キリストにAI開発してもらったら、月が地球に落ちてきて人類滅亡の大ピンチ! 前代未聞、いまだかつてない物語があなたの人生すら変えてしまう ~ヴィーナシアンの花嫁~
29.乙女心の無理ゲー
翌日、シアンはジャングルジムを登れるようになっていた。
日々、急速に進化していくシアン、実に頼もしい。
続いて餌を使った学習に移行する。
まず、餌の美味しさを教えた後、餌をその辺において自分で取って食べるように仕向けた。
最初は恐る恐る餌の匂いを嗅いで逡巡していたが、餌が美味しいというのが分かると積極的に餌探しをする様になった。
続いて手で餌をあげるようにしてみると人間を認識するようになった。
俺が飼育部屋に入ると走ってやってくるのだ。
さらに、餌をあげずに焦らすと手を上げたりお尻を振ったりダンスをする様になった。
実に可愛い……
そろそろほとぼりも冷めた頃だろうから、美奈ちゃんも実験部屋に呼んで餌やりをやらせてみた。
「なに? これをあげればいいの?」
美奈ちゃんは受け取った餌を恐る恐るシアンの前に出した。
シアンは美奈ちゃんの手の匂いをクンクンと嗅いだ後、餌を両手でつかむとカリカリと齧って食べた。
「きゃー! かわいぃー!」
美奈ちゃんは大喜びである。
「ちょっと餌を見せながら焦らしてごらん」
「えー、ちょっとかわいそう」
「まぁいいからやってごらん」
「ごめんね!」
そう言いながら美奈ちゃんは餌を見せながら、手に届かない距離で焦らした。
シアンはジャンプしたりして餌に飛びつくが、美奈ちゃんは上手くかわす。
「いや~なんかかわいそう」
「まぁ見ててごらん」
餌をとるのをあきらめたシアンは踊り始めた。
両手をあげながら右向いて左向いて、一度四つ足になってまた右、左
「あら、何か踊ってるわよ。下手くそな盆踊りだわ」
「そうそう、シアンは餌が欲しいというのを踊りで表現するんだ」
「へー、上手く踊れました! 餌あげちゃお」
そう言ってシアンに餌をあげた。
シアンは嬉しそうに両手をすりすりとこすって餌を受け取る。
「あら、ありがとうって事かしら? かわいいじゃない」
「これをね、もっと上手く躍らせたいんだよね」
「え? もっと上手くなるの?」
「理論上は世界一上手く踊れてもおかしくないよ。だってAIだもん」
「え~!?」
「美奈ちゃんたちのサークルはダンスサークルだろ、ちょっと何か見本を見せてやって欲しいんだよね」
「見本って……私に踊れって言うの?」
「いやいや、スマホで動画とか見せてやって欲しいんだよね、何をどう見せたらいいか俺良く分からんので」
「ふーん、盆踊りの次ねぇ……ソウルダンス?」
そう言いながら美奈ちゃんは、スマホでソウルダンスの動画を検索してシアンの前に置いた。
リズミカルに軽く腰を落としながら足を開いて右行って左行って、手はクラップ。
音楽も流していい感じだ。
シアンは警戒して草むらに隠れてしまったが……スマホをじっと見ている。興味はあるようだ。
さて、どうなるかな~?
動画を繰り返し再生していると、音楽のリズムに歩みを合わせながら草むらから恐る恐る出てきた。
「お、音楽には合わせてるね~」
俺が感心してると、
「ビビってないで踊りなさいよ!」
と、美奈ちゃんの檄が飛ぶ。いやちょっと初見で踊れは無理だろう。
そのうちに身体を左右に振り始めた。
「お、いいぞ、盆踊り!」
美奈ちゃんは嬉しそうだ。
さらに見ていると今度はステップを踏み始めた。
「おー、いいねいいね!」
そう言いながら美奈ちゃんも踊り始めてしまった。
「シアン! こうよ! こう!」
美奈ちゃんはリズミカルに左右に重心を移しながら足をシュッシュと伸ばし、肩を上手く使いながら腕を回し、収める。
「おー、さすが! 動きのキレが違うね~!」
「あったりまえよ!」
調子が出て来たのか足をクロスさせて本格的に踊り始めちゃう美奈ちゃん。
思わず見入ってしまったが、ふとシアンを見ると……踊ってる。
なんと、美奈ちゃんの踊りをコピーしてるのだ。
いや、これはすごい……。
俺にも踊れないぞ、こんなの……。
確かに動きはぎこちないがちゃんと踊れてる。
これを初見でコピーとか、シアンのポテンシャルの高さに思わず脱帽である。
「ハハッ! やるじゃんシアン! じゃ、これはどうかな!」
そう言って今度は足をくねくねさせながら複雑なステップを入れてきた。
負けじとそれをコピーするシアン。
なんだよ、そこまでついて行けるのか……。
美奈ちゃんはムキになって、
「次はこれよ! ズールスピン!」
「あ! 床はダメ!」
俺の制止も聞かずに今度は床を使ってズールスピン。
グルリと1回転目は決まったものの、2回転目でそのままジオラマの壁にガン!と衝突。
「オゥフ!」
喚きながら反動で俺の方にゴロゴロ転がってくる美奈ちゃん。
「危ない!」
俺は華麗にジャンプで回避!
