キリストにAI開発してもらったら、月が地球に落ちてきて人類滅亡の大ピンチ! 前代未聞、いまだかつてない物語があなたの人生すら変えてしまう ~ヴィーナシアンの花嫁~
9.100億円の攻防
モスコミュールも3杯目になると修一郎は元気を取り戻してきたようだ。
資本金はどうするか、どんなオフィスがいいか、あーだこーだ雑談していると修一郎の親父が現れた。
ネイビーのスリーピーススーツに太いストライプのネクタイをしている。
「あ、パパ、ここだよ!」
修一郎が呼ぶ。
親父さんは怪訝そうに我々を見回すと軽く会釈して席に着いた。
「パパ、紹介するよ、彼らはAIベンチャーの人達、僕も今度この会社のCFOになる事になったんだ」
「え? シュウちゃんがCFO!?」
親父さんはひどく驚いた感じで修一郎を見つめた。
「そうそう、この会社はなんとシンギュラリティを実現する世界初の会社になるんだ。これはビッグビジネスになるよ!」
修一郎、いいぞ、その調子だ。
親父さんは我々を見回した。
「初めまして、修一郎の父です。息子が何やらお世話になっているようで……」
「いえいえ、お世話になっているのはこちらの方ですよ。私は社長の神崎誠です。我々はAIを使って人類の未来を変えていこうという野心的なベンチャーです。ぜひ、御社とも連携してWin-Winの形を築ければと思っています」
「うーん、まぁ本当にWin-Winになれるならそれは歓迎だが、うちは貿易の会社なんでAIと言われても……」
「お父さん、今、御社は貿易業なので時価総額は1000億円程度にとどまっています。でも、AIの企業になったら時価総額は1兆円を超えますよ? とんでもないメリットではないですか?」
「1兆円!? ま、確かに今のAIブームでAIと名前が付けば何でも株価は勝手に上がっていく。でも、うちはしっかりと実業で伸びてきた会社、下手にAIの看板を掲げたら実業が続かないよ。そんな山師みたいな事は出来んよ」
親父さんはそう言って手を振り、顔をそむける。
「おっしゃる通りです。下手な看板を掲げたらそれこそ笑い物ですよ。でも大丈夫です、お父さん。AI部門で利益を出せる会社になれば誰も文句言わないですよ」
「うーん、そりゃ本当に利益がバンバン出ればそうだけど、そんな事できるの?」
親父さんは怪訝そうな顔で俺を見る。
俺はクリスをちらっと見ると、クリスはスマホを持ってお手洗いへ移動していった。
「それでは、うちのプロトタイプを見てもらいましょう」
俺はスマホを出すとチャットアプリを立ち上げた。
「今、プロトタイプのAIがサーバーで動いています。このアプリで自由に呼びかける事ができるようになってます。何かAIに聞いてみたい事はありますか?」
「え? 何でもいいの?」
「森羅万象何でもOKですよ!」
「じゃぁ、うちのカミさんの旧姓は? あ、マスター、いつもの奴!」
「聞いてみましょう」
『Makoto:田中修司の妻の旧姓は何ですか』
『Cyan:浜崎です』
スマホを覗き込んでいた親父さんの顔色が変わる。
「個人情報が漏れてやがる……。じゃ、うちの会社で一番悪い奴は誰か聞いてくれ」
『Makoto:太陽興産で一番悪い人は誰ですか』
『Cyan:宮崎隼人です。3億円横領しています。』
親父さんの顔色が変わった。
「え? あの宮崎が横領? そんなバカな! いい加減な事言うんじゃないよ! 彼がどれだけ我が社に貢献したか分かってるのか! 証拠出してみろ証拠! これは名誉棄損だぞ!」
なんだか本気で怒っている……。クリス、ストレートすぎないか……。
「た、確かに証拠は要りますね、聞いてみます」
『Makoto:横領の証拠を教えてください』
『Cyan:匯鼎騰邦集団の李董事長から発注の見返りにリベートを毎月1000万円奥さんの口座で受け取っています。口座を調べればわかります。』
親父さんは固まってしまった。
「匯鼎騰邦の李さんなら知っている……。確かに担当は宮崎だが……」
親父さんは携帯で電話をかけた。
「ワシだ、夜分遅くにすまない。お前匯鼎騰邦の李さんから金貰ってるって本当か?」
いやぁ何とストレートな、さすが社長! でも、なんか修羅場の予感がする……。
皆固唾を飲んで見守っている。
「おい!!!! そんな言い訳通ると思ってんのか! お前、それ犯罪だぞ! 俺の信頼を裏切りやがって!」
やっぱり……。
店内に響き渡る罵声。いたたまれない。
「なんでそんな事やったんだ! うん……。うん……。おまえさ~……いや、もういい……明日、しっかり話を聞かせてもらう」
親父さんは頭を抱え込んで動かなくなってしまった。
クリス、ちょっとやり過ぎじゃないか?
