♗CHECK♝
第16話 邂逅
「ようやくこの時が来た。我が力存分に払え!」
(ん?ここは・・・?周りが真っ白だ・・・)
ただ1人、シロは見渡す限り真っ白な空間に佇んでいた。
(さっきまで稽古場にいたはずなのに。確か紅蓮兄さんの攻撃を防いで・・・あれ?それからどうなったんだっけ?・・・もしかして死んだのかな?)
「それにしても、あともう少しで勝てると思ったのになぁ。急にあの仮面が出てきたと思ったら一瞬であの世行きだなんて・・・あんなの反則でしょ。」
シロは1人愚痴をこぼす。すると後ろから聞き覚えのある声がする。
「無理もない、あの『酒呑童子(しゅてんどうじ)』の力を持つ小僧が相手だったのだからな、それにしても我を無理矢理呼び出すとはなかなか面白いことをする。」
振り返るとすぐそこに右目の部分だけくり抜かれた仮面の人物が立っていた。
「待ってよ!何その酒呑なんとかって、それにボクはまだ生きてるの?それとここはどこなの?」
「やれやれ質問の多いやつだ。酒呑童子・・・『三大妖怪』と呼ばれる内の一匹で・・・最強の鬼だ。」
「最強の鬼って・・・鬼って人が戦って勝てるもんじゃないよね?それの最強って・・・想像もつかないや」
「あとの2つの質問はまとめて答えてやろう。貴様はまだかろうじて生きている。ただ、もう死ぬ寸前だかな。ここはいわゆる走馬灯のようなものだ。普通ならここで今までの人生で経験したことや見たことのある人や景色などが一瞬にして思い出す場所なんだがな。どうやらまだ死を実感していないようだ。」
「なるほど、これでボクがここにいる理由は分かった。あとはボクが死ぬってことを受け入れれば晴れてあの世に行けるってことだね!」
「なんだ?死にたいのか?」
「べつに死にたいわけじゃないけど、それ以外に選択肢があるの?」
「そのために我がここにいる。」
「それでボクはどうすればいいの?」
「契約だ・・・」
「!!」
聞き覚えのある声・・・ようやくその正体に気づく。
「君は夢に出てくる・・・」
「ようやく気づいたか、それとあれは夢ではなく我と貴様の意識を共有していたのだ。それにお前術が使えないだろ?」
「そうなんだ、どうやらボクには忍術の才能はないみたい」
「あれは貴様の中に我に対する封印があるからだ。だが最近になってようやく封印が弱まってきたのでな。干渉を試みたというわけだ」
「どおりで最近頻繁に起こるわけだ。じゃあ今なら忍術が使えるってこと?」
「あくまで可能性の話だ。貴様に忍術の才能があるかは知らん。」
「ふーん、まぁいっか。それで契約ってどうすればいいの?」
「なに簡単なことだ。貴様の身体の一部と引き換えに我の一部を与える・・・ただそれだけだ。」
「なんかちょっと怖いね、でももうすぐ死ぬ命だし好きなところ持っていってかまわないよ」
「ほう、いい心がけだが、今回は必要ない。代価はすでにもらっている、5年前にな。」
「5年前?」
「覚えてないのか?貴様が魔物に襲われた時だ」
「その時の記憶あんまりないんだ、ボクが魔物に襲われたそうになってそれをクロがかばって怪我をして・・・気がついたら魔物は氷漬けになってて・・・ってまさか!?」
「まぁ無理もない、あの時は仮契約だった。まだ幼かったこともあって一瞬しか力を使えなかったんでな。」
「そうだったんだ、それでどこを支払ったの?」
「右目だ」
「右目?べつに普通だけどなぁ」
「力を使わなければ普段となにも変わらない。ただしこの力を使いすぎるとどんどん身体を侵食していく。」
「侵食が進むとどうなるの?」
「身体に異常をきたし、人には戻れなくなる。そして最悪の場合・・・死ぬ」
「なるほど、それにしても見かけによらず親切だよね、何か企んでるのかな?」
「企んでるか・・・そういう見方もあるかもしれんが我の目的を果たすには貴様の力を借りる必要があるだけだ」
仮面の男は右手を差し出した。
「そうなの?またいつかその目的について聞かせてよ!今は契約で頭いっぱいだから」
シロも左手を差し出す。
「おかしなやつだ、貴様がこれからの戦いで生き残ることが出来れば話す機会もあるかもしれんな」
「楽しみにしてるよ。とりあえず今日を生き抜くことだけ考える。」
「これで契約完了だ。最後に1つ問おう、貴様は何のために戦う?」
今までにないくらいの力が身体に溢れてくる。
「そうだね・・・深く考えたこともないや」
「そうか・・・今はそれでもかまわん。また時が来たら尋ねるとしよう」
「そういえばまだ君の名前を聞いてなかったね」
「我の名は・・・」
轟音が鳴り響いて聞き取れなかった。ちょうど紅蓮が武器を振り下ろしていた。あたりは砂煙で真っ白で何も見えなかった。
(確かに手応えはあった。これで終わり・・・か。)
紅蓮は武器を持ち上げる。が、上がらない。みるみる煙が晴れていく。そこには目を瞑り左手で武器を受け止めているシロの姿があった。シロは右手で右目を抑えていた。
ー稽古場の屋根の上ー
ピクッ!
