2人で奏でる異世界デュエット

豚也

活動開始 2


「1人ずつ弾いてみましょ? エバは何か歌歌ってね? 誰からやる?」

「私からで良いですか?」

「じゃあアメリから始めるわよ」

「いきます!」


 そう言ってアメリの演奏が始まった。アメリはエルフでハープをやっている事もありピックを使わないで指で優しくて、とても温かい音色だった。


「どうですか?」

「すごく優しい音だった」

「俺には出せない音だな」

「さすがエルフといったところね。指の動きがとても滑らかね」

「ありがとうございます! 次は誰が弾きますか?」

「じゃあ、俺弾くかなー」


 少しダルそうに立ち上がったキッドだったが漆黒のギターを構えたその顔つきはいつものキッドでは無かった。激しいピック捌きから鳴るのは荒々しい音色、アメリとは真逆である。ただ荒々しいだけでなく洗礼された確かな音色であった。


「こんなもんかな」

「さすがね。」

「キッド全然普通じゃないじゃないですか!」

「すごくかっこよかったよ!」

「こんなんじゃアニキは越えられねえ……おっと、わりいな。次はどっちだ?」

「じゃあおれ……」

「私がやるわ。」

「エレナのラップすごい聴きたかったです!」

「確かに興味あるなー」

「俺最後かよー」


 エレナのラップが始まる。とても女子とは思えないような音色が響きエレナが出す1つ1つの音がエバ達の心に響く。ラップもとても流暢にそして力強く演奏室に広がった。


「こんなところかしら。」

「すごいですねエレナ! 私エレナのファンになりそうです!」

「エレナかっこよすぎる!」

「自己紹介の時なんか言ってた奴らもこれ聴いたら黙るだろうな」

「でしょ?さて最後はこのバンドのヴォーカルの出番よ!」

「エバ!頑張って下さい!」

「がんばれー。俺らの命運がかかってるぞー」

「荷が重過ぎる。」


 浮かない顔をしながらもマイクを持ち歌い出したエバ。綺麗な高音を出し音程もしっかり合っているが可もなく不可もなくといったところだ。


「どうかな?」

「私は好きでしたよ? エバの歌声」

「悪くねえ」

「そうなのよ。悪くは無いけど、インパクトにかけるわね……でも、インパクトに私のラップでいけそうね」

「喜んで良いのこれって……」

「そろそろ片付けて教室に戻るわよ」

「ういー」

「そうしましょうか!」

「おーい、みんなー」

「エバ。戻るぞ」

「……はい。」


 こうしてTDIMのお披露目会が終わった。エバ達同様に教室に戻ってきた生徒達。皆バンドを組み本格的に音楽活動が出来ることもありとても楽しそうであった。


「みんなバンドは決まったようだな。これから3ヶ月後に新1年生だけの大会あるから今組んだバンドで優勝目指せよ。」


 その言葉に生徒達の目付きが変わる。高校生でもやはり音楽の大会となると譲れないものがあるようだ。


「じゃあ今日はこれで授業終わりな。 放課後演奏室は自由に使えるから今から練習しても良いぞー。」


 ガロンの言葉で2日目の授業の終了を告げた。帰路に着く生徒や早速練習に励む生徒達それぞれであった。


「俺達も少し練習してくか?」

「そうね! そうと決まれば練習よ! 練習! 大会優勝するわよ!」

「待って下さいエレナ」

「元気だねあの2人」

「だな。俺らも行くか!」

「うん!」


 元気良く教室を飛び出したエレナとアメリの後を追うようにエバとキッドも続いた。夕焼けが窓から差し込む演奏室で4人はバンド名の通り音楽をとても楽しんでいた。

 

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