しかし着地点にシアンの餌が……。
「グアッ!」
仰向けの美奈ちゃんの上に覆いかぶさるように倒れ……。
しかし、ガッシリと腕立て状態で衝突は回避!
俺の真下でハァハァと荒い息を立てて紅潮する美奈ちゃんと目が合った。
ぷっくりとした美味しそうな唇がゆっくりと動いている。
キスしたくなる衝動に襲われ……
イカンイカン!
俺は煩悩を振り切り、立ち上がって、美奈ちゃんを優しく引き起こした。
美奈ちゃんはハァハァ言いながら服に着いた埃をはらう。
「大丈夫? いいダンスだったよ」
冷静を装ってそう声をかけると美奈ちゃんは不機嫌そうにこっちを睨んだ。
あれ? 何か俺マズい事した?
「今日はセクハラじゃないよね?」
そう言ってにっこりと笑ったら、美奈ちゃんはキッと睨んで、俺の頬を軽くはたいた。
「意気地なし!」
そう言って美奈ちゃんはドアを『バタン!』と乱暴に閉めて出て行ってしまった。
「え?」
俺は突然の事に何があったか分からず、はたかれた左の頬をさすりながらポカンとしていた。
触ったら「セクハラ!」、我慢したら「意気地なし!」、無理ゲーじゃねーか!
一体どうなってんだ!
見るとシアンは、はたく真似をしている。
「そんなのコピーしなくていいんだよ!」
俺がそう言うとシアンはキョトンとして首をかしげた。
そして流れ続ける音楽に乗ってさっきの美奈ちゃんのダンスを踊り始めた。
おー、上手い上手い。
さっきに比べてぎこちなさが減ってる気がする。
小さな真っ白なマウスが高度なダンスを軽やかに踊る――――
なんだか、見ててワクワクしてくるダンスだ……
これ、YouTubeで流したらきっと1億PV行くね。一夜にして世界のスターになるだろう。絶対そんな事できないけど。
俺は餌をシアンに出したが……
餌には目もくれずに踊っている。もはや餌が欲しいから踊っている訳じゃないのか。
初代シアンは決して踊らなかった事を考えると、リズミカルに身体を動かしたい欲求というのが生身の身体には宿るのだろう。
これは実は大切な知見だな……。
でも……、女心の知見の方が今は欲しいね。
キスした方が正解だったとか何そのトラップ……どれだけ我慢したと思ってんだ!
俺は、はたかれた頬をゆっくりさすりながらブルーになった。
日々、急速に進化していくシアン、実に頼もしい。
続いて餌を使った学習に移行する。
まず、餌の美味しさを教えた後、餌をその辺において自分で取って食べるように仕向けた。
最初は恐る恐る餌の匂いを嗅いで逡巡していたが、餌が美味しいというのが分かると積極的に餌探しをする様になった。
続いて手で餌をあげるようにしてみると人間を認識するようになった。
俺が飼育部屋に入ると走ってやってくるのだ。
さらに、餌をあげずに焦らすと手を上げたりお尻を振ったりダンスをする様になった。
実に可愛い……
そろそろほとぼりも冷めた頃だろうから、美奈ちゃんも実験部屋に呼んで餌やりをやらせてみた。
「なに? これをあげればいいの?」
美奈ちゃんは受け取った餌を恐る恐るシアンの前に出した。
シアンは美奈ちゃんの手の匂いをクンクンと嗅いだ後、餌を両手でつかむとカリカリと齧って食べた。
「きゃー! かわいぃー!」
美奈ちゃんは大喜びである。
「ちょっと餌を見せながら焦らしてごらん」
「えー、ちょっとかわいそう」
「まぁいいからやってごらん」
「ごめんね!」
そう言いながら美奈ちゃんは餌を見せながら、手に届かない距離で焦らした。
シアンはジャンプしたりして餌に飛びつくが、美奈ちゃんは上手くかわす。
「いや~なんかかわいそう」
「まぁ見ててごらん」
餌をとるのをあきらめたシアンは踊り始めた。
両手をあげながら右向いて左向いて、一度四つ足になってまた右、左
「あら、何か踊ってるわよ。下手くそな盆踊りだわ」
「そうそう、シアンは餌が欲しいというのを踊りで表現するんだ」
「へー、上手く踊れました! 餌あげちゃお」
そう言ってシアンに餌をあげた。
シアンは嬉しそうに両手をすりすりとこすって餌を受け取る。
「あら、ありがとうって事かしら? かわいいじゃない」
「これをね、もっと上手く躍らせたいんだよね」
「え? もっと上手くなるの?」
「理論上は世界一上手く踊れてもおかしくないよ。だってAIだもん」
「え~!?」
「美奈ちゃんたちのサークルはダンスサークルだろ、ちょっと何か見本を見せてやって欲しいんだよね」
「見本って……私に踊れって言うの?」
「いやいや、スマホで動画とか見せてやって欲しいんだよね、何をどう見せたらいいか俺良く分からんので」
「ふーん、盆踊りの次ねぇ……ソウルダンス?」
そう言いながら美奈ちゃんは、スマホでソウルダンスの動画を検索してシアンの前に置いた。
リズミカルに軽く腰を落としながら足を開いて右行って左行って、手はクラップ。
音楽も流していい感じだ。
シアンは警戒して草むらに隠れてしまったが……スマホをじっと見ている。興味はあるようだ。
さて、どうなるかな~?
