうにかするさ、面倒だけど。


俺はステータスオープンをする。
10時間立哨試験の時に暇つぶしに俺は自分の現在使えるスキル…『技術』に一通り目をとおしていた。
確かその中に対魔物戦に役立ちそうなやつがあったようななかったような。
何分使える技術がめちゃくちゃあって、全く覚えていない。
どうやら技術を使う際はその技術を『どう使うか』『どういうイメージか』『誰に対して使うか』など技術内容やらなんやらを明確に思い浮かべないと発動しないらしい。
それ故に取得していても名前すら覚えていない技術は発動できないらしい。


頭から食パンが出るほど面倒くさいが、やるしかないか。
早くしないと武器で戦わなければいけなくなる。


武器で戦えばいいんじゃんって?
冗談じゃない、俺はまだ空腹なんだ。
故に一歩たりとも動きたくない、魔法めいた技術が使えるんならそれで片付けた方がエネルギーを使わずに済む。
その場から動かなくていいからな。
あぁ、魔法使いって素晴らしい。


ピッ


「あぁ、そうそう、これこれ」


ある技術の項目を見つけた俺は、その場に立ち、立哨姿勢をとる。


さて、警備を開始するとしよう。


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◇騎士【アクア・マリンセイバー】視点


あの人本当に大丈夫なの!?
でも、もう考えてる時間はない!
私にできる事は……できるだけ魔物を斬りながら魔物達を操っているやつを探して迅速に倒す事!
これだけの数じゃあ魔物全てを仕留めるのは難しい。
あの人を信じて…なるべく早く統率者を見つけないと!


チャキッ!


私は相棒の適性武器【蒼剣ブルーセイバー】を抜いて、魔物の群れへ斬り込んだ。


ドドドドドドドドドドドドドドドドッ……!


ザザザザザザザザザザザザッ!


「やぁぁぁぁっ!!」


【魔法剣技一級奥義『水翔連斬』】


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※魔法剣
【魔法剣検定】取得により使用できる特殊技術。
属性検定技術(地水火風雷光氷闇)と剣技を融合させた高等技術で属性技術で生み出された属性を剣に付与させたり、剣技にのせる事により普通の剣でも様々な属性効果を発生させる事ができる。
【魔法剣検定一級】まで取得した者は世界中で56名。
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ザパァァァァッン!!!


ギィィィィッ!ギャアギャア!ギィィィィッ!


剣に水魔法を付与させて剣技から水を生み出し、周囲の魔物をずぶ濡れにした。
水に濡れた魔物はずぶ濡れになりながら私に襲いかかってきた。


「残念ね、もう終わりよ」


この水は剣撃そのものの効果をもっている、つまり。


ザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッ!


ドサドサドサドサドサドサドサドサッ!!!


この水に触れたら終わり、濡れた部分を切り裂いていくの。


これで10体…っ!
でも私の周囲にいる魔物は私に引き付けられているけど、他の魔物は脇目も振らず村へと向かっていく。
魔物を統率しているやつの目的はやっぱり村なのね…!
何故この村を狙ったのかわからないけど……させないっ!


【魔法剣技一級奥義『水翔波斬』】


バシュッ!ザパァァァァッン!ザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッ!


私の放った剣閃は水流を生み出し、波となって村へ向かう魔物を呑み込み、切り裂いていった。


「やったっ!」


「オマエ、ジャマダナ」
「!!」


バシュッ!キィンッ!


突然、魔物達の群れの中からナイフが私に飛んできた。
それを私は剣で弾いた。


「……統率者……魔物の群れの中に紛れ込んでいるのね…周囲を囮にして……一番嫌いなタイプだわ」
「クク…ダッタラマッコウカラキリフセテヤロウカッ!!」


ダッ!


魔物の群れから鎧を着た骸骨が飛び出し、私に剣を振り降ろす!
私は蒼剣でそれを迎え討った!


キィィィィンッ!!!ググググッ……


鍔競り合いの向こう側には、人の形だが決して人間ではない異形の顔が視界いっぱいに映る。
意思を持ち、人語を操る骸骨。
人語を操るのは魔王軍で役職を持つ魔物だけ……こいつ…。


「クク…オレハ……マオウグンカンブ、【ザイゴウノテロリズム】サマノブカデアリ……チュウタイチョウノヒトリ…【ソーグ】…」
「魔王軍幹部?部下?こんな田舎村に何の用だ?迷子の案内なぞせんぞ」


私は男言葉に戻り、ソーグと名乗る骸骨騎士に相対する。


「ククク……『ユウシャ』ハドコダ?テロリズムサマハユウシャトタタカウコトヲノゾンデイル、ユウシャヲダセ」
「ふっ…貴様は阿呆か?勇者様がこんな片田舎にいるわけなかろう。もう少し脳を働かせるのだな」
「オマエノイケンナドキイテイナイ、マモノドモ、ムラヲテッテイテキ二アライダセ!」


グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!


ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!


その言葉を合図に魔物達は私と骸骨に目もくれず、一斉に村へ動き出した。


「させるかっ!!」


ググググッ……!


「オマエノアイテハオレダ」
「……っ!くそっ…!」


骸骨なのに何て力…っ!
魔物はまだ80体はいるっ……あの人一人じゃ…とても対処できない数っ……!
けどこの骸骨と同時に対処する事ができないっ!
どうしたらっ……!!


「ククククク…オソエ、オソエ!ジャマナヤツハミナゴロシ二……」






ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドンッ!!!




バチィッ!!




…………ドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサッ!!




「「!!?」」




…………………………………え?
ど……どういうこと……?空から何かが無数に降ってきて……村に侵入しようとした魔物達を弾き飛ばした……?
何……あれ………………………鉄製の……看板!?
な、何でそんなものが………空から……しかも大きい!
10メートルくらいある鉄でできた長方形の看板みたいなものが…地平いっぱいに並んで……村の入り口を塞いでるっ!?
何なのあれ!?


あまりにも非常識で不可思議な現象に唖然とした私と骸骨騎士が目にしたのは……看板の目の前に堂々と立つ、不可思議極まりない男だった。


「ご迷惑おかけしております、ご理解の程宜しくお願い致します。あ、別に魔物になら業務用対応しなくていいか」


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【一流警備兵技術『魔物通行止め』】
・通行止め看板を設置した場所への魔物の侵入を阻止する。
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