♗CHECK♝
第14話 逆転・・・
これはまだシロが幼く剣術を習いはじめた頃・・・
ー稽古場ー
「シロ、また刀の握り方が違うよ」
「ボクはこの持ち方がいいの」
「はぁ、やれやれ秘剣流は二本の刀をこう構えてだね・・・父さんからも言ってやってよ」
紅蓮が呆れながら父親に助けを求める。
「うむ、シロよなぜその持ち方にこだわる?」
この人がボクたち鬼灯家の父親であり秘剣流の師範である鬼灯 金剛。
「だってみんな同じ持ち方だったらみんな同じ強さに向かっていくってことだよね?」
「うむ、みなその高みに至ることを父さんは望んでおる。秘剣流の教え・・・『その一振りは常に必殺である』」
「当然ボクも強くなりたい・・・でもその高みは目指さない。」
「ほぅ」
「もし強い相手が現れた時・・・同じ剣術ならその中の1番強い人が負けた時それはつまりその剣術の負けってことだと思うんだ」
「うむ、そうなるかもしれんな、その時はどうする?」
「その時はボクの剣術で倒す」
「たしかに型破りなシロの剣術には勝機があるかもしれんな、だがそれはそれだ。シロ、その剣術のせいでお前は本来なら勝てる相手にも負けることになる可能性だってあるんだぞ。その時はどうする?」
「そんなの簡単なことだよ」
「?」
「その時はみんなが倒してくれるだけじゃない!」
「何言ってるんだ、シロ。秘剣流は代々伝わる・・・」
「よい、紅蓮よ」
「しかし・・・」
「シロよ、父さんはそれも一つの答えだと思う」
「父さん!」
「だがその剣術はお前1人のもの・・・鬼灯家が代々受け継いできたものとは異なるということだ。それは教科書みたいなもの。シロはそれを捨てるということだ。」
「捨てないよ。それも含めてボクの剣術だ」
「そうか、それは険しい道のりだぞ。そしてその剣術はどこに向かう?」
「そんなの承知の上だよ。それにボクの目指す剣術かぁ、そうだね『時代と共に変わり、人と共に成長する』なんてどうかな?」
「ふむ、お前らしいつかみどころのない教えだな。よし、それならその剣術はこれから『秘剣真影流(ひけんしんかげりゅう)』と名乗るがよい」
「秘剣真影流・・・」
「うむ、その名に恥じぬよう修練に励むのだぞ」
金剛は外の方へ歩いていった。
「父さん怒ったのかな?」
「そんなことはないと思うよ」
紅蓮とすれ違った金剛の顔は今までに見たことのない優しい表情をしていた。
「シロ・・・お前ならもしかすると『もう一つの秘剣流』に辿り着くかもしれんな」
シロは相変わらずの片手は逆手持ちだった。
「シロ、何度も言うけどその持ち方はやめた方がいいよ、刀は逆手持ちするように作られてないんだから」
「でもそれは逆手で戦えない理由にはならないでしょ」
「このやり取りも何回目だろう、頑固なところは相変わらずだね、でもそのせいで命を落とすことになるかもしれない。だからオレは警告してるんだけどなぁ」
「ありがとう紅蓮兄さん、でもボクはこの戦い方を変えるつもりはないよ」
「そうか、残念だよ」
紅蓮はそっと武器を構える。
「行くよ!」
シロが走り出す。
「突っ込んで行くだけじゃオレには勝てないよ」
「もちろん、分かってるよ」
シロは武器を鞘に納める。シロの行動に紅蓮は少し違和感を感じた。
だが紅蓮には動きが見えている、焦る必要はなかった。だがそれこそが罠だった。
シロは予測通りの逆手の横振り、当然武器で防ぐ。だが、いつもの感触ではなかった。そうこれこそがシロの切り札だった。シロが振った武器には鞘が付いていた。紅蓮の体制が崩れた。
(このまま押し切る!)
