クリティカル・リアリティー
第二十四話 おはようと二度
「……………………………」嫌な夢でも見ていたのか。
時計は6時30分を指している。流れでカレンダーをみる。今日は9月15日。……本当に夢?
右手に握っていた感覚はないが、そこにあったかもしれない感触を記憶の片隅には残っていた。
階段を駆け足で降り、母さんに会う。
「おはよう」
「……おはよう」
この二言だけで会話は終わる。そう、いつもなら。用意された朝食を急いで食べ終わり、支度を済ました。時計は短針が7を差し掛けた時だった。玄関で靴を履きながら一言だけいつもより多く話す。
「いってきます」
「行ってらっしゃい」
家から学校までは歩いて30分。走れば15分ですぐに着く。
……ん?聞いたことのある声が聞こえてくる。口論?しているのか?
「だからぁ! 今日そんなお菓子いらないでしょ!」
「学校行ってから食べるんだよ! 朝食用のおにぎりだろ!」
「学校で勝手にお菓子は食べちゃだめでしょ! それにこんな早くから登校するくらいなら家で食べたらいいじゃん!」
「そ、それはそうだけど! 今日はいつもより早く学校に行きたい気分なんだよ!」
知音と愛莉だ。愛莉は海外と日本のハーフでどちらかというと日本寄りの見た目だ。メガネをかけていて、俺よりもずっと優等生で真面目だ。知音は男女の隔たりなく会話できるからすごいよなぁ。と感心していると二人に気付かれる。
「ふ、深谷……!?」
「深谷って……久しぶりにお前の名字聞いたな……て、弘成! 俺、お前を探してたんだ!」
「……え?」
「俺!? な、何かしたっけ……??」
「今までの事は全部夢なんかじゃない! そうだよな?覚えてるよな?」
「まさか」
知音に小声で、愛莉には聞こえないようにそっと話す。
「愛莉が聞いたら混乱するだけだろ…………一応、覚えてる。多分、真凛と陽向も覚えてるよな、急いで登校して話し合おうってことだよな」
「………………ああ。能力も使えるしな」
「……愛莉、悪いけど俺ら急いですぐ行くわ! じゃあな!」
「ちょ……!!」
悪い、愛莉。俺達は走り学校に向かう。
五分後、俺達は学校につき、教室へと駆け上がる。
引き戸を開け、教室に入ると、そこには二人がいた。
「真凛に、陽向。やっぱり覚えてたんだな」
「……健人達は大丈夫なのかな……」
真凛の言葉に一同が黙り込む。
「おはよう! 皆!」
「!?」
四人の沈黙を破ったのは、明人と魔爽だった。魔爽は背が高く性格も優しくて頼れる人物だが、今はそうでもない。
それよりも明人だ。彼に記憶が残っているのならば、何があったのか知る事ができるだろう。今いない他の三人だってきっと覚えてるはず。
「四人とも早いな! 今日はお別れ会だし、ワクワクして早く来たとかか? ま、俺も家の外からの騒ぎ声で起きたわけだけどさ」
「……そっか」
覚えていないようだ。だとすると何故明人は前回よりも早く来ているんだ?魔爽はどうだったかは知らないが明人は確実に俺より遅く登校していた。俺は彼に尋ねた。
「で、その騒ぎ声は誰だったんだ?」
「魔爽”君”と愛莉さんに神田さんですね、めちゃくちゃうるさかったなぁ」
「ははは……まじでごめん」
神田さんか、学力はこのクラスだと一番、勘も鋭いから嘘をつこうとしたら絶対バレるんだよなー……それにババ抜きがめちゃくちゃ強いし。
「おはよう! なんか……早いね」
「! 健人!」
今度は健人と利名子、俊樹と神田が入ってきた。
三人ともその素振りからは記憶はないようだ。
気が付くと、もう四時間が過ぎ、給食の時間になっていた。
改めて俺と知音、真凛と陽向の四人で話し合う。
「……どうする? 大体二時間後にはまた怪物がくるぞ」
俺はまだ能力が使えるようになったことは誰にも言っていないが、解決策を三人に聞いてみることにした。
