♗CHECK♝

✇忍冬✇

第13話 切り札

シロには体力の限界が近づいていた。相手の攻撃防ぎ続けるのもそろそろ終わり。次で決定打を叩き込まなければ勝ち目は薄い。
しかし、同じ流派である以上攻撃の型は見破られてしまう。だがシロには唯一のアドバンテージがあった。
それは型破りな武器の構え方である。
だがそれさえも紅蓮は動きを読んで攻撃してくる・・・それはもう作業に近かった。
当然息も上がらない、顔色ひとつ変わらなかった。木刀もボロボロで次の攻撃を受ければ壊れる程だった。

「はぁはぁ、まずいなぁ、視界も・・・霞んできたよ」

必死で視界を確保しようと目をこすった。するとあるものの存在に気づくと同時に思い出した。それはシロが稽古場の入り口に置いた荷物だった。
もうこれしかない!シロは今一度紅蓮にルールを確認した。

「紅蓮兄さん、もう木刀がボロボロで戦えないよ」

「そうだね、でも実戦ならそんな言い訳は通用しないよ」

「言い訳なんかじゃなくて確認だよ、真剣じゃなきゃいいんだよね?例えば違う竹刀や木刀とか」

「ああ、それならかまわないよ、でも倉庫まで取りに行けたらの話だけど」

「そっか、じゃあ気を取り直して続き始めるね」

(確かに倉庫は紅蓮兄さんの後ろ・・・取りに行くのは極めて不可能。でもこれで1つはっきりしたことがある。不確定要素だったあの眼の能力に心を読む力はないということだ。)

紅蓮はシロの本当の狙いに気づいていなかった。というよりは気づけなかったのだ。
大きい武器を使用する者は基本的に相手の動きに合わせて攻撃するカウンター狙いの戦闘スタイル、だから自分から動き出すことは少ない。
あの眼を持つ紅蓮なら尚更体力を温存するためそうするだろう。だからもうこの一手に賭けるしかない。
そう思うとフラフラだった身体に少し力がみなぎってきた。
シロは勢いよく走り出した。当然紅蓮は武器を構える。するとシロは急に横に大きく跳躍した。紅蓮は動きが読める、ゆえに動揺しない。
だが意図までは読めない。シロは持っていた二本の竹刀を紅蓮に投げつけた。当然紅蓮はそれを防ぐ。
シロは横たわっていた荷物から何かを取り出した。中身は二本の木刀だ。それも珍しい鞘付きの木刀である。

「なるほどね、さっきの質問はこのための・・・」

「そうだよ、そしてこれがボクの切り札だ!」

そう言ってシロは二本の木刀を腰に携えた。

「そういえば翡翠いないよね?」

檸檬が思い出したように尋ねる。それに気だるげに桜花が応答する。

「また何かわけのわからない研究をしているのか虎鉄さんのところにでもいっているんじゃないんですか。今は別にどうでもいいことでしょ」

「それもそうだな」

「・・・」

檸檬は気分が晴れたのかさっきより元気であった。それにしても翡翠の扱いはいつも哀れな気がした瑠璃であった。

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