そのままの勢いで武器をふり抜く。回転してからの左手の縦振りが紅蓮もギリギリのところで腕で防ぐ。
(今の一撃・・・真剣なら持っていかれてたね・・・)
だが紅蓮はすぐに異変に気づく。空中にいたはずのシロがすでに着地していた。また鞘からの抜刀で勢いをつけていたのだ。
(また鞘!?)
シロはここまでの流れを予測していたのだった。
「もう一撃くらい武器で防がれると思ってたけど、少し流れがいいみたいだ。ここからはガード不可ってやつだよ。」
まずは二本の木刀で膝を狙う。当然動けない。紅蓮はそのまま体制を崩して倒れこむ。
だが地面につくことはなかった。連続攻撃はまだ続いている。
殺意のこもった鋭い突きが紅蓮の喉元を襲う。なんとか寸前で首をそらした。だが右手の切り上げが頭部に直撃する。勝負あった。だが容赦ない蹴りが紅蓮を壁まで吹き飛ばす。
「ハァハァ、その眼はどうやら複数の動きを見れるものじゃなかったみたいだね」
そう言ってシロは息を切らしながら転がっている鞘に武器を納めてまた腰に携えた。まさに逆転・・・
「シロ〜すごいじゃない!こんなに強くなってるなんて!お母さんびっくりしちゃった。でも・・・」
銀鈴が言葉を詰まらせる。その刹那、紅蓮がゆっくりと立ち上がる。
「この眼を攻略するとはさすがシロだね、でも決着はまだ着いてないだろ・・・」
紅蓮は手で顔を隠すようにしてゆっくりと立ち上がった。
「瑠璃姉、どうしたの?なんかにやけてない?」
「別に〜少し昔の頃を思い出してだけ〜」
「変なの」
(フフッまだあの持ち方してたのね、あの頃からだっけ・・・みんなそれぞれ違う武器を手にしたのは。頑固だった紅蓮でさえ・・・教えさえ守ってはいるけど、その武器はもう刀なんかじゃないわよ。もう正当な後継者はクロただ1人になっちゃったわね。それもみんなシロの影響なのかもね。時代と共に変わり、人と共に成長する・・・ね。気づけばみんな秘剣真影流・・・なのかもしれないわね。)
ー稽古場ー
「シロ、また刀の握り方が違うよ」
「ボクはこの持ち方がいいの」
「はぁ、やれやれ秘剣流は二本の刀をこう構えてだね・・・父さんからも言ってやってよ」
紅蓮が呆れながら父親に助けを求める。
「うむ、シロよなぜその持ち方にこだわる?」
この人がボクたち鬼灯家の父親であり秘剣流の師範である鬼灯 金剛。
「だってみんな同じ持ち方だったらみんな同じ強さに向かっていくってことだよね?」
「うむ、みなその高みに至ることを父さんは望んでおる。秘剣流の教え・・・『その一振りは常に必殺である』」
「当然ボクも強くなりたい・・・でもその高みは目指さない。」
「ほぅ」
「もし強い相手が現れた時・・・同じ剣術ならその中の1番強い人が負けた時それはつまりその剣術の負けってことだと思うんだ」
「うむ、そうなるかもしれんな、その時はどうする?」
「その時はボクの剣術で倒す」
「たしかに型破りなシロの剣術には勝機があるかもしれんな、だがそれはそれだ。シロ、その剣術のせいでお前は本来なら勝てる相手にも負けることになる可能性だってあるんだぞ。その時はどうする?」
「そんなの簡単なことだよ」
「?」
「その時はみんなが倒してくれるだけじゃない!」
「何言ってるんだ、シロ。秘剣流は代々伝わる・・・」
「よい、紅蓮よ」
「しかし・・・」
「シロよ、父さんはそれも一つの答えだと思う」
「父さん!」
「だがその剣術はお前1人のもの・・・鬼灯家が代々受け継いできたものとは異なるということだ。それは教科書みたいなもの。シロはそれを捨てるということだ。」
「捨てないよ。それも含めてボクの剣術だ」
「そうか、それは険しい道のりだぞ。そしてその剣術はどこに向かう?」
「そんなの承知の上だよ。それにボクの目指す剣術かぁ、そうだね『時代と共に変わり、人と共に成長する』なんてどうかな?」
「ふむ、お前らしいつかみどころのない教えだな。よし、それならその剣術はこれから『秘剣真影流(ひけんしんかげりゅう)』と名乗るがよい」
「秘剣真影流・・・」
「うむ、その名に恥じぬよう修練に励むのだぞ」
金剛は外の方へ歩いていった。
「父さん怒ったのかな?」
「そんなことはないと思うよ」
紅蓮とすれ違った金剛の顔は今までに見たことのない優しい表情をしていた。
「シロ・・・お前ならもしかすると『もう一つの秘剣流』に辿り着くかもしれんな」
シロは相変わらずの片手は逆手持ちだった。
「シロ、何度も言うけどその持ち方はやめた方がいいよ、刀は逆手持ちするように作られてないんだから」
「でもそれは逆手で戦えない理由にはならないでしょ」
「このやり取りも何回目だろう、頑固なところは相変わらずだね、でもそのせいで命を落とすことになるかもしれない。だからオレは警告してるんだけどなぁ」
「ありがとう紅蓮兄さん、でもボクはこの戦い方を変えるつもりはないよ」
「そうか、残念だよ」
紅蓮はそっと武器を構える。
「行くよ!」
シロが走り出す。
「突っ込んで行くだけじゃオレには勝てないよ」
「もちろん、分かってるよ」
シロは武器を鞘に納める。シロの行動に紅蓮は少し違和感を感じた。
だが紅蓮には動きが見えている、焦る必要はなかった。だがそれこそが罠だった。
シロは予測通りの逆手の横振り、当然武器で防ぐ。だが、いつもの感触ではなかった。そうこれこそがシロの切り札だった。シロが振った武器には鞘が付いていた。紅蓮の体制が崩れた。
(このまま押し切る!)
そのままの勢いで武器をふり抜く。回転してからの左手の縦振りが紅蓮もギリギリのところで腕で防ぐ。
(今の一撃・・・真剣なら持っていかれてたね・・・)
だが紅蓮はすぐに異変に気づく。空中にいたはずのシロがすでに着地していた。また鞘からの抜刀で勢いをつけていたのだ。
(また鞘!?)
シロはここまでの流れを予測していたのだった。
「もう一撃くらい武器で防がれると思ってたけど、少し流れがいいみたいだ。ここからはガード不可ってやつだよ。」
まずは二本の木刀で膝を狙う。当然動けない。紅蓮はそのまま体制を崩して倒れこむ。
だが地面につくことはなかった。連続攻撃はまだ続いている。
殺意のこもった鋭い突きが紅蓮の喉元を襲う。なんとか寸前で首をそらした。だが右手の切り上げが頭部に直撃する。勝負あった。だが容赦ない蹴りが紅蓮を壁まで吹き飛ばす。
「ハァハァ、その眼はどうやら複数の動きを見れるものじゃなかったみたいだね」
そう言ってシロは息を切らしながら転がっている鞘に武器を納めてまた腰に携えた。まさに逆転・・・
「シロ〜すごいじゃない!こんなに強くなってるなんて!お母さんびっくりしちゃった。でも・・・」
銀鈴が言葉を詰まらせる。その刹那、紅蓮がゆっくりと立ち上がる。
「この眼を攻略するとはさすがシロだね、でも決着はまだ着いてないだろ・・・」
紅蓮は手で顔を隠すようにしてゆっくりと立ち上がった。
「瑠璃姉、どうしたの?なんかにやけてない?」
「別に〜少し昔の頃を思い出してだけ〜」
「変なの」
(フフッまだあの持ち方してたのね、あの頃からだっけ・・・みんなそれぞれ違う武器を手にしたのは。頑固だった紅蓮でさえ・・・教えさえ守ってはいるけど、その武器はもう刀なんかじゃないわよ。もう正当な後継者はクロただ1人になっちゃったわね。それもみんなシロの影響なのかもね。時代と共に変わり、人と共に成長する・・・ね。気づけばみんな秘剣真影流・・・なのかもしれないわね。)
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