「……そんなの決まってんだよ」
「まずは、健人の能力を利用する……そのためには……分かるよな陽向?」
「勿論。記憶を戻すしかないね」
「という訳で。行くぞ弘成、真凛。『話し合い』だ」
「え!?」
三人は納得したかのように健人に近づいていく。
「健人、今から話したいことがあるんだけどさ、ちょっといい?」
「え、いいけど」
健人は意外にもあっさりと了承した。が、その余りにも怪しげな知音の顔を見た周りの人は健人を引き留めようとする。
「ちょっと知音? 顔が怪しすぎるわよ、何企んでるの!」
神田さんだ。実習生最後の日だけあって、余計な思い出を作りたくないのだろう。
「知音、ここはもう辞めとこうぜ」
「こーなったら! 俺ら三人で男子トイレ行くからな! 女子は来んなよー!」
知音らしくないほど幼稚な態度を取り出す。というか、俺ら三人て俺もカウントしてんのかよ。とりあえず、知音と一緒に三人でトイレにいく。
「……意味が分かんないよ!! 今日は何回もあって今まで変な怪物に殺され続けてた? だけど前回でオレが能力手に入れて怪物を二体倒して、知音に陽向も能力を手に入れた!? 結局オレは死んだ??」
そう言いたい気持ちも分かる。多分俺以外覚えてなかったら夢だと思ってた。
「弘成もなんか言ってやって」
「お、おう。知音の能力は『物を操る』。陽向の能力は『エネルギー的な物を操る』って感じかな。それで、健人が持っていた能力は『空気を操る』なんだ」
健人の頭上に?の文字が浮かび上がっているようだった。
「口で説明しても難しいよな、俺が今から使うぜ。――ほら、浮いてるだろ?」
そういって胸ポケットからシャーペンを浮かばせる。
「……信じらんない」
「……健人、能力出してくれ」
「能力の出し方知らない――」
有無を聞かずに知音はシャーペンを健人の首に近づける。
「いいから出せッ!!」
知音の暴走が始まる――。
時計は6時30分を指している。流れでカレンダーをみる。今日は9月15日。……本当に夢?
右手に握っていた感覚はないが、そこにあったかもしれない感触を記憶の片隅には残っていた。
階段を駆け足で降り、母さんに会う。
「おはよう」
「……おはよう」
この二言だけで会話は終わる。そう、いつもなら。用意された朝食を急いで食べ終わり、支度を済ました。時計は短針が7を差し掛けた時だった。玄関で靴を履きながら一言だけいつもより多く話す。
「いってきます」
「行ってらっしゃい」
家から学校までは歩いて30分。走れば15分ですぐに着く。
……ん?聞いたことのある声が聞こえてくる。口論?しているのか?
「だからぁ! 今日そんなお菓子いらないでしょ!」
「学校行ってから食べるんだよ! 朝食用のおにぎりだろ!」
「学校で勝手にお菓子は食べちゃだめでしょ! それにこんな早くから登校するくらいなら家で食べたらいいじゃん!」
「そ、それはそうだけど! 今日はいつもより早く学校に行きたい気分なんだよ!」
知音と愛莉だ。愛莉は海外と日本のハーフでどちらかというと日本寄りの見た目だ。メガネをかけていて、俺よりもずっと優等生で真面目だ。知音は男女の隔たりなく会話できるからすごいよなぁ。と感心していると二人に気付かれる。
「ふ、深谷……!?」
「深谷って……久しぶりにお前の名字聞いたな……て、弘成! 俺、お前を探してたんだ!」
「……え?」
「俺!? な、何かしたっけ……??」
「今までの事は全部夢なんかじゃない! そうだよな?覚えてるよな?」
「まさか」
知音に小声で、愛莉には聞こえないようにそっと話す。
「愛莉が聞いたら混乱するだけだろ…………一応、覚えてる。多分、真凛と陽向も覚えてるよな、急いで登校して話し合おうってことだよな」
「………………ああ。能力も使えるしな」
「……愛莉、悪いけど俺ら急いですぐ行くわ! じゃあな!」