たまらず修一郎が声をかける。
「パパ、大丈夫……?」
親父さんはゆっくりと体を起こすと、椅子の背もたれにぐったりともたれかかって憔悴している。
「失礼いたします。マッカラン、ロックでございます」
そう言いながらバーテンダーがグラスを置いたが、親父さんの様子を見て、
「お水、お持ちしましょうか?」
「……。 あ、いや、大丈夫」
そう言いながらマッカランを一気に飲み干した。
「今度はストレートをダブルでくれ」
「かしこまりました」
親父さんは焦点の合わない目で、
「俺は宮崎の不正を見抜けなかった。でも、おたくのAIは一瞬で見抜いた。凄いというのは良く分かった……」
「恐れ入ります」
クリスがさり気なくトイレから帰ってきた。
親父さんはポーチから電子タバコを出すとスイッチを入れた。
「で、うちに何を期待してるの?」
「我々には資金力が無いので出資をしていただきたい」
「幾ら?」
「100億円です」
ハッハッハー!
親父さんの大きな声が部屋中に響く。
「100億円! 大きく出たね!」
「御社の10%の規模の出資です。御社側からの取締役として修一郎君が就任します」
美味そうに大きく煙を吸うと俺の目を真っすぐに見た。
「それで、なんぼ儲かるんや?」
なぜここで関西弁?
「3年後、単月黒字を実現し、5年後の売り上げは1000億円、利益率は80%です」
親父さんは煙を吸いながら斜め上を見る。
「まぁ、さっきの一瞬だけで3億の価値があった訳だから、そんくらい行ってもおかしくはないな……。とは言え100億はなぁ……」
もう一押しである。
「実は他社ともお話しは有るんです。でも我々としては修一郎君と一緒にやりたいので是非御社にお願いしたいと考えています」
親父さんはこちらをジロっとにらむと、
「うーん、まぁうち以外にも興味持つ所はあるだろうね。シュウちゃん、お前どうなんだ?」
美奈ちゃんと何やらごそごそやり取りしていた修一郎は、いきなり呼ばれて背筋を伸ばす――――
「俺? あ、えーと、この人達、なんか凄いんだよ。あり得ない事やるんだ。そういう人達とチームを組めるのは凄いチャンスかなって」
まぁ、神様とチーム組めるチャンスなんて普通無いからな。
親父さんはまた美味そうに大きく煙を吸った。
そして何かを考えこんでいる。
おもむろに親父さんは膝をポンと叩いた
「いいでしょう、出しましょう。ただし、100億円なんて金すぐに用意なんてできないから、10分割、それで51%。それからおたくのAIでうちの事業伸ばす事。これでどうかね?」
なるほど……考えたな。様子を見ながら金を小出しにして最後は過半数を取って完全子会社化、ダメそうなら途中で切るつもりだ……。
とは言え何の実績もない所にいきなり10億円突っ込んでくれるんだからうちにとっても悪くない。
「クリス、美奈ちゃん、どうかな?」
ゴホッゴホッ
いきなりふられた美奈ちゃんが咳き込んでいる。
クリスは涼しい声で答える。
「…。社長にお任せします」
「わ、私も誠さんに任せるわ」
「わかりました! それではその条件でお願いします!」
私は右手を伸ばしてにこやかにいった。
「儲けさせてくれよ! シュウちゃんを頼んだよ!」
親父さんと固く固く握手をした。
ついに俺の『深層後継者計画』は神様と100億円を手にした。ここまでたった1日半、人生は動き始めたらジェットコースターの様に動き始める。しっかりと掴まってないと振り落とされてしまいそうだ。
資本金はどうするか、どんなオフィスがいいか、あーだこーだ雑談していると修一郎の親父が現れた。
ネイビーのスリーピーススーツに太いストライプのネクタイをしている。
「あ、パパ、ここだよ!」
修一郎が呼ぶ。
親父さんは怪訝そうに我々を見回すと軽く会釈して席に着いた。
「パパ、紹介するよ、彼らはAIベンチャーの人達、僕も今度この会社のCFOになる事になったんだ」