動画を繰り返し再生していると、音楽のリズムに歩みを合わせながら草むらから恐る恐る出てきた。
「お、音楽には合わせてるね~」
俺が感心してると、
「ビビってないで踊りなさいよ!」
と、美奈ちゃんの檄が飛ぶ。いやちょっと初見で踊れは無理だろう。
そのうちに身体を左右に振り始めた。
「お、いいぞ、盆踊り!」
美奈ちゃんは嬉しそうだ。
さらに見ていると今度はステップを踏み始めた。
「おー、いいねいいね!」
そう言いながら美奈ちゃんも踊り始めてしまった。
「シアン! こうよ! こう!」
美奈ちゃんはリズミカルに左右に重心を移しながら足をシュッシュと伸ばし、肩を上手く使いながら腕を回し、収める。
「おー、さすが! 動きのキレが違うね~!」
「あったりまえよ!」
調子が出て来たのか足をクロスさせて本格的に踊り始めちゃう美奈ちゃん。
思わず見入ってしまったが、ふとシアンを見ると……踊ってる。
なんと、美奈ちゃんの踊りをコピーしてるのだ。
いや、これはすごい……。
俺にも踊れないぞ、こんなの……。
確かに動きはぎこちないがちゃんと踊れてる。
これを初見でコピーとか、シアンのポテンシャルの高さに思わず脱帽である。
「ハハッ! やるじゃんシアン! じゃ、これはどうかな!」
そう言って今度は足をくねくねさせながら複雑なステップを入れてきた。
負けじとそれをコピーするシアン。
なんだよ、そこまでついて行けるのか……。
美奈ちゃんはムキになって、
「次はこれよ! ズールスピン!」
「あ! 床はダメ!」
俺の制止も聞かずに今度は床を使ってズールスピン。
グルリと1回転目は決まったものの、2回転目でそのままジオラマの壁にガン!と衝突。
「オゥフ!」
喚きながら反動で俺の方にゴロゴロ転がってくる美奈ちゃん。
「危ない!」
俺は華麗にジャンプで回避!
しかし着地点にシアンの餌が……。
「グアッ!」
仰向けの美奈ちゃんの上に覆いかぶさるように倒れ……。
しかし、ガッシリと腕立て状態で衝突は回避!
俺の真下でハァハァと荒い息を立てて紅潮する美奈ちゃんと目が合った。
ぷっくりとした美味しそうな唇がゆっくりと動いている。
キスしたくなる衝動に襲われ……
イカンイカン!
俺は煩悩を振り切り、立ち上がって、美奈ちゃんを優しく引き起こした。
美奈ちゃんはハァハァ言いながら服に着いた埃をはらう。
「大丈夫? いいダンスだったよ」
冷静を装ってそう声をかけると美奈ちゃんは不機嫌そうにこっちを睨んだ。
あれ? 何か俺マズい事した?
「今日はセクハラじゃないよね?」
そう言ってにっこりと笑ったら、美奈ちゃんはキッと睨んで、俺の頬を軽くはたいた。
「意気地なし!」
そう言って美奈ちゃんはドアを『バタン!』と乱暴に閉めて出て行ってしまった。
「え?」
俺は突然の事に何があったか分からず、はたかれた左の頬をさすりながらポカンとしていた。
触ったら「セクハラ!」、我慢したら「意気地なし!」、無理ゲーじゃねーか!
一体どうなってんだ!
見るとシアンは、はたく真似をしている。
「そんなのコピーしなくていいんだよ!」
俺がそう言うとシアンはキョトンとして首をかしげた。
そして流れ続ける音楽に乗ってさっきの美奈ちゃんのダンスを踊り始めた。
おー、上手い上手い。
さっきに比べてぎこちなさが減ってる気がする。
小さな真っ白なマウスが高度なダンスを軽やかに踊る――――
なんだか、見ててワクワクしてくるダンスだ……
これ、YouTubeで流したらきっと1億PV行くね。一夜にして世界のスターになるだろう。絶対そんな事できないけど。
俺は餌をシアンに出したが……
餌には目もくれずに踊っている。もはや餌が欲しいから踊っている訳じゃないのか。
初代シアンは決して踊らなかった事を考えると、リズミカルに身体を動かしたい欲求というのが生身の身体には宿るのだろう。
これは実は大切な知見だな……。
でも……、女心の知見の方が今は欲しいね。
キスした方が正解だったとか何そのトラップ……どれだけ我慢したと思ってんだ!
俺は、はたかれた頬をゆっくりさすりながらブルーになった。
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