「ちょ……!!」
悪い、愛莉。俺達は走り学校に向かう。
五分後、俺達は学校につき、教室へと駆け上がる。
引き戸を開け、教室に入ると、そこには二人がいた。
「真凛に、陽向。やっぱり覚えてたんだな」
「……健人達は大丈夫なのかな……」
真凛の言葉に一同が黙り込む。
「おはよう! 皆!」
「!?」
四人の沈黙を破ったのは、明人と魔爽だった。魔爽は背が高く性格も優しくて頼れる人物だが、今はそうでもない。
それよりも明人だ。彼に記憶が残っているのならば、何があったのか知る事ができるだろう。今いない他の三人だってきっと覚えてるはず。
「四人とも早いな! 今日はお別れ会だし、ワクワクして早く来たとかか? ま、俺も家の外からの騒ぎ声で起きたわけだけどさ」
「……そっか」
覚えていないようだ。だとすると何故明人は前回よりも早く来ているんだ?魔爽はどうだったかは知らないが明人は確実に俺より遅く登校していた。俺は彼に尋ねた。
「で、その騒ぎ声は誰だったんだ?」
「魔爽”君”と愛莉さんに神田さんですね、めちゃくちゃうるさかったなぁ」
「ははは……まじでごめん」
神田さんか、学力はこのクラスだと一番、勘も鋭いから嘘をつこうとしたら絶対バレるんだよなー……それにババ抜きがめちゃくちゃ強いし。
「おはよう! なんか……早いね」
「! 健人!」
今度は健人と利名子、俊樹と神田が入ってきた。
三人ともその素振りからは記憶はないようだ。
気が付くと、もう四時間が過ぎ、給食の時間になっていた。
改めて俺と知音、真凛と陽向の四人で話し合う。
「……どうする? 大体二時間後にはまた怪物がくるぞ」
俺はまだ能力が使えるようになったことは誰にも言っていないが、解決策を三人に聞いてみることにした。
「……そんなの決まってんだよ」
「まずは、健人の能力を利用する……そのためには……分かるよな陽向?」
「勿論。記憶を戻すしかないね」
「という訳で。行くぞ弘成、真凛。『話し合い』だ」
「え!?」
三人は納得したかのように健人に近づいていく。
「健人、今から話したいことがあるんだけどさ、ちょっといい?」
「え、いいけど」
健人は意外にもあっさりと了承した。が、その余りにも怪しげな知音の顔を見た周りの人は健人を引き留めようとする。
「ちょっと知音? 顔が怪しすぎるわよ、何企んでるの!」
神田さんだ。実習生最後の日だけあって、余計な思い出を作りたくないのだろう。
「知音、ここはもう辞めとこうぜ」
「こーなったら! 俺ら三人で男子トイレ行くからな! 女子は来んなよー!」
知音らしくないほど幼稚な態度を取り出す。というか、俺ら三人て俺もカウントしてんのかよ。とりあえず、知音と一緒に三人でトイレにいく。
「……意味が分かんないよ!! 今日は何回もあって今まで変な怪物に殺され続けてた? だけど前回でオレが能力手に入れて怪物を二体倒して、知音に陽向も能力を手に入れた!? 結局オレは死んだ??」
そう言いたい気持ちも分かる。多分俺以外覚えてなかったら夢だと思ってた。
「弘成もなんか言ってやって」
「お、おう。知音の能力は『物を操る』。陽向の能力は『エネルギー的な物を操る』って感じかな。それで、健人が持っていた能力は『空気を操る』なんだ」
健人の頭上に?の文字が浮かび上がっているようだった。
「口で説明しても難しいよな、俺が今から使うぜ。――ほら、浮いてるだろ?」
そういって胸ポケットからシャーペンを浮かばせる。
「……信じらんない」
「……健人、能力出してくれ」
「能力の出し方知らない――」
有無を聞かずに知音はシャーペンを健人の首に近づける。
「いいから出せッ!!」
知音の暴走が始まる――。
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