「え? シュウちゃんがCFO!?」
親父さんはひどく驚いた感じで修一郎を見つめた。
「そうそう、この会社はなんとシンギュラリティを実現する世界初の会社になるんだ。これはビッグビジネスになるよ!」
修一郎、いいぞ、その調子だ。
親父さんは我々を見回した。
「初めまして、修一郎の父です。息子が何やらお世話になっているようで……」
「いえいえ、お世話になっているのはこちらの方ですよ。私は社長の神崎誠です。我々はAIを使って人類の未来を変えていこうという野心的なベンチャーです。ぜひ、御社とも連携してWin-Winの形を築ければと思っています」
「うーん、まぁ本当にWin-Winになれるならそれは歓迎だが、うちは貿易の会社なんでAIと言われても……」
「お父さん、今、御社は貿易業なので時価総額は1000億円程度にとどまっています。でも、AIの企業になったら時価総額は1兆円を超えますよ? とんでもないメリットではないですか?」
「1兆円!? ま、確かに今のAIブームでAIと名前が付けば何でも株価は勝手に上がっていく。でも、うちはしっかりと実業で伸びてきた会社、下手にAIの看板を掲げたら実業が続かないよ。そんな山師みたいな事は出来んよ」
親父さんはそう言って手を振り、顔をそむける。
「おっしゃる通りです。下手な看板を掲げたらそれこそ笑い物ですよ。でも大丈夫です、お父さん。AI部門で利益を出せる会社になれば誰も文句言わないですよ」
「うーん、そりゃ本当に利益がバンバン出ればそうだけど、そんな事できるの?」
親父さんは怪訝そうな顔で俺を見る。
俺はクリスをちらっと見ると、クリスはスマホを持ってお手洗いへ移動していった。
「それでは、うちのプロトタイプを見てもらいましょう」
俺はスマホを出すとチャットアプリを立ち上げた。
「今、プロトタイプのAIがサーバーで動いています。このアプリで自由に呼びかける事ができるようになってます。何かAIに聞いてみたい事はありますか?」
「え? 何でもいいの?」
「森羅万象何でもOKですよ!」
「じゃぁ、うちのカミさんの旧姓は? あ、マスター、いつもの奴!」
「聞いてみましょう」
『Makoto:田中修司の妻の旧姓は何ですか』
『Cyan:浜崎です』
スマホを覗き込んでいた親父さんの顔色が変わる。
「個人情報が漏れてやがる……。じゃ、うちの会社で一番悪い奴は誰か聞いてくれ」
『Makoto:太陽興産で一番悪い人は誰ですか』
『Cyan:宮崎隼人です。3億円横領しています。』
親父さんの顔色が変わった。
「え? あの宮崎が横領? そんなバカな! いい加減な事言うんじゃないよ! 彼がどれだけ我が社に貢献したか分かってるのか! 証拠出してみろ証拠! これは名誉棄損だぞ!」
なんだか本気で怒っている……。クリス、ストレートすぎないか……。
「た、確かに証拠は要りますね、聞いてみます」
『Makoto:横領の証拠を教えてください』
『Cyan:匯鼎騰邦集団の李董事長から発注の見返りにリベートを毎月1000万円奥さんの口座で受け取っています。口座を調べればわかります。』
親父さんは固まってしまった。
「匯鼎騰邦の李さんなら知っている……。確かに担当は宮崎だが……」
親父さんは携帯で電話をかけた。
「ワシだ、夜分遅くにすまない。お前匯鼎騰邦の李さんから金貰ってるって本当か?」
いやぁ何とストレートな、さすが社長! でも、なんか修羅場の予感がする……。
皆固唾を飲んで見守っている。
「おい!!!! そんな言い訳通ると思ってんのか! お前、それ犯罪だぞ! 俺の信頼を裏切りやがって!」
やっぱり……。
店内に響き渡る罵声。いたたまれない。
「なんでそんな事やったんだ! うん……。うん……。おまえさ~……いや、もういい……明日、しっかり話を聞かせてもらう」
親父さんは頭を抱え込んで動かなくなってしまった。
クリス、ちょっとやり過ぎじゃないか?
