♗CHECK♝

✇忍冬✇

第12話 鬼の眼の正体

木刀が激しくぶつかり合う音が遠くの方から響いていた。

「ちょっと稽古場が騒がしいわね、もう始まってるのかしら?」

瑠璃達は稽古場に向かう途中だった。その道中に1人の人影があった。神無だ。

「瑠璃さん・・・話があります・・・と言ってもこれは決定事項なので報告・・・ですね」

「ん?何かしら」

「今からシロを・・・殺します」

ーその頃稽古場ではー

「鬼人の・・・力・・・?」

シロは状況を理解出来ないでいた。ただ理解出来たことは紅蓮の身体能力が上昇していることだ。それもあの紅い瞳によるものだということも推測出来た。

(ボクより強い兄さんが更に強くなるって完全に詰みだよね・・・)

紅蓮は容赦なくシロを攻撃する。シロはひたすらその攻撃を防ぐだけだった。時より反撃を試みるがその刃は紅蓮に届くことはなかった。
寸前のところで必ず避けられてしまう。それもあまりにも簡単にだった。激しい攻防の中でシロは1つの仮説が生まれた。

(多分あの紅い瞳にはボクの動きを読む力がある、それに心を読む力まであればかなり厄介だ)

「そろそろ気づいたようだね、シロ。この鬼の眼には相手の動きを先読みする能力がある。」

やはり仮説は正しかった。だがそれだけとは限らない。言葉も時に武器になるからだ。

「そしてこの戦いでシロにも会得してもらう能力だよ」

「ボクにも鬼人の力を・・・」

いつからいたのか稽古場には神無達の姿があった。神無、瑠璃、桜花、檸檬の他に何故か母である銀鈴までそこにいた。みんなが不安そうな表情の中銀鈴は違った。

「シロ〜、頑張りなさいよ〜」

(母さんが応援してくれるのは嬉しいけど、この状況を打開する策が1つも思いつかないや)

そう思いながらも気持ちが少し軽くなった。それにシロは知っていた・・・どんなものにも必ず弱点となるものがあることを。
それさえわかれば・・・そんな中銀鈴は人知れず険しい表情を浮かべていた。

(あの子半覚者でなければいいのだけど・・・)

鬼灯家の歴史には稀に半覚者(はんかくしゃ)が生まれる。
半覚者は半覚醒という一時的に力の発現を確認するがその後一切の兆しを見せない者のこと。
当然鬼灯家の稼業を継ぐ資格は失われる。最悪の場合内に秘めた鬼に侵食されるケースが確認されている。故に半覚者の恐れがあるものはすぐさま処刑しなければならない。
鬼灯真白のケースは異例中の異例である。それも余り多くの者に知られていないのが幸いしたのかもしれない。

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