♗CHECK♝
第23話 会敵
〜子の刻〜
クロが待ち合わせの場所に到着した時にはすでに4人の討伐隊員が揃っていた。4人は兜に甲冑、この辺りでは珍しい全身鎧の侍のようだ。
「あのガキが今回の助っ人か?おいおい大丈夫かよ」
「おい、少し静かにしろ。お前が主のおっしゃっていた子供だな。こいつがお前の武器だ。大事に使えよ。」
隊員の1人がクロに武器を手渡した。どうやらあまり歓迎されてはいないみたいだ。
(こいつらの装備からみてまず間違いなく城の人間だろう・・・となるとあの男は城の人間で間違いないな)
「それはそうと武器はこれだけか?」
「どこに不満がある?その刀はそれなりの業物だぞ」
「そうじゃなくてもう1本はどこだ?」
「ハッ、笑わせるんじゃねぇ。ガキに二刀流はまだはぇっての。大人しく真剣のありがたみを感じてろ。」
「そういうことだ。それに2本支給との指示は受けていない。お前は俺たちの援護をしてくれればそれでいい。」
「別に怖かったら帰ってもいいんだぜ。まぁその時は報酬はなしだがな、ははは」
どうやら先にあの世に送るのはこいつらのようだ。
「あまり子供をいじめてやるなよ。」
善人気取りの男が仲裁に入る。
「なんでもいいけど、ちゃっちゃと終わらせて帰ろうぜ。俺もう眠いわ隊長さんよぉ」
「そうだな。それでは行くとしよう」
構成は隊長と呼ばれる大柄な男とひょろっとしたお調子者それに平均的な体型の偽善者とめんどくさがりにオレを含めた5人。
(まぁ、あまり期待出来るような奴らじゃないが魔物もそう強くはないはず。心配することもねぇか)
クロはそんなことを考えながら武器の刃を確かめては腰に携えた。
ー森の入り口ー
(この森に入るのもかれこれ5年ぶりか)
先頭に隊長その後ろに3人そのまた後ろにクロといった陣形のまま彼らは森に足を踏み入れた。
「何もいませんね、隊長」
「そのようだな。もう少し先に行ってみよう」
(こいつら・・・気づいてないのか?)
クロは1人森に不穏な空気を感じていた。その異変は少し進んだ先で確かなものとなる。
「待て!何かくる!」
「ただの犬ですね」
「よく見ろ!ありゃ狼だ!」
「各員戦闘準備!」
全員武器を構える。狼は凶暴ではあるもののそこまでの強さはないFランクの魔物だ。手こずるはずもない。クロは後ろでボーッと見ていた。1人様子のおかしいのが目についた。
(おい、偽善者のやつ震えてないか?まさか城の兵士のくせに実戦は初めてなのか?)
クロの言う偽善者が少し出遅れたもののあっさり方はついた。
それもそのはず、狼は襲いかかってきたというよりも何かから逃げてきたような様子だった。
だが彼らがそれに気づくことはなかった。それから幾度か魔物と遭遇したがどれもFランクの雑魚ばかりだった。
それも決まってこちらと戦おうとはせずに必死に何かから逃げようとするものばかり。
(何か嫌な予感がする・・・)
「隊長、そろそろ戻りませんか」
偽善者が提案する。
(異変に気付いたのか?いやそんなわけないか)
彼は小刻みに体を震わせている。
「それは了承できん。まだ森の調査は完了していない。よって引き続き調査を継続する。」
「怖いならガキと一緒に後ろで俺の勇姿を目に焼き付けときな」
「・・・そんなわけにはいかないよ」
「では調査を再開する。」
(どうやらこいつらは森の調査という名目でここにいるみたいだな。目的は魔物の討伐じゃないのか?)
カサッ
草が揺れる。
「今何か聞こえなかったか?」
「いや、何も」
カサカサッ
確かになにかいる。その何かから確かに感じる敵意。どうやらさっきまでの魔物とは違うようだ。そういえばこの辺りだっただろうか。5年前、あの魔物と遭遇したのは。
カサッ・・・ヒュッ!
何かが隊長目掛けて飛びかかる。
「ぐわっ!」
「猿だ!くそ、隊長から離れろ!」
人面猿。全長160cm程度の人喰い猿だ。俊敏な動きと鋭い爪で獲物を仕留めるEランクの魔物。
これまで一度も刀を抜かなかったクロが今回はすでに戦闘態勢だった。今までの戦闘で隊員のだいたいの強さはわかった。その結果どうやら今回は見ているだけとはいかないみたいだ。
「こいつはどうやら簡単にはいかないようだな。めんどくせぇ」
隊員の頑張りと甲冑のおかげか隊長はなんとか無事みたいだ。
「不覚を取ったがお前たち気を引き締めろ!油断せずかかれ!」
どうやら作戦等はないみたいだ。これじゃEランクのあの猿は倒せないだろう。少し様子を見たところ思った通り劣勢だ。
(仕方ない。怪我人が出ないうちに助けるか)
「おい、魔物から離れろ!」
「るせぇ!ガキは黙って見てろ!」
まぁ、そうなるはな。
「まあいい、死にたいなら勝手にしろ」
「チッ」
状況を打開する術のない4人は仕方なく敵と距離を取った。
「それとお前らは・・・黙って見てろ」
まさかの待機命令。
「な、何を言っている。我々4人でも厳しいのだぞ!」
誰だってそう思うだろう。見た限りの強さで言えば隊長>調子乗り≒めんどくさがり>偽善者、そして最後にクロ。が普通の答えだろう。
だが現実はクロ>隊長である。それもこの差はとてつもなく大きかった。
少なくとも現状全力を出せないクロ相手に4人がかりで傷1つつけられないくらいの差はあった。
「もう一度言う。黙って見てろ。」
人面猿もどうやらクロを危険視しているようで互いににらみ合ったまま動かない。
「キキッ」
「そうだ、オレだけ見てろクソ猿。じゃないと一瞬で・・・死ぬことになるぜ!」
動き出したのはクロだった。秘剣流の基本の型である突きを勢いのまま繰り出す。当然素早い猿を捉えるのはクロでも難しい。
「なっ!?」
寸前のところでかわされてしまった。それと同時に鋭い爪がクロに牙をむく。
「ウキキッ」
「なんてな、秘剣一刀流 壱の型・・・睦月(むつき) 」
突き出した刀をそのまま人面猿の腕目掛けて切り上げた。腕と血飛沫が宙を舞う。痛みにもがく時間さえクロは与えなかった。
「秘剣一刀流 弐の型 如月(きさらぎ)」
鮮やかな2連斬り。クロは一瞬で同じ箇所を2回斬りつけていた。彼らとの違いの1つはこの秘剣流。洗練された流派に対し闇雲に鍛練を繰り返すだけの剣術が決定的な差であった。
「嘘・・・だろ」
さっきまで威勢のよかったお調子者がすっかりこの通り。
「お前は一体・・・」
「おいおいオレは今本調子じゃないんだ、この程度で驚かれても困る」
クロは呆れながら武器をしまう。
「・・・バケモノだ」
偽善者はすっかりクロを怖がっていた。無論この力を頼もしく感じるのはそう遠くない未来のことだ。
「どうした、まだ先にすすむんだよな?」
すっかり陣形は変わってクロ、その後ろに4人の大人となんとも情け無い光景だった。あれからも何度か魔物と遭遇しているが奥に進むにつれて少しずつ強い魔物が増えてきていた。
(けっこう奥まで来たがこいつらの状況からするとそろそろ限界のはず・・・そろそろ切り上げたほうが良さそうだな)
「おい、そろそろ戻ったほうがいいんじゃないか?」
「何を言ってる、お前がいればもう少し先に進んでも余裕じゃないか」
どうやら完全にクロまかせのようだ。
(冗談じゃない、こんな荷物を背負って何のメリットがある?)
「おい、あれを見ろ」
お調子者が指を指した先には大きな何かが木に巻きついていた。
「蛇だ!大蛇だぁ!」
偽善者は完全にパニックだ。これはまずいとクロも身構える。すると、さっきからあまり動じないめんどくさがりが口を開く。
「よく見ろ、あの蛇の体おかしくないか?」
この4人の中で1番落ち着いていた。
(こいつ案外冷静だな。)
クロ達は警戒しながら蛇に近づいて見た。蛇は見事に体半分を何か鋭利なもので切り刻まれていた。これにはクロも驚きを隠せなかった。
(こいつは確か、毒蝮!猛毒持ちのDランク相当の魔物のはず。こんな芸当ができるのは兄上か姉上相当の手練れだろう。そんな人間はそうそういない。となると・・・)
クロはその切り口から人の仕業とばかり考えていたがその直後1つの可能性が頭をよぎった。
(奴らは2匹で行動する・・・)
5年前クロ達を襲ったあの魔物は今日まで確認されたのはあの1匹のみ。つまり・・・
「なんだ・・・こいつは・・・」
偽善者の男が恐怖で腰を抜かし一点を見つめていた。全員がそれに気づくのにそう時間はかからなかった。どうやらクロの予感が当たってしまった。
(やはり・・・)
「ソード・・・ベア・・・」
クロが待ち合わせの場所に到着した時にはすでに4人の討伐隊員が揃っていた。4人は兜に甲冑、この辺りでは珍しい全身鎧の侍のようだ。
「あのガキが今回の助っ人か?おいおい大丈夫かよ」
「おい、少し静かにしろ。お前が主のおっしゃっていた子供だな。こいつがお前の武器だ。大事に使えよ。」
隊員の1人がクロに武器を手渡した。どうやらあまり歓迎されてはいないみたいだ。
(こいつらの装備からみてまず間違いなく城の人間だろう・・・となるとあの男は城の人間で間違いないな)
「それはそうと武器はこれだけか?」
「どこに不満がある?その刀はそれなりの業物だぞ」
「そうじゃなくてもう1本はどこだ?」
「ハッ、笑わせるんじゃねぇ。ガキに二刀流はまだはぇっての。大人しく真剣のありがたみを感じてろ。」
「そういうことだ。それに2本支給との指示は受けていない。お前は俺たちの援護をしてくれればそれでいい。」
「別に怖かったら帰ってもいいんだぜ。まぁその時は報酬はなしだがな、ははは」
どうやら先にあの世に送るのはこいつらのようだ。
「あまり子供をいじめてやるなよ。」
善人気取りの男が仲裁に入る。
「なんでもいいけど、ちゃっちゃと終わらせて帰ろうぜ。俺もう眠いわ隊長さんよぉ」
「そうだな。それでは行くとしよう」
構成は隊長と呼ばれる大柄な男とひょろっとしたお調子者それに平均的な体型の偽善者とめんどくさがりにオレを含めた5人。
(まぁ、あまり期待出来るような奴らじゃないが魔物もそう強くはないはず。心配することもねぇか)
クロはそんなことを考えながら武器の刃を確かめては腰に携えた。
ー森の入り口ー
(この森に入るのもかれこれ5年ぶりか)
先頭に隊長その後ろに3人そのまた後ろにクロといった陣形のまま彼らは森に足を踏み入れた。
「何もいませんね、隊長」
「そのようだな。もう少し先に行ってみよう」
(こいつら・・・気づいてないのか?)
クロは1人森に不穏な空気を感じていた。その異変は少し進んだ先で確かなものとなる。
「待て!何かくる!」
「ただの犬ですね」
「よく見ろ!ありゃ狼だ!」
「各員戦闘準備!」
全員武器を構える。狼は凶暴ではあるもののそこまでの強さはないFランクの魔物だ。手こずるはずもない。クロは後ろでボーッと見ていた。1人様子のおかしいのが目についた。
(おい、偽善者のやつ震えてないか?まさか城の兵士のくせに実戦は初めてなのか?)
クロの言う偽善者が少し出遅れたもののあっさり方はついた。
それもそのはず、狼は襲いかかってきたというよりも何かから逃げてきたような様子だった。
だが彼らがそれに気づくことはなかった。それから幾度か魔物と遭遇したがどれもFランクの雑魚ばかりだった。
それも決まってこちらと戦おうとはせずに必死に何かから逃げようとするものばかり。
(何か嫌な予感がする・・・)
「隊長、そろそろ戻りませんか」
偽善者が提案する。
(異変に気付いたのか?いやそんなわけないか)
彼は小刻みに体を震わせている。
「それは了承できん。まだ森の調査は完了していない。よって引き続き調査を継続する。」
「怖いならガキと一緒に後ろで俺の勇姿を目に焼き付けときな」
「・・・そんなわけにはいかないよ」
「では調査を再開する。」
(どうやらこいつらは森の調査という名目でここにいるみたいだな。目的は魔物の討伐じゃないのか?)
カサッ
草が揺れる。
「今何か聞こえなかったか?」
「いや、何も」
カサカサッ
確かになにかいる。その何かから確かに感じる敵意。どうやらさっきまでの魔物とは違うようだ。そういえばこの辺りだっただろうか。5年前、あの魔物と遭遇したのは。
カサッ・・・ヒュッ!
何かが隊長目掛けて飛びかかる。
「ぐわっ!」
「猿だ!くそ、隊長から離れろ!」
人面猿。全長160cm程度の人喰い猿だ。俊敏な動きと鋭い爪で獲物を仕留めるEランクの魔物。
これまで一度も刀を抜かなかったクロが今回はすでに戦闘態勢だった。今までの戦闘で隊員のだいたいの強さはわかった。その結果どうやら今回は見ているだけとはいかないみたいだ。
「こいつはどうやら簡単にはいかないようだな。めんどくせぇ」
隊員の頑張りと甲冑のおかげか隊長はなんとか無事みたいだ。
「不覚を取ったがお前たち気を引き締めろ!油断せずかかれ!」
どうやら作戦等はないみたいだ。これじゃEランクのあの猿は倒せないだろう。少し様子を見たところ思った通り劣勢だ。
(仕方ない。怪我人が出ないうちに助けるか)
「おい、魔物から離れろ!」
「るせぇ!ガキは黙って見てろ!」
まぁ、そうなるはな。
「まあいい、死にたいなら勝手にしろ」
「チッ」
状況を打開する術のない4人は仕方なく敵と距離を取った。
「それとお前らは・・・黙って見てろ」
まさかの待機命令。
「な、何を言っている。我々4人でも厳しいのだぞ!」
誰だってそう思うだろう。見た限りの強さで言えば隊長>調子乗り≒めんどくさがり>偽善者、そして最後にクロ。が普通の答えだろう。
だが現実はクロ>隊長である。それもこの差はとてつもなく大きかった。
少なくとも現状全力を出せないクロ相手に4人がかりで傷1つつけられないくらいの差はあった。
「もう一度言う。黙って見てろ。」
人面猿もどうやらクロを危険視しているようで互いににらみ合ったまま動かない。
「キキッ」
「そうだ、オレだけ見てろクソ猿。じゃないと一瞬で・・・死ぬことになるぜ!」
動き出したのはクロだった。秘剣流の基本の型である突きを勢いのまま繰り出す。当然素早い猿を捉えるのはクロでも難しい。
「なっ!?」
寸前のところでかわされてしまった。それと同時に鋭い爪がクロに牙をむく。
「ウキキッ」
「なんてな、秘剣一刀流 壱の型・・・睦月(むつき) 」
突き出した刀をそのまま人面猿の腕目掛けて切り上げた。腕と血飛沫が宙を舞う。痛みにもがく時間さえクロは与えなかった。
「秘剣一刀流 弐の型 如月(きさらぎ)」
鮮やかな2連斬り。クロは一瞬で同じ箇所を2回斬りつけていた。彼らとの違いの1つはこの秘剣流。洗練された流派に対し闇雲に鍛練を繰り返すだけの剣術が決定的な差であった。
「嘘・・・だろ」
さっきまで威勢のよかったお調子者がすっかりこの通り。
「お前は一体・・・」
「おいおいオレは今本調子じゃないんだ、この程度で驚かれても困る」
クロは呆れながら武器をしまう。
「・・・バケモノだ」
偽善者はすっかりクロを怖がっていた。無論この力を頼もしく感じるのはそう遠くない未来のことだ。
「どうした、まだ先にすすむんだよな?」
すっかり陣形は変わってクロ、その後ろに4人の大人となんとも情け無い光景だった。あれからも何度か魔物と遭遇しているが奥に進むにつれて少しずつ強い魔物が増えてきていた。
(けっこう奥まで来たがこいつらの状況からするとそろそろ限界のはず・・・そろそろ切り上げたほうが良さそうだな)
「おい、そろそろ戻ったほうがいいんじゃないか?」
「何を言ってる、お前がいればもう少し先に進んでも余裕じゃないか」
どうやら完全にクロまかせのようだ。
(冗談じゃない、こんな荷物を背負って何のメリットがある?)
「おい、あれを見ろ」
お調子者が指を指した先には大きな何かが木に巻きついていた。
「蛇だ!大蛇だぁ!」
偽善者は完全にパニックだ。これはまずいとクロも身構える。すると、さっきからあまり動じないめんどくさがりが口を開く。
「よく見ろ、あの蛇の体おかしくないか?」
この4人の中で1番落ち着いていた。
(こいつ案外冷静だな。)
クロ達は警戒しながら蛇に近づいて見た。蛇は見事に体半分を何か鋭利なもので切り刻まれていた。これにはクロも驚きを隠せなかった。
(こいつは確か、毒蝮!猛毒持ちのDランク相当の魔物のはず。こんな芸当ができるのは兄上か姉上相当の手練れだろう。そんな人間はそうそういない。となると・・・)
クロはその切り口から人の仕業とばかり考えていたがその直後1つの可能性が頭をよぎった。
(奴らは2匹で行動する・・・)
5年前クロ達を襲ったあの魔物は今日まで確認されたのはあの1匹のみ。つまり・・・
「なんだ・・・こいつは・・・」
偽善者の男が恐怖で腰を抜かし一点を見つめていた。全員がそれに気づくのにそう時間はかからなかった。どうやらクロの予感が当たってしまった。
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