たまらず修一郎が声をかける。
「パパ、大丈夫……?」
親父さんはゆっくりと体を起こすと、椅子の背もたれにぐったりともたれかかって憔悴している。
「失礼いたします。マッカラン、ロックでございます」
そう言いながらバーテンダーがグラスを置いたが、親父さんの様子を見て、
「お水、お持ちしましょうか?」
「……。 あ、いや、大丈夫」
そう言いながらマッカランを一気に飲み干した。
「今度はストレートをダブルでくれ」
「かしこまりました」
親父さんは焦点の合わない目で、
「俺は宮崎の不正を見抜けなかった。でも、おたくのAIは一瞬で見抜いた。凄いというのは良く分かった……」
「恐れ入ります」
クリスがさり気なくトイレから帰ってきた。
親父さんはポーチから電子タバコを出すとスイッチを入れた。
「で、うちに何を期待してるの?」
「我々には資金力が無いので出資をしていただきたい」
「幾ら?」
「100億円です」
ハッハッハー!
親父さんの大きな声が部屋中に響く。
「100億円! 大きく出たね!」
「御社の10%の規模の出資です。御社側からの取締役として修一郎君が就任します」
美味そうに大きく煙を吸うと俺の目を真っすぐに見た。
「それで、なんぼ儲かるんや?」
なぜここで関西弁?
「3年後、単月黒字を実現し、5年後の売り上げは1000億円、利益率は80%です」
親父さんは煙を吸いながら斜め上を見る。
「まぁ、さっきの一瞬だけで3億の価値があった訳だから、そんくらい行ってもおかしくはないな……。とは言え100億はなぁ……」
もう一押しである。
「実は他社ともお話しは有るんです。でも我々としては修一郎君と一緒にやりたいので是非御社にお願いしたいと考えています」
親父さんはこちらをジロっとにらむと、
「うーん、まぁうち以外にも興味持つ所はあるだろうね。シュウちゃん、お前どうなんだ?」
美奈ちゃんと何やらごそごそやり取りしていた修一郎は、いきなり呼ばれて背筋を伸ばす――――
「俺? あ、えーと、この人達、なんか凄いんだよ。あり得ない事やるんだ。そういう人達とチームを組めるのは凄いチャンスかなって」
まぁ、神様とチーム組めるチャンスなんて普通無いからな。
親父さんはまた美味そうに大きく煙を吸った。
そして何かを考えこんでいる。
おもむろに親父さんは膝をポンと叩いた
「いいでしょう、出しましょう。ただし、100億円なんて金すぐに用意なんてできないから、10分割、それで51%。それからおたくのAIでうちの事業伸ばす事。これでどうかね?」
なるほど……考えたな。様子を見ながら金を小出しにして最後は過半数を取って完全子会社化、ダメそうなら途中で切るつもりだ……。
とは言え何の実績もない所にいきなり10億円突っ込んでくれるんだからうちにとっても悪くない。
「クリス、美奈ちゃん、どうかな?」
ゴホッゴホッ
いきなりふられた美奈ちゃんが咳き込んでいる。
クリスは涼しい声で答える。
「…。社長にお任せします」
「わ、私も誠さんに任せるわ」
「わかりました! それではその条件でお願いします!」
私は右手を伸ばしてにこやかにいった。
「儲けさせてくれよ! シュウちゃんを頼んだよ!」
親父さんと固く固く握手をした。
ついに俺の『深層後継者計画』は神様と100億円を手にした。ここまでたった1日半、人生は動き始めたらジェットコースターの様に動き始める。しっかりと掴まってないと振り落とされてしまいそうだ。
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