2人で奏でる異世界デュエット

豚也

初LIVE5


 大会当日


「みんなおはよ! 早いね」

「おはようございます! エバ」

「おはよ。エバが遅いのよ」

「おはー」

「みんな昨日はよく寝れた?」

「緊張して寝れませんでした……」

「私もほとんど寝れてないわね」

「俺はぐっすり寝たけどな」

「キッドは緊張とかしなさそうだよね……俺もあんまり寝れなかったな」


 キッド以外の3人はほんのり目を充血させていた。


「よーしみんな席につけー」


 ガロンの一言で席に着く生徒達。いつもと違って緊張している生徒や、エバ達同様目を充血させている生徒達であった。


「今日はお前らが入学してから組んだバンドで初の大会だな。あまり気負い過ぎず楽しんでこい! 楽しみにしてるからな?」


 ガロンの一言で緊張していた生徒達は少しだけいつも通りの笑みを浮かべる事が出来た。


「そろそろ移動するぞー 速やかに準備をして準備が出来た奴から大ホールに移動してくれー」


 ガロンの合図とともに各々準備を始める生徒達。エバ達も準備が整い次第大ホールへ向かうのであった。



 大ホール前



「やっぱでけーよなここ」

「この舞台で私達が演奏するなんて信じられません」

「私気持ち悪くなってきたわ」

「エレナ大丈夫? 端の方で座る?」

「そうしようかしら」

「大丈夫ー?」


 大ホールの前でしゃがみ込んでいたエレナに話しかける女子が1人。


「ごめんなさい。 少し気分が悪くなっただけよ」

「緊張してるの? 可愛いね」

「……お気遣いありがとう。 でももう心配要らないわよ」

「ふふっ」

「ふっ」


 エレナに話しかけてきた女子とエレナが睨み合いながら笑っている光景をみてエバ達は苦笑いを浮かべていた。


「マリノ。 こんなところで何してるの? みんな探してたよ」

「ごめんねローズ! 可愛い子がしゃがみ込んでたからつい声かけちゃった」

「また余計なこと言ったんでしょ? ごめんなさい。 うちのマリノが」

「別に良いわよ? おかげで緊張も解けてリラックス出来たわ」

「緊張してたの? 緊張する必要なんてないよ? だって、どうせ優勝は私達キングダムだし」

「こらこら……ローズこそ余計な事言わなくて良いの」

「あんた……言ってくれるじゃないの」


 額に青筋を立て小刻みに震えているアメリをエバ達は恐る恐る見ていた。


「おーい!……って、あれえー? なんかローズとマリノ女の子の事怒らせてない?」

 「またやってるのか」

「ったく……行ってくる」


 そう言ってコウはローズ達のところへ走っていった。


「コウ頑張れー! あいつらほんと敵作るの好きだよな」

「ああ……」

「あれ? もしかして君達のメンバーの1人?」


 この一部始終を見ていたエバ達にロッドが話しかける。


「そうですね」

「女子って怖いね」

「あそこに近づきたくねえ」

「ん? お前もしかして」

「あぁ?」


 レオがハッとした顔でキッドに問いかけた


「スタークの弟か?」

「そうだけど」

「は? まじで? スタークの弟かよお前! うっひょー! レオ! こりゃ少しは楽しめそうじゃねーか」

「期待してるとこ悪いけど、そんなにすごくねえぞ俺のギターは」

「何言ってんだよ! あのスタークの弟だぜ? 謙遜してるのか」

「謙遜じゃねえよ」

「ロッド少し黙ってろ」

「う……」

「悪いな。うちのやつが」

「全然構わねーよ。むしろ慣れてる」

「お喋りはここら辺にしといて、そろそろ行くわ。 本番前に悪かったな」

「楽しみにしてるわ、キングダムのライブ」

「ああ」


 レオは軽い返事を残し、キングダムのメンバーを引き連れて大ホールに向かった。


「なぁ。エバ」

「ん?」

「あいつやべえわ。 アニキと同じにおいがする」

「スタークと同じ……」


 キッドはそう言いながらレオの後ろ姿をしばらく見つめていた。


「レオ、スタークの弟と話したんだって? どうだった?」


 コウは真剣な眼差しでレオを見つめる。


「まだ足りないな。今は到底俺には及ばない」

「『今は』か……そのうち追いついてくるってことか?」

「さあな……今はライブに集中しよう」

「そうだな」


 レオとコウはその会話を最後にお互い集中し始めるのであった。







コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品