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✇忍冬✇

第4話 好きな食べ物は・・・1人鍋

稽古場から出てすぐのところにあるのがシロの暮らす鬼灯家の屋敷である。
シロは屋敷に戻るなりすぐに風呂場に向かった。ゆっくりとお湯に浸かったあと、残す予定は晩御飯だけ・・・のはずだった。
部屋に戻ったシロは朝から何も口にしていないことに気づく。机にコンロと鍋を広げ、冷蔵庫から食材を取り出した。

そう、シロの好物は鍋料理。それも1人で食べる鍋料理であった。豆腐に白ネギ、糸こんにゃくととにかく白い鍋だった。その中でも1番好きな食材はえのき茸である。シロがえのきを鍋から取り出そうとした時だった・・・
さっきまではなかった黒い物体が浮いている。しいたけである。何か感づいたように鍋の向こうを見るとそこには全身真っ黒の少年が箸を片手に座っているではないか。

「ねぇ、クロ・・・なんでいるの?」

「こんな暑い季節に1人で鍋なんて相変わらず変な奴だな、かわいそうだから一緒に食べてやるよ。」

「頼んでないだけど・・・それよりボクの神聖な鍋を黒く染めないでよ。」

この全身真っ黒で赤いスカーフを付けたプライバシーのカケラもないやつがクロ。本名は鬼灯 無黒ほおずき むくろ・・・ボクの双子の兄弟。
ボクと同じ二刀流の使い手。最近道場を出禁になったらしい。ちなみに好きな食べ物は黒い物、特にしいたけ。

「シロもしいたけ食べろよ!美味いからさ。」

「ボクは根っからのえのき派だよ。えのき派に裏切りは許されない。」

「野菜もいいけど・・・鍋はやっぱりお肉だよね。シロは今日頑張ったから・・・疲れたよね・・・豚肉どうぞ・・・」

この感情の無いような喋り方はもしや・・・シロとクロは顔を見合わせる。ゆっくり声のする方に視線を送る。やはり神無であった。彼女は存在感を消す達人なのかいつも気配を絶っていた。

「あのさ〜2人とも、勝手に人の部屋に入ってきたところまでは百歩譲っていいとしよう・・・さらに晩御飯までご馳走になるのはさすがに人としてどうかと思うんだけど・・・」

「シロ・・・それなら大丈夫だ!食材は俺達が持参してるからご馳走にはなってないよな?神無!」

「合法的・・・鍋パ」

「はぁ〜もういいや・・・食べたら早く帰ってよね」

「何言ってるんだよシロ、今日は眠れないぜ!」

「私は1日くらい寝なくても平気・・・第123回神経衰弱王決定戦・・・開催。」

「冗談だよね?明日も道場行くんだよね?てか、そんなに神経衰弱決定戦やってないよね?」

この日シロ達は眠ることはなかった・・・

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