♗CHECK♝

✇忍冬✇

第2話 神速の剣技

ふと目が覚めた。というよりはあまり眠れなかった。そっと立ち上がり1人呟く。

「ボクだって怒られるのは嫌だし久しぶりにクロの様子でも見に行こうかな・・・」

彼はゆっくりと歩みを進めた。

その頃、道場では竹刀のぶつかる音が永遠と鳴り続けていた。どうやら今は忍科の実技の時間らしい。門下生達が互いに切磋琢磨して剣術を磨いていた。

その中でもひときわ体格の大きい少年が叫んだ。

「これで99連勝だ!おいおい誰か相手になるやつはいないのか?」

周りの門下生が先ほどの少年から少しずつ離れていった。すると1人小柄な男の子がとり入るように近づいてきた。

「轟君に敵うやつなんているわけないじゃないですかークスクス」

先ほど轟に敗れた眼鏡の少年が涙をこらえボソッと呟く。

「今のは不意打ちじゃないか・・・」

轟が威圧するかのように叫ぶ。

「ならもう一度手合わせ願おうか!」

「それは・・・」

その時、どことなくやる気のない声が道場に響き渡る。

「あれ?道場ってここじゃなかったっけ?しばらく来ないうちに不良の育成施設になっちゃったみたいだね。住所間違えたのかな?」

場内が静まり返る。シロだった。すると1人の女の子がゆっくり近づいてくる。神無だ。

「あなたもその不良の1人でしょ・・・それにここはあなたの家よ・・・白髪ニート・・・」

トゲのある言葉がシロに放たれる。

「ちょっと言い過ぎなのでは?」

少し悲しそうな表情を浮かべゆっくり轟に歩みを進める。

「おうおう、こいつは鬼灯の白いのじゃねぇか!久しぶりに見たと思えば相変わらずのマヌケヅラじゃねぇか!」

「えーっと・・・どなたでしたっけ?」

シロは無意識に轟を煽っていた。

「テメェ!いいだろう。黒いのじゃなくて残念だが記念すべき100連勝目は白いの、テメェで決まりだ!」

「盛り上がってるところ悪いんだけど、ボクは別に君に用事はないんだけどなぁ」

シロからは微塵もやる気を感じない。すると轟が余裕の笑みを浮かべ話し出す。

「お前らがいねぇ間に俺はおめぇなんか足元にも及ばないくらい強くなったんだよぉ、余裕でいられるのもいまのうちだぜぇ」

神無がシロに竹刀を二本投げ渡した。

「別に一本でよかったのに」

片方の竹刀をそっと足元に置いた。轟も竹刀を手に取る。

「おい!無視してんじゃねぇ!」

轟が走り出す。迫り来る轟にシロは一言言い放った。

「やれやれ・・・」

それは一瞬の出来事だった。一本の竹刀が床に落ちていた。

「君のその強さは・・・何のための強さ?」

「なんだ・・・今のは・・・」

季節外れの青いマフラーがなびく。轟が青ざめた表情で1人呟いた。

ざわざわ・・・ざわざわ・・・

「一体なにが起こったんだ?」

それと同時に場内がざわつき始める。

神無にはその一部始終が見えていた。轟が竹刀を振りかざした瞬間にシロは素早く横に移動していた。その勢いのまま回転し、轟の竹刀の先を叩き落としていた。

「別にボクは弱くてもいいと思うんだけど・・・」

そして道場を去ろうとした時、後ろから声が聞こえた。眼鏡の少年だった。

「助けていただきありがとうございました!」

「別に助けたつもりはないんだけど、まぁいいや。でも君も気をつけなよ、いつどこで襲われるかわからない世の中なんだから」

「僕も忍の端くれ、受けた恩は必ず返します。」

眼鏡の少年は震えながら勇気を振り絞って答えた。

「君、名前は?」

輪廻 一りんね はじめです」

(ん?輪廻?どこかで聞いたような・・・まぁいいか)

「ボクは鬼灯 真白、また会ったときはよろしく」

「こちらこそよろしくお願いします」

「おい、これはなんの騒ぎだ」

「柳生先生、鬼灯真白の仕業です」

「やば!雷おやじが来た!じゃあボクはこれにて失礼するよ」

そう言ってシロは道場を後にした。雷おやじとは実技担当の柳生 十兵衛やぎゅう じゅうべぇ先生のこと。この道場の流派でもある柳生新陰流の創始者でこの道場の師範。

「あなたのことはよく知ってますよ」

一がそう呟き眼鏡をかけ直した。

「こらぁ待てぇ真白!お前たち双子は揃いも揃ってぇ、型無ぃしっかりしつけとけ!」

道場を出たところに先生に敬礼をしているカンナちゃんが立っていた。

「めずらしく大暴れね・・・」

「まさかぁ、ちょっとした準備運動だよ。それよりクロの姿がみえないけど?」

「クロは道場を出禁になったの・・・」

「じゃあ怒られるのはボクとクロって訳だね。少し気持ちが楽になったよ。」

「シロはサボりでクロは公式の出禁・・・だから怒られるのはシロだけ・・・」

「やっぱりそうなるんだ・・・夜逃げの準備しなくちゃ・・・」

シロが逃げようとする。

「逃がさない・・・」

「え?」

鋭い痛みと共にシロは気を失った。

「いつ襲われるか分からないもの・・・ね」

ー稽古場に向かう途中ー

シロを背負いながら神無は1人呟く。

「いつからこんな風に・・・なったんだろうね・・・昔はみんな一緒だったのにね・・・」

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