身の毛もよだつような殺気を感じた。だがそれはすぐに収まった。クロにはその殺気が少し懐かしく思えた。
「フン、ようやくか。この気配・・・」
クロは少し笑みを浮かべてはまた空を見上げていた。
(ん?ここは・・・?周りが真っ白だ・・・)
ただ1人、シロは見渡す限り真っ白な空間に佇んでいた。
(さっきまで稽古場にいたはずなのに。確か紅蓮兄さんの攻撃を防いで・・・あれ?それからどうなったんだっけ?・・・もしかして死んだのかな?)
「それにしても、あともう少しで勝てると思ったのになぁ。急にあの仮面が出てきたと思ったら一瞬であの世行きだなんて・・・あんなの反則でしょ。」
シロは1人愚痴をこぼす。すると後ろから聞き覚えのある声がする。
「無理もない、あの『酒呑童子(しゅてんどうじ)』の力を持つ小僧が相手だったのだからな、それにしても我を無理矢理呼び出すとはなかなか面白いことをする。」
振り返るとすぐそこに右目の部分だけくり抜かれた仮面の人物が立っていた。
「待ってよ!何その酒呑なんとかって、それにボクはまだ生きてるの?それとここはどこなの?」
「やれやれ質問の多いやつだ。酒呑童子・・・『三大妖怪』と呼ばれる内の一匹で・・・最強の鬼だ。」
「最強の鬼って・・・鬼って人が戦って勝てるもんじゃないよね?それの最強って・・・想像もつかないや」
「あとの2つの質問はまとめて答えてやろう。貴様はまだかろうじて生きている。ただ、もう死ぬ寸前だかな。ここはいわゆる走馬灯のようなものだ。普通ならここで今までの人生で経験したことや見たことのある人や景色などが一瞬にして思い出す場所なんだがな。どうやらまだ死を実感していないようだ。」
「なるほど、これでボクがここにいる理由は分かった。あとはボクが死ぬってことを受け入れれば晴れてあの世に行けるってことだね!」
「なんだ?死にたいのか?」
「べつに死にたいわけじゃないけど、それ以外に選択肢があるの?」
「そのために我がここにいる。」
「それでボクはどうすればいいの?」
「契約だ・・・」
「!!」
聞き覚えのある声・・・ようやくその正体に気づく。
「君は夢に出てくる・・・」
「ようやく気づいたか、それとあれは夢ではなく我と貴様の意識を共有していたのだ。それにお前術が使えないだろ?」
「そうなんだ、どうやらボクには忍術の才能はないみたい」
「あれは貴様の中に我に対する封印があるからだ。だが最近になってようやく封印が弱まってきたのでな。干渉を試みたというわけだ」
「どおりで最近頻繁に起こるわけだ。じゃあ今なら忍術が使えるってこと?」
「あくまで可能性の話だ。貴様に忍術の才能があるかは知らん。」
「ふーん、まぁいっか。それで契約ってどうすればいいの?」
「なに簡単なことだ。貴様の身体の一部と引き換えに我の一部を与える・・・ただそれだけだ。」
「なんかちょっと怖いね、でももうすぐ死ぬ命だし好きなところ持っていってかまわないよ」
「ほう、いい心がけだが、今回は必要ない。代価はすでにもらっている、5年前にな。」
「5年前?」
「覚えてないのか?貴様が魔物に襲われた時だ」
「その時の記憶あんまりないんだ、ボクが魔物に襲われたそうになってそれをクロがかばって怪我をして・・・気がついたら魔物は氷漬けになってて・・・ってまさか!?」
「まぁ無理もない、あの時は仮契約だった。まだ幼かったこともあって一瞬しか力を使えなかったんでな。」
「そうだったんだ、それでどこを支払ったの?」
「右目だ」
「右目?べつに普通だけどなぁ」
「力を使わなければ普段となにも変わらない。ただしこの力を使いすぎるとどんどん身体を侵食していく。」
「侵食が進むとどうなるの?」
「身体に異常をきたし、人には戻れなくなる。そして最悪の場合・・・死ぬ」
「なるほど、それにしても見かけによらず親切だよね、何か企んでるのかな?」
「企んでるか・・・そういう見方もあるかもしれんが我の目的を果たすには貴様の力を借りる必要があるだけだ」
仮面の男は右手を差し出した。
「そうなの?またいつかその目的について聞かせてよ!今は契約で頭いっぱいだから」
シロも左手を差し出す。
「おかしなやつだ、貴様がこれからの戦いで生き残ることが出来れば話す機会もあるかもしれんな」
「楽しみにしてるよ。とりあえず今日を生き抜くことだけ考える。」
「これで契約完了だ。最後に1つ問おう、貴様は何のために戦う?」
今までにないくらいの力が身体に溢れてくる。
「そうだね・・・深く考えたこともないや」
「そうか・・・今はそれでもかまわん。また時が来たら尋ねるとしよう」
「そういえばまだ君の名前を聞いてなかったね」
「我の名は・・・」
轟音が鳴り響いて聞き取れなかった。ちょうど紅蓮が武器を振り下ろしていた。あたりは砂煙で真っ白で何も見えなかった。
(確かに手応えはあった。これで終わり・・・か。)
紅蓮は武器を持ち上げる。が、上がらない。みるみる煙が晴れていく。そこには目を瞑り左手で武器を受け止めているシロの姿があった。シロは右手で右目を抑えていた。
ー稽古場の屋根の上ー
ピクッ!
身の毛もよだつような殺気を感じた。だがそれはすぐに収まった。クロにはその殺気が少し懐かしく思えた。
「フン、ようやくか。この気配・・・」
クロは少し笑みを浮かべてはまた空を見